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ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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トランプでアメリカは大丈夫か4 自衛隊日誌とペンタゴン・ペーパーズ 

2018年04月08日 | トランプでアメリカは大丈夫か?

  財務省・厚労省・自衛隊をはじめ、日本政府内部の情報改ざん・隠蔽工作は目を覆いたくなるほどですね。と書いていたら、ニュースで自民党の竹下亘総務会長までが、「改ざん隠蔽には目を覆いたくなる」と言っていたので、思わず笑ってしまいました。昨年選挙民はウソの情報をもとに自民党安倍政権を選択したのかもしれません。それを思うと、冗談では済まされません。しかもそうした事案の調査をするのがいつも第3者を入れずにまず「内部で調査する」と言うのですから、日本の行政府にはあきれてものが言えません。政府そのものがまさに文字通りガバナンスに欠けるガバメントとはお粗末極まりない。「内部調査」とはまさしくブラックジョークです。

  一昨日、スピルバーグ監督による映画、「ペンタゴン・ペーパーズ」を見てきました。ワシントンポストの記者たちが政府の情報隠蔽を暴く話です。ワシントンポストの社主はかつてのグラハム一族から現在はアマゾンのジェフ・ベゾスに移っていますが、映画はそれよりはるか昔の60年代、ベトナム戦争時代の政府による情報隠蔽工作を新聞が暴く話です。ストーリーの一部を簡単に紹介しますと、

  社主は夫をなくしたメリル・ストリープ、編集長はトム・ハンクスという豪華メンバーで、ベトナム戦争が泥沼化していてアメリカ国内で反戦運動が盛んになっている頃、ペンタゴンが負け戦の報告(ペンタゴン・ペーパーズ)をひた隠し、それを新聞社がとり潰しのリスクを負っても暴くというストーリーで、ニクソン大統領と新聞の争う様子は現在の大統領対メディアの状況と同じ構図です。ウォーターゲート事件はこの後の話で、やはりニクソン大統領をワシントンポストの二人の記者が追い詰めました。

  横に逸れますが、実はその後70年代から長きにわたりワシントンポスト社主のグラハム夫人を支援したのが4分の1のシェアーを持っていた株主でかつ取締役でもあったウォーレン・バフェットでした。現在彼は退任し、株式も売却しています。

  さすがスピルバーグ監督、この映画は実に絶好のタイミングで上映されています。メディアをフェイクニュースだと決めつけ攻撃を続けるトランプ対メディアの構図がかつてのニクソンと新聞の対立を彷彿とさせるからです。今回の映画はワシントンポストの二人の記者がニクソンの陰謀を暴いた例のウォーターゲート事件の寸前のところで終わっていて、事件そのものを対象にはしていませんが、スピルバーグは最後にそれとなく暗示し、トランプを陰で攻撃しています。

 

  ところで現在トランプがアマゾンを毎日ツイッターで攻撃しているのをみなさんはご存知ですか。ワシントンポストの現在のオーナーはアマゾンのオーナーであるジェフ・ベゾスで、トランプはワシントンポストを不倶戴天の敵とみなし、当たり散らしています。トランプの現在の攻撃対象はワシントンポストがフェイクニュースだといういつものメディア攻撃ではなく、「USPS(米郵政公社)の赤字は通販のアマゾンが作り出している」という彼らしい独特の切り口でツイッター上で攻撃しています。それをブルームバーグの記事の引用で説明します。

4月3日のブルームバーグの記事を引用します。

『トランプ大統領は2日、ツイッター「損失を出し続けている郵政公社(USPS)がアマゾンで利益を得ていると言うのは愚か者か、それ以下の人間だけだ。USPSは(アマゾンにより)ばく大な損失を被っている。だがこの状況は変わる。また税金を満額納めている小売業者の閉店が全国で相次いでいる。公平な競争の場ではない」と述べた。トランプ大統領はここ数日、アマゾンに対し容赦ない批判を続けている。3月31日にはアマゾンは「実質コスト(と税金)を今支払わなければならない!」と投稿した。さらに大統領は具体名は出さず報道を引用し、『USPSはアマゾンの配達1つごとに平均1.50ドルの損失となるとした上で、「郵便制度を欺くのはやめなければならない」と訴えた。』

  不倶戴天の敵であるワシントンポストのオーナーがジェフ・ベゾスだし、実はUSPSの最大顧客であるアマゾンも攻撃対象とあって、トランプの格好の攻撃対象となってしまっていて、トランプの攻撃の度にアマゾンの株価と株式相場全体が乱高下しています。アマゾンも昨年税金を4億3千7百万ドルも払ったと反論していますが、トランプは聞く耳持たず。

