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一山越えたEU危機と、イギリスのしまった

2017年05月08日 | ニュース・コメント

  みなさん、連休はいかがでしたか。

  今年は天気に恵まれたので、旅行やスポーツには最高でしたね。

  私は娘夫婦とゴルフに1回行った以外は、主夫をしていました(笑)。家内のキャットシッターが一番忙しい時期なんです。開業して1年半ほどが経ち、お得意さまも定着したようです。ただ需要の山と谷の差が激しいので、今後はいかに平日のお得意様を多く確保するかが課題だとのこと。平日のニーズはどこにあるかと申しますと、仕事で出張の多い方と、病院関係や交通関係で、シフト勤務の方だそうです。

 

   さて、フランスは無事に選挙を終えましたね。

  BREXITやトランプの結果を受け、「世論調査は間違う事があるものだ」、フランスも安心はできないという人が多くいましたが、今度は間違わなかったのでしょうか。数字ヲタクの私は実はそうは思っていません。

  「世論調査はサンプリングなので、誤差があるものだ」なのです。

   BREIXTもアメリカのトランプ勝利も、もともとかなりの接戦で、最後の世論調査と最終結果は誤差程度の数字の差でした。実は今回もそうです。最終段階の調査はマクロン63対ルペン37くらいでしたが、やはり誤差は当然あって、最終結果は66対34でした。別に「今回は世論調査が当たった」ではないのです。

   BREXITとトランプは世論調査上の白黒と結果が反対の黒白だったので、「世論調査は間違えるものだ」という解説がなされました。世論調査はサンプリングなので数ポイントの誤差は当然あるものです。つまり接戦では白黒が逆になることは当然あるのです。

  世論調査の人たちが労働者や農民の本音を知らないから間違うのではありません。間違うのはサンプリングの不備だったり、統計上当然生ずる誤差だったりします。ですので、私は今後も、将来予想の世論調査をしっかりと見ていきますし、誤差を前提の上で大いに参考にしていきます。

 

   ルペンが負けたことで「EUの大きな波」は乗り越えたと思われます。ルペンをあからさまに応援していたトランプさん、プーチンさん、残念でしたー(笑)。

  今後注目される夏のドイツ議会選挙は、このところの地方選挙の結果から波乱はないと予想されています。ドイツの後は世界に大きな影響を与える選挙はありませんので、大きな波は乗り越えたと私は見ています。ただマイナーですが反EU的な動きが、昔の東欧諸国からかなりの勢いで起こっていますので、地政学上の大リスクとまではいきませんが、小さな波は続くでしょう。

   しかしそうした小さな波も、イギリスがBREXIT交渉で厳しい現実をEUから突き付けられているのを目の当たりにすると、萎縮するに違いありません。ギリシャしかり、イタリアもしかり。

  イギリスの甘い期待は、どんどん打ち砕かれています。イギリスはBREXIT交渉と同時並行で、離脱後FTA(個別の自由貿易協定)に移行するための交渉開始を希望していましたが、EUに一蹴されています。「まずは離脱条件の締結が先で、その後のことは離脱交渉が成立してからだ」、と言われてしまったのです。これはEUの全会一致のおまけつきです。

  そもそも反EUの動きに神経をとがらせているEU本部やドイツが、甘い交渉をするわけがありません。それに加えてドイツに次ぐ勢力のフランスでEU派のマクロンが完全勝利をおさめたのです。

  離婚は言い出しっぺの負けに決まっています。しかも男女の離婚より始末が悪いのは、交渉期限までついていることです。

  2年後の3月末、交渉期限がきてもまとまっていなかったらどうなるのか。

  単に放り出されるだけで、放逐された側は何も得られません。それどころか現在手切れ金としてEUが要求している分担金は7兆3千億円に達しますので、それだけは条件なしに払う必要があります。

  では、放り出されたら何がどうなるのでしょう。BBCが報道していた不都合な真実を列挙します。

1.国家として当然保持しなくてはならない様々な法律約1万2千件が不足する。EU加盟国は自国法とEU法がバッティングするとEU法が優先するため、自国法などほとんど無視してきたので、離脱がこうした事態を招くことすら予想できていなかった

2.EUからの補助金を当てにして運営されている研究機関や酪農などの資金手当てをしなくてならない。これも毎年数千億円単位になる

3.EUへの輸出に関税がかかる。当たり前のことですが、FTAなどの手当ができずに放り出されると、イギリスに工場を持ってEUに輸出している自動車産業などは10%の関税をかけられ、圧倒的に不利になる

  これらの不都合な真実を突きつけられたイギリスでは、「しまった」と言う声が起こっていると報道していました。

  さー、どうするメイ首相。解散選挙などやっている場合ですか?

  こうしたイギリスを見ていれば、大統領選に臨んだフランス人のこころは大きく揺れ動いたはずです。第1回の投票でマクロンが得た支持率はたった24%。ルペンは21%でかなり拮抗していました。しかし1回目の直後からマクロン対ルペンの支持率は6対4と大きな差が生じていました。その裏にはこうしたEUを出ることで突きつけられる不都合な真実があったのです。離婚率の大きなフランスだから、余計に身につまされたのかもしれません(笑)。

  今後EU離脱の声をあげそうなのは東欧諸国です。しかし彼らの深刻さはイギリスどころではありません。何故ならポンドを持っていたイギリスと違い、独自通貨をでっちあげなくてはならないからです。

  元々の通貨のひどさは、国民の誰もが長年痛感していました。それに戻ることなどできっこない。大きめの国であるイタリアのリラやギリシャのドラクマですら、不安定通貨の代表選手でした。ましてや東欧通貨など、自国民ですらだれも信用などしていませんでした。

  ということで、私には揺れ続けた欧州が一山越えた、と見えるのです。しかしこれだけでは必ずしも反グローバリズムが終焉に向かうとまでは行きません。トランプが吠え続けるからです。そして地政学上のリスクの焦点は東アジアに移りつつあるように思えます。

  今回は大きなイベントがあったためまた海外の話題になりましたが、次回から日本に移ります。

コメント (3)
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