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大利根の決戦

2017年05月02日 | 日本の金融政策

  カテゴリーは「日本の金融政策」なのですが、ゴルフの話題から。

  昨年来の勝負の約束に、決着がつきました。昨年末の忘年会で、ゴルフで私に戦いを挑んできたクラスメートとの一騎打ちの結果をお知らせします。

  別にゴルフのことをみなさんにお伝えするのが目的ではなく、大手金融機関のトップにいて、依然としてリタイアせずに関連会社の現役会長である彼との意見交換をみなさんに伝えるのが目的なのですが、せっかくなのでゴルフの勝負の結末もお伝えします。

  4月の終わりに利根の河原じゃなくて、大利根カントリークラブでの決戦に臨みました。昨年末にスケジュールを調整したのですが、彼が空いている週末がなんと4月29日だったのです。いまだに日本の金融機関のトップはゴルフをやりっぱなしなんですね(笑)。

  ゴルフの勝負には全くハンディを考慮しない実力勝負もありますが、今回のやり方はお互いのオフィシャルハンディの差をそのまま適用するハンディ戦です。

  私と彼のハンディ差はちょうど10。例えば私が80ストロークで彼が90ストロークであれば、差がちょうどハンディ分なので勝負なしの引き分けとなります。

  大利根カントリークラブは私の大好きなコース・デザイナー井上誠一が設計し、男女ともに日本オープンゴルフ選手権などの公式戦をはじめ、多くのトーナメントを開催する日本屈指の難コースです。その日は朝から快晴で絶好のゴルフ日和。クラブ競技が行われる日でもあり、グリーンはとても早く、ピン位置はかなり難しい設定でした。

  私はこのコースは20年ぶりくらいのラウンドのため、井上誠一が仕掛けた各ホールの落とし穴など記憶から抜け落ちていて、かなり苦戦しました。そのため今年の平均スコアよりも10ストロークほど多く叩きました。一方彼はアベレージゴルファーのため難コースにてこずり、普段の平均スコアより相当悪いスコアとなってしまい、結果はハンディ考慮前で私とは18ストロークの差。ハンディを差し引いても8ストロークの差で私が勝ちました。

   我々の他にクラスメートの見届け人2人がプレーを伴にしたのですが、彼らの腕前もアベレージゴルファーのためいつもよりかなり悪く、やはり平均より20ストローク前後多く叩いていました。井上誠一に脱帽です。

   ということで、昨年末の忘年会で決戦を誓い、やっと実現した勝負でしたが私の勝利に終わり、彼が試合後の飲食代を奢ってくれました。

   プレー後は経済の見通しや金融市場動向の話になりました。今回は特に日銀の新審議委員や黒田総裁の任期、そして出口戦略に関して、あらましをみなさんにお伝えします。


   まず日銀の審議委員の交代人事についてです。審議委員のうち2名が7月に任期を迎えるため、交代の人事案が示されました。任期を迎えた2名はいずれも白川総裁時代の任命で、黒田総裁の超緩和策に対してたびたび反対票を投じてきました。

  安倍首相になってからは黒田総裁をはじめいわゆるリフレ派を任命してきたのですが、今回もごたぶんにもれず、バランス感覚のある2名をリフレ派に変更することになりました。

   この人事について4月18日のブルームバーグを引用します。

政府は18日、日本銀行の審議委員に三菱UFJリサーチ&コンサルティング経済政策部上席主任研究員の片岡剛士氏、三菱東京UFJ銀行取締役常勤監査等委員の鈴木人司氏を充てる人事案を国会に提示した。

片岡氏は44歳。経済政策の調査に約20年間携わっており、理論やデータに基づく「分析手法は高い評価を得ている」という。「アベノミクスのゆくえ-現在・過去・未来の視点から考える」などの著書がある。慶応大学大学院商学研究科修士課程修了。昨年4月、自民党の有志議員の勉強会「アベノミクスを成功させる会」(会長・山本幸三地方創生担当相)に講師として出席し、消費増税の凍結を提唱した。代替の社会保障財源として相続税や資産課税の強化を挙げていた。

  昨年11月4日付の片岡氏のリポートでは、「2%のインフレ目標に向けたモメンタムが維持されているとは全く思えない」とした上で、「早期の追加緩和という具体的なアクションを行うことが定石であり、かつ必要である」との見解を示していた。

  鈴木氏は63歳。1977年に慶応大学経済学部を卒業後、当時の三菱銀行に入行した。東京三菱インターナショナル・ロンドン副社長を経て、三菱東京UFJ銀行の市場企画部長や副頭取などを歴任し、2016年6月から現職。金融市場の実務に精通していることや国内外の幅広い人脈が評価された。

引用終わり

  以下は一問一答の形式にしてあり、彼の意見は太字にしました。

  私が今回の人事について、「あまりにもミエミエで、緩和に歯止めのかからなくなる人事だね」と言うと、彼も「そのとおりだ」と同意していました。

  さらに私が「二人とも慶応で三菱って、いいのかな?」と問いかけると、彼は「一人は銀行じゃなくてリサーチだから、それは特に問題ないと思うよ」とのこと。

  私が「こうした人事を見ると、黒田氏の再任は決まりかな?」と聞くと、「今さら安倍さんも黒田氏を放り出せないよ。これまでのすべてを否定することになるしね」、と回答。

「じゃ、ますます緩和に突っ走るの?」。

「それしかないだろうな。そのつもりの人事だもん」

「出口はどうなるの?」。

「そんなものないよ。インフレさ。インフレで国の借金を実質帳消しにする以外に手はないだろう」。

「インフレで金利が上がったら日銀は大損して、信用を失うよね。保有国債の値洗いをしないことにするのかな」。

「もちろんそうさ。持ち切れば値洗いなしってことにするのさ」

「でも日銀は保有国債のポートフォリオを公表しているから、専門家はよってたかって値洗いしちゃうでしょ」。

「そうだな。でも、『だからどうした』って開き直るのさ(笑)。それを見た国債市場は売り一色になって、円も暴落だろうな。それが本格インフレの開始のサインだよ、きっと」。

  最後に私が「もっとも市場には売る国債も残ってないかも」というと一同爆笑で議論は終わりました。


  次回からは「トランプのアメリカ」の話題から、日本の話題に舵を切ることにします。

コメント (2)
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