  ついでにアメリカで言われているのは、ジェフ・ベゾスが最近アマゾン株の上昇により世界一の金持ちになったというニュースが流れ、『負けず嫌いのトランプが妬んで株価を下げるような発言をしている』というものです。まさに逆恨みそのものです。

  ワシントンポストにアマゾンという絶好の攻撃対象を得たトランプ、ツイッターのネタにフル活用し、ロシア疑惑などから目を逸らさせようと必死にもがいていますが、その一方で高校生が銃規制=反トランプを掲げ、全米で立ち上がっていて、現在非常に大きなうねりになっています。

  これはフロリダの高校で3月に起こった銃乱射事件を機に全米の高校生が銃規制に立ち上がり、トランプの「先生が銃を持てば防げた」というおバカな発言に対してワシントンでデモ仕掛けたのです。くしくも4月4日のキング牧師暗殺の記念日にキング師の孫がデモ隊に向けて演説をしました。その内容は「私には夢がある」と演説したキング師の言葉を引用し、「私には夢がある。銃のない世界だ」という的を射るスピーチでした。学校で銃撃戦をしようというおバカな大統領に向け、めずらしく全米の高校生が立ち上がったのです。しかも彼らは中間選挙に向け、「選挙人登録をして、銃規制派に投票しよう」という具体策も提案していますし、NRA(全米ライフル協会)から支持を受けている議員とタウンミーティングを行い、つるし上げをするという行動も行っています。彼らの親たちを含めると、決して小さな動きではないと評されています。

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トランプでアメリカは大丈夫か3 ゴルディロックス経済は続くか

2018年04月03日 | トランプでアメリカは大丈夫か?

  日本の国会の混乱には目を覆いたくなります。佐川氏は国会で50数回の証言拒否をしていましたが、自分の管轄範囲で命を絶った人が出ていることに対して責任の自覚はないのでしょうか。同じく財務大臣も人を殺す財務省の罪は重いという自覚を持つべきでしょう。

  さてアメリカですが、2月8日の記事で私は「ゴルディロックス相場の終焉」というタイトルで、どうやら株式相場は一山越えたかも、という指摘をしています。そして2か月を経過して、その通りの荒れた株式相場が続いています。記事の最後の部分を引用しますと、

『東京タワーは立っていないのでリーマンショックのような暴落はないと思われるが、ゴルディロックス(適温)相場は終わったと判断すべき』です。

  この指摘に対してというわけではないのですが、多くの証券系のアナリストやエコノミストはおしなべてこう言っています。

  「株価は下落したが、経済のファンダメンタルズは好調を維持しているので心配なし。いずれはまた企業収益の伸びに合わせて株式相場も上昇を始めるだろう」というものです。言い直せば「経済のゴルディロックス(適温)状態は継続する」ということです。これが本当にそうなのか、果たして経済ファンダメンタルズにも転換点は来るのか、検証しておきましょう。私は今年中には来そうだと思っています。その芽はアメリカだけではなく、重要な関係国にも出てきています。

1.中国国内市場の変調

中国のスマホ販売と自動車販売がスローダウンを始めました。ちょっと古いですが、1月10日の日経ニュースを引用します。

中国政府系のシンクタンク「中国情報通信研究院」が発表した2017年の中国市場におけるスマートフォン(スマホ)の出荷台数は、前年比11.6%減の4億6100万台となり、大幅に落ち込んだ。10年以降、急激なスピードで普及してきた中国で、前年比2ケタの減少となるのは初。市場が飽和したほか、新製品の差別化が難しくなり、世界の約3割を占める最大市場の中国も苦境が鮮明となってきた。直近の17年12月の落ち込みは深刻さを増しており、出荷台数は4036万台と前年同月比で33.2%減少した。

引用終わり

  17年12月の33%減は、尋常ではありません。こうしたことの影響をもろに受けているのは韓国のサムスンです。最近のニュースではスマホ用ディスプレーの製造ライン稼働率が6割程度に落ち込んでいるというのです。

  ではスマホ市場と同じように経済全体に影響の大きな重要な耐久消費財である自動車はどうか。これがまたスマホと同じように中国市場でスローダウンを始めています。

  2016年の年間を通して販売台数は11.6%増でしたが、17年はわずか3%増に低下。18年に入っても1-2月の販売台数は前年比でわずか1.7%増です。これまで2ケタ増が当たり前だった中国市場の伸びがどうやら止まったとみてよさそうです。世界で一番大きな市場の伸びが止まるという現実は、日本・欧州・アメリカの自動車メーカーに大きなインパクトを与えます。

