ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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米国REITの買い場と売場、なんだかんださんへの回答

2014年07月11日 | 2014年の資産運用
なんだかんださんから、以下のコメントと質問をいただきました。

>毎朝、林さんのブログを真っ先にチェックしています。


 嬉しいコメントですね、ありがとうございます。私は毎日書くことはできませんが、みなさんからのコメントは毎日のようにアップされていますね。私もなるべく頻度を保つつもりですので、今後ともよろしくおねがいします。

>林さんは米国債利回りが年末にはかなり上がる可能性があると、書いていらっしゃいます。では、米国リートは今あたりが売り時なのでしょうか?ブログの中では、これから米国リート購入を検討されている方も見受けられますし、米国経済に対する比較的長期間の楽観論もあります。林さんがリートに対して、今、どんなイメージをお持ちか?お聞かせ頂ければ、有り難いです。

 このご質問に対してずばり「今REITを売って、年末にかけて金利が高くなったら米国債を買うべし」と回答できるほど私の予想は的確とは思えません、すみません(笑)。その程度の予想でよろしければ、私の以下の考えを参考にしてください。

 なお、前回の健康一番さんへのアドバイスと今回のなんだかんださんへのアドバイスは、投資方針やタイミングなどに大きな差があることにご注意ください。

 回答のポイントですが、米国債の購入資金を米国REITの売却で捻出する以外にないとすれば、ある程度それに賭ける価値はあり、と思います。

理由1.現在保有されているREITは利益が十分に出ていると思われるので、売却しても損はない。もし損失が出るようであれば、さらに長期保有もありです。長期では報われる可能性が高いので。

理由2.米国の長期金利は様々な要素で上下するが、根本的には米国景気、特に雇用と物価による変動が大きい。雇用はコンセンサス予想を上回って回復しているが、物価は予想の範囲。

理由3.もし年末にかけて金利が十分に上昇せずにうろうろしている時は、米国景気が思わしくなく、REIT価格は大きく上昇していることはないので、買い戻すことができる

 では次に、米国REITの現在の価格レベルを私はどう見ているかについてですが、まずはスプレッドという指標から見てみます。

 前回のブログでREITに対するコメントとして「値動きは米国債金利レベルとそれに上乗せするスプレッドで決まる面があり」と述べました。

 これは著書でも同様なこと述べています。著書のP.235を引用しますと、「歴史的に見るとアメリカのリートの利回りは米国債金利に対して3%のスプレッドは当り前、2%だとちょっと足りない、5%だとオイシイ」と書いています。現在のREITの平均的配当イールドは4%強で、金利が10年債で2.6%なのでスプレッドはわずか1.5%程度しかありません。5年債に対するスプレッドで見ても、2%程度のスプレッドです。

 ということは、歴史的には買いのタイミングではなく、売りのタイミングです。ただし、私が著書で言っている歴史的というのは、REIT始まって以来の超長期ですから、この10年くらいのスプレッドの平均値は1%近く低下していますので、米国債5年債に対する2%の上乗せは当たり前レベルとも言えます。両者の見方を合わせれば、「売りタイミング」と「当たり前レベル」の間くらいということです。

 以上がスプレッドという指標から見たREITのレベル感です。次はファンダメンタルズと長期金利をどう見ているかです。

 アメリカ経済全体について私は年初以来、コンセンサスより強めに見ていると申し上げてきました。それに連動して将来の金利のレベル感もコンセンサスより強めに見ています。こうした年初の見通しは経済見通しについてはどちらかと言えば当たっていると言えるかもしれません。成長率は寒波で撹乱されましたが順調に回復しつつあり、特に雇用には回復が如実に表れ、昨年には誰も予想すらできなかった失業率の6%割れがすぐそばに迫っています
 物価はエネルギー・食料価格の他に賃金の上昇率が大きく影響しますが、アメリカの現状の賃金上昇率はかつての日本と違いマイナスなどには落ち込まず、プラス2%のレベルを維持していますので、デフレの心配はいりません。

 以上をなんだかんださんのご質問に沿って簡単にまとめますと、

・REITの相場は売ってもよいレベルにある

・金利は今後上昇が見込まれる


 従って「REITから将来米国債に乗り換えるために、このタイミングでのREIT売却は取りうる戦略だ」となります。

 では念のため、逆にREITを買おうという彷徨さんのような方にとって、今は買いどきではないのでしょうか。復習になりますが、私は以下のように考えています。

 REITのインデックスを40年くらいの超長期で見ると、リーマンショック前にバブってしまい、ピークをつけてから暴落しましたが、そこからすでに回復しました。現在はマイルドな上昇トレンドに戻っています。そして前回バブルの頂点よりは手前にいます。短期的な投資スタンスの方には買いのお薦めはしませんが、長期スタンスで臨むのなら、全く買えないレベルではありません。

 そして何と言っても米国REITはドル建て資産ですから、円リスクに対する大いなるヘッジになるのです。長期のスタンスで多少の上下変動に目をつぶれるのなら、買えないレベルではないと私は見ています。

ちょっと矛盾したような意見ですみません。そこでもう一度まとめますと、

・短期的にみた場合、今は売りのサインが出ている

・ヘッジ含みの長期スタンスで臨むなら、買えないレベルでもない


以上です。

コメント (4)
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