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ツール・ド・フランス 観戦記

2012年07月29日 | 旅行
  フランス旅行の目的の一つは、ツール・ド・フランスという世界最大の自転車競技を見ることでした。実はこの趣味は家内の趣味で、私も刺激されてだんだん見るようになってきています。日本でもサイクリングを本格的に楽しむ方が増えてきているようです。

  オリンピックの開会式の開始を告げる鐘を、ツール・ド・フランスの勝者ウィギンスマイヨジョ―ヌ(黄色い勝利者ジャージ)を着て鳴らしたのに気がつかれた方もいらっしゃると思います。やはりイギリスでも大ニュースだったんですね。

  今回はフランス滞在中にツール・ド・フランスを4回見ることができました。少し長くなりますが、ツール・ド・フランスとはどんなものかと、実際の様子を旅行記として紹介させていただきます。

  ツールは100年を少しすぎるほど長い歴史を持ちます。いつも真夏に20日間にわたり行われ、2日の休日をいれて22日間の長丁場です。今年はベルギーをスタート、最後は必ずパリで終わるのですが、コースは毎年変化します。平地、山岳、丘陵をミックスし、世界に観光国フランスをアピールするのも大きな目的のため、世界遺産などを含む景勝地を走ります。TV放映は固定カメラ、自動車、バイク、そしてヘリコプター数台を駆使し、ただ景色を見るだけでも大スペクタクルが展開し、楽しむことができます。

  競技は1チーム9人で今年は22チーム、200人ほどが参加。毎日の勝者と累計タイムで、それぞれ個人とチームの総合優勝が決まります。その他に山岳コースのポイント賞、スプリント賞などがあって、得意分野での争いも見逃せません。チームには有力スポンサーの名前がついていて、日本の会社も共同スポンサーになっています。ちなみに今年のチーム優勝は、レディオシャック・ニッサンでした。

  我々が最初に見た日は全日程のほぼ真ん中のピレネー山脈越えで、とても厳しい行程でした。山の麓の小さな街を出発し、ピレネーの山を二つ越え、距離は約200kmにおよびます。東京を出発すると仮定しますと、長野市くらいまで4時間半ほどで走るのですが、その間に1級山岳というカテゴリーの厳しい山を二つこえます。平均斜度12.5%、最大斜度18%。最高地点は1,500メートルを超えます。

  東京を出て関東平野を100kmほど走ってから碓氷峠で軽井沢に入り、浅間山を越えて、次に草津白根山を越え長野市に至る、というようなイメージです。この行程を自動車ではなく、人力の自転車で走るのです。ロードバイクですが、ギアは21-24段くらい付いています。

  今回の旅行中はずっと天気に恵まれした。その日も平地ではピカピカの好天で出発地の気温は25度くらいでした。ところが山頂付近は霧で気温10度くらい、道の横には真夏なのに雪渓が残っているのが見えました。

 我々の見物は2カ所。行程の中間で水や食料を補給する地点と、その日のゴール地点です。各地点通過の予想時間が正確に記された案内がネット上にあり、待ち構えるのには困りません。

  補給地点で待っているとまず先発のキャラバン隊がやってきます。キャラバン隊は100台近いスポンサーの宣伝カーや、レースのサポートカー、報道関係車・オートバイなどで構成されています。宣伝カーはディズニーランドのパレードのように、大きな張りぼてキャラクターやマヌカンが乗っていて、商品のサンプルを配ったりします。パリにあるユーロ・ディズニーもスポンサーで、ミッキーやドナルドがトラックでやってきます。子供達は選手を見るより、パレードとグッズをもらうのが楽しみで待ち受けています。

  そしてキャラバン隊の通過後、200人の選手の通過を見ながら応援するのです。キャラバン隊の通過は小一時間もかかるのに、選手はスピードがとても早いため通過は10分程度で終わってしまいます。平地では40kmから50kmの平均スピードです。それが厳しい上り坂で例えば10パーセントの勾配なら20km以下に落ちますし、下りでは80-100kmにもなります。

  ここまで書いてみると、正月の箱根駅伝を思い出しました。イメージはそれに近いのですが、9人編成のチーム全員が20日、日本中を走り続けるのですから本当に過酷で、過去に何人も死者が出ています。