世界の国別販売台数は、17年年間で

中国   2,912万台

アメリカ 1,758万台

日本    524万台

インド   401万台

ドイツ   381万台

中国市場はアメリカ市場より65%も大きな市場であること、みなさんも覚えておいてください。ちなみに日本市場に比べると5.5倍です。中国がクシャミをすると、世界が風邪を引くというところにまできているのです。

  中国のスローダウンはやがてアメリカや日本などにも影響を与えます。

2.貿易戦争

  そのクシャミの始まった中国にさらに冷や水をかけているのがトランプで、裸の自分が実は中国のフンドシで相撲を取っている自覚は全くありません。本日、トランプの保護政策に対し、中国が対抗措置を発表し、本格的戦闘開始状態になりました。

  BBCのニュースを引用しますと、

『トランプは3月22日、中国からの輸入品600億ドル(約6兆4000億円)相当への追加関税中国企業による米国内の投資を制限する制裁を発表した。中国が長年にわたって米国の知的財産権を侵害してきたことへの報復措置だとしている。』

  それに対抗する中国は以下の措置を決めると同時に、相互に報復の応酬が始まりそうな気配です。時事通信を引用します。

『中国商務省は3月23日、米国の発動に合わせて報復内容を公表。果物など120品目に対する15%の関税上乗せが第1弾、豚肉など8品目への25%の関税上乗せが第2弾になると説明していたが、一斉実施に踏み切った。対象品目の2017年の輸入額は30億ドル(約3200億円)に上る。中略
  米国は輸入制限とは別に、中国による知的財産権侵害を理由にした貿易制裁も決め、発動に向け手続きを進めている。中国は大豆、航空機、自動車などに報復する構えを見せ、緊張が高まっている。
 一方で、米中は水面下で交渉を行っていると伝えられる。中国が米製品の輸入拡大や市場開放といった譲歩案を示し、高い要求を突き付ける米政権との間で落としどころを探っているもようだ。』

  中国の知財に対する特許の侵害などは目に余るものがあると私も感じますが、いよいよその本丸をトランプがつぶしにかかっています。それが発動されると中国による対抗措置は小さなものではなく、かなり大きなものになる可能性があり、予断を許しません。

  すでにスローダウンの兆しがところどころで見え始めた中での貿易戦争は、世界経済の発展に大きな障害になり、ゴルディロックス状態を謳歌している世界経済を揺るがす引き金にもなるので要注意です。

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トランプでアメリカは大丈夫か、2  そして誰もいなくなった第7幕

2018年03月18日 | トランプでアメリカは大丈夫か?

  トランプ劇場、「そして誰もいなくなった」はいよいよ終幕に近づいています。第6幕は国家経済委員会議長ゲーリー・コーンの辞任でしたが、すぐ続いて最重要閣僚の一人国務長官ティラーソンがトランプに撃たれました。国務長官がどれほど重要な閣僚かを表すのは、大統領の継承順位です。大統領に何かあると引き継ぐ順位は、副大統領、上院議長、下院議長、そして次が国務長官なのです。その大事な国務長官を相変わらずツイッターで解任する、なんとも失礼極まりない先進国の大統領とは思えないやり方です。そしてどうやらマクマスター国家安全保障担当補佐官や最側近であるケリー大統領首席補佐官の辞任もささやかれています。

  アガサクリスティーの原作では、10人しかいない孤島で、10人が殺害されて終わります。9人の殺害を実行した犯人が最後は10人目として自分を殺害にみせかけた自殺をすることになっています。トランプは刻一刻とそのシナリオの終幕に近づいているように見えます。大統領のこうしたバカげた殺人劇に付き合うアメリカのマスコミや一般のアメリカ人たちは何を思っているのでしょうか。私の友人のアメリカ人達はあまりのバカバカしさに、ただただあきれるだけだと言っています。