  駅伝でも登りのスペシャリストがいたり、下りのスペシャリストがいるように、自転車も選手により得意分野が違うので、チームは毎日それを考慮した作戦を立てるのです。

  補給地点での補給はマラソン同様走ったままで、サポートの人から袋を受け取り飲み食いします。我々は補給地点近くのロータリーのコーナーで選手の通過を見物したあと、すぐに車で今日の到着地点に先回りし、選手をふたたび待ち受けました。ゴール付近には巨大スクリーンがあって、全行程のテレビ中継が流れているため、一日中楽しむことができます。山岳地帯の様子は、このテレビで見ていました。

  200kmの行程を4時間半程度で走り終えた選手はボロボロになっていますが、翌日もまた同じ様な行程を走るのです。20日間、3千数百kmのうち3割程度が山岳がらみ、4割程度が比較的平地、残り3割は両方が混ざっているようなコース設定です。休日はたったの二日間のみで、これほど過酷なレースは他のスポーツをいれてもなかなかないのではないでしょうか。

  出発地やゴールに当たった街は、何年かに一度のお祭り騒ぎになっています。こうしてフランス中が22日間沸き返り、最後はパリのシャンゼリゼにゴールします。

  われわれは最終ゴールをパリでまた見ることができました。最終日はすでに個人総合優勝やチーム総合優勝が前日までに実質上決まっているのですが、その日の優勝だけをみんなで争うのです。パリでは凱旋門とコンコルド広場のあたりを8周しますので、同じ地点に陣取りゆっくりと見ることができます。と言っても、時速50kmくらいですので、目の前を200人が通過するのにわずか20秒程度で、それが10分ごとに8回繰り返されます。我々は大スクリーンの用意されているコンコルド広場と、すぐ横のセーヌ河沿いで見物しました。

  今年の個人優勝は、ツール・ド・フランス約100年の歴史の中で初のイギリス人でした。翌日にはキャメロン首相がお祝いの談話を出すほどの大ニュースになっていました。

  では最後に自転車競技の面白さはどこにあるのか、簡単に紹介を試みます。マラソンや駅伝を楽しんでご覧になる方なら、自転車競技の面白さはすぐ理解いただけるとおもいます。それはひとえに駆け引きの面白さです。しかも自転車競技はチーム全員で走るため、駆け引きは個人走のマラソン、駅伝の比ではありません。

  自転車は空気抵抗との闘いです。スピードが早いため、スリップ・ストリームと言って、自分の前の一台にくっつけば、空気抵抗は半分近くに減るそうです。数十人の集団の真ん中にいると、軽くペダルを踏むだけで進むのだそうです。

  ということは、先頭は圧倒的に力を使い不利なため、チームは縦一列となって走り、先頭をわずか数秒で交代しながらローテーションを組んで走ります。そうすることでチームのエースの負担を軽減させ、その日のレース最後のスパートまで温存するのです。エースはそれに応えてラストスパートで頑張ります。

  と言っても、200台もが一緒に走るため、必ずしも思惑通りにはいきません。そこで監督の采配がものをいうのです。選手は全員がトランシーバーを付けていてやりとり可能なため、車で同行する監督の指令も的確に伝わります。パンクをすればすぐにサポートカーを呼び、のどが乾けば飲み物をもらい、転倒しても少々の怪我なら走りながら車にいるドクターが窓から乗り出して治療します。

  監督からの情報で競争相手の動向や離れたチームメイトのことなども含めレースの全貌がわかるし相手の作戦もわかります。そこで作戦は常に裏のかきあいになるのです。こうしたレースが毎日違ったコース設定で展開される為、20日間飽きずに見続けることができるのです。

  今年の優勝者はイギリス人のウィギンスでしたが、彼の合計タイムは84時間34分ですから一日平均4時間にもなります。

  日本からたった一人参加した新城(あらしろ)選手も見事完走し、時間は優勝者からプラス2時間30分。何度かレース全体を引っ張るリード役をして、5日目に敢闘賞も取りました。しかし日本人が優勝を争う日がくるのはまだまだ遠いようなきがします。

  もちろん彼はエースではない為、空気抵抗の盾として力を使わなくてはいけないという役割を果たしていますので、優勝者と単純な比較はできません。それでも200人中真ん中より上位の84位で終えたのは非常によい結果といえるのです。参加198人中完走者は153人、最後の選手のタイムは優勝者から4時間後でした。

  彼は昨日、ロンドン・オリンピックのロードレースにも別府選手と2人で参加しましたが、結果はトップから40秒遅れの48位でした。

  ということでツール・ド・フランスの見物記を書いてみました。もし興味を持たれたら来年はCSテレビのJ-SPORTでご覧になってみてください。レースの詳細、結果などは以下のサイトにて日本語で見ることができます。

http://www.jsports.co.jp/cycle/tour/



  
コメント (4)
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