  先週のもう一つの大きな、そしてより重要な出来事はペンシルベニア州の下院補欠選挙です。鉄鋼産業のメッカであるピッツバーグを抱えるペンシルベニア州はトランプ大統領誕生のカギを握ったとされる州です。歴史的に民主党が強かったにもかかわらず、大統領選挙ではトランプが20ポイント差で勝利しました。それを失ってはならないと、先々週からトランプが必死で応援に立ち、叫び始めたのが鉄鋼輸入への関税強化策で、その発表タイミングも、この補欠選挙にぶつけたものと言われています。この州での勝敗は今年の秋の中間選挙の前哨戦とも位置づけられ重要な選挙でした。それがどうも民主党候補の勝利になりそうなのです。現状の得票数は民主党候補対共和党候補は5分5分で、最終結果は26日以降と言われていますが、大事なことは鉄鋼産業保護政策の発表にもかかわらず、共和党が大統領選での20ポイントもの大差を民主党に詰められてしまったという点です。トランプとしては中間選挙に向けてのシナリオが大きく狂ったのです。

  私はそうした敗北の事実だけでなく、今後の影響を心配しています。11月の中間選挙に向けてトランプが焦れば焦るほど、保護主義的政策に限らずとんでもない政策を採用するに違いないからです。中国や日本などをターゲットにした経済的制裁はしょせん経済に限定された問題ですが、軍事的作戦となるとほってはおけません。

  ブッシュジュニア大統領は支持率低下に対する起死回生を中東での軍事侵攻に託し、支持率は大きく回復しました。今後ペンシルバニアで支持者が離反したような事態が各地で予想されれば、トランプは死に物狂いになります。中間選挙で上院は民主党の改選議員が多いため、民主党が議席を伸ばすのは難しいと言われていますが、下院選挙は全員が改選されるため、共和党は少数派に転落する可能性があります。マイノリティに転落すれば、トランプはその後の2年の任期はレームダックと言われるでしょう。中間選挙がトランプの今後を決めるため、死に物狂いで選挙向けの政策を連発するに違いありません。選挙民に向けた政策とは、すなわち対外的強硬策となります。それがもっとも手っ取り早い人気取り政策だからです。

  独裁者トランプは絶対的自信をもって同じ独裁者金正恩と5月までに会談を行うことになっていますが、極めつけのオレ様同士で即和平につながる合意ができるとは思えません。お互いにこれが今回の獲物だと言えるものがないと支持率の低下はまぬがれません。アメリカの国務省は北朝鮮の専門官が先日辞任し、アジア全般をみる責任者も依然として不在。とにかく政治任用されるはずの150あまりのポストのうち、60人程度しか任用できていません。つまり6割が空席で、はっきり言って国務省は機能していないのです。その上新国務長官は金正恩の斬首作戦を強行すべきと言ってはばからないポンペイオですから会談は物別れになる可能性は大きく、その後の結果もかなり心配されるのです。物別れは斬首作戦のいい口実になりかねません。

  トランプ政権は政治的に苦しくなればなるほど経済的強硬策を出してくる。それに対して貿易相手国も報復措置を取ってくることになります。先週、EUはアメリカのIT企業に向けたデジタル課税と呼ばれる税の導入を検討しているというニュースが流れました。必ずしも報復措置とは言われてはいませんが、このタイミングでの発表は、アメリカへの牽制に間違いありません。政治が経済へ影響する経路で、報復合戦が心配されます。

  日米とも政権側が揺れに揺れているため、経済的な課題より自己保身に動いてばかりで有効な手を打てないでいます。次回は経済に焦点を当てて、トランプのアメリカをみていくことにします。

コメント (13)
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「貿易戦争に勝つのは簡単」、だってさ

2018年03月09日 | トランプでアメリカは大丈夫か?

  トランプちゃん、南北の和平攻勢にとまどいながら、5月に金正恩と会談することが決まったようです。「核放棄を完全に約束しない限り会うことはないと」あれだけ言っていたのに、いつものちゃぶ台返しです。

  前回も申し上げたように、我々も頭の体操をしながら思考を柔軟にしていないとついて行けなくなるので、要注意です。

  一方で「すべての貿易相手に鉄とアルミへ一律の高関税を課す」というアドバルーン、すでにだいぶしぼんできました。

  トランプが高々とアドバルーンを上げるのはいつものやり方で、高々と上げては風を見ながら徐々に降ろします。今回も株式の暴落という暴風を受けて、「カナダとメキシコは例外だ」とし、さらに株式が落ちると「しっぽを振る同盟国は勘弁してやる」ともう一段アドバルーンを下げ、日本のようにしっぽを振る国を募っています。

  その間に国家経済会議委員長のゲーリー・コーンが貿易戦争をしかけるトランプに対し「やってらんねー」と辞任。彼は他でもないゴールドマンの社長兼COOからの転身です。よせよせとみんなから言われたのに就任し、結局1年ちょっとで去りました。トランプ政権の中枢を占めるゴールドマン出身者が、どんどん去っていきます。彼はトランプの極端な政策に対する防波堤だったので、トランプの暴走はよりひどくなりかねません。これでトランプ劇場「そして誰もいなくなった」は重要閣僚6人目の辞任で第6幕が下りました。市場を知り、市場と対話を行える経済の司令塔を失って、いよいよ混迷を深めることになるでしょう。

  トランプの宣戦布告に対して、EU、欧州各国、カナダ、中国の首脳などが異例の猛反撃を行っています。かわいいトランプちゃん、株式の暴落に驚きながらも、各国の反撃に対して先週以下のようなコメントをしました。

  ロイター記事です。

 トランプ大統領は2日、ツイッターで「(米国が)通商面で実質的に全ての国に対し何十億ドルも失っているとき、貿易戦争はいいことで、勝つのも簡単だ」と述べた。

  貿易戦争に勝つってどういうこと?

  2年ほど前、TPP交渉の最中にも申し上げましたが、『日本政府がTPPの交渉で勝つということは、消費者は損をする』ということです。勝つと言うのは業界が利益を得られるようになることなので、その分消費者は損をします。実に単純なことです。政府が「牛肉の交渉で勝った」と言えば、我々消費者は高い牛肉を買わされます。そのことはアメリカも同じで、「鉄とアルミで勝つ」ということは、それを使って作る自動車価格は上がり、消費者がそれを負担させられるのです。

  でも雇用が増えるのでは?

ありえません。あとで鉄鋼産業を例に説明しましょう。

  トランプの場合、貿易収支を黒字にするってことが勝つことだとナイーブに考えています。関税を引き上げ海外の安い物資を入れなくすると、貿易相手国が報復措置を取りますから、それによるインパクトで結局貿易収支の改善は計れなくなります。すでに主要貿易相手国はことごとく首脳自ら「トランプに報復する」と宣言しています。いや、日本のアベチャンだけは相変わらずしっぽを振ってトランプについて行くだけなので(笑)、例外です。

  おバカなトランプちゃんにブルームバーグ社は記事で2つの数字の贈り物をしました。

その1.米経済学会(AEA)によると、国内鉄鋼メーカーでは1962年―2005年の間に雇用の4分の3が失われたが、その理由は労働者1人当たりの生産が5倍に増加したことによるものだった。

  そもそもトランプの宣戦布告は貿易によって失われた雇用をアメリカに取り戻すというのが目的です。しかし実際には、雇用は生産性の向上によって失われたのであって、海外に奪われたのではない、というのが真相です。

  しかし私が指摘したいもっと大事なことは、

「アメリカは鉄やアルミなどのローテク労働者を生産性向上で減少させ、ハイテク産業にシフトさせたことによって雇用を増やし高度成長産業を伸ばした」

  もちろん実際の鉄鋼産業労働者がアップルに転職したのではありませんが、数字の上ではそうした大きな労働力のシフトがアメリカの成長力の源です。それを50年前に巻き戻し、産業構造をローテクにシフトさせると言うのがおバカなトランプちゃんがやろうとしていることです。

  もし現在までに失われた5分の4の労働者が現在の高い生産性で粗鋼生産を始めたら、アメリカの粗鋼生産量は5倍となり、世界の鉄鋼価格は間違いなく暴落します。その上賃金は中国並みの年収90万円になりますよ、労働者のみなさん。アメリカ人の平均所得の630万円の7分の1で働きたいなら、どうぞ働いてください。

  そもそもアメリカの製造業雇用者数とサービス業雇用者数の比率は現在1対5です。それが産業構造の高度化であり、労働力の高度化です。製造業、それも特にローテクな重工業は過去の遺物です。

  それでもやりますか、トランプちゃん。

その2.英バークレイズの試算では、今回の関税措置により、ある程度長期にわたってコアインフレは0.1%ポイント加速し、経済成長は0.1―0.2%ポイント鈍化する見込み。トランプ大統領の財政刺激策による効果を相殺する可能性があるという。

    貿易戦争は歴史が示すように、世界経済の発展を大いに阻害しますし、世界大戦の引き金にもなりました。現在の世界経済は実に順調で、世界各国はその恩恵に浴していますが、貿易戦争はその好調な世界経済に冷や水を浴びせ低迷を招くため、計り知れないマイナスのインパクトを与えます。

  勝つのは簡単、でもそれで自滅するのも実に簡単なのです。

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