アメリカは大丈夫です!(笑)
「マイナス金利をどう見るか」のシリーズの最後で、マイナス金利でも買う投資家の手の内をみなさんに解説しました。みなさんの間では、アメリカは大丈夫かの議論がありましたが、私はそれを敢えて無視するかのごとく、「金利とは」から始まり、「ベーシス・スワップ」とは、そして事のついでに「銀行の収益の上げ方」から「キャリートレード」まで、長々と解説しました。この解説に関して2つのコメントをいただきました。
一つは、難しいことなのに「解説はわかりやすかった」。それと、スワップやキャリートレードの本質論は「衝撃的だった」というものです。その方はかつて証券業にいたことのある方ですが、そういう方でも最近の金融技術には驚かれたのだろうと思われます。そして一般的解説や報道のいい加減さにも衝撃を受けたのでしょう。
みなさん全員がその方と同じコメントをお持ちとは思いませんが、もし何割かの方でも同様な感想を持ったとしたら、私はとても嬉しく思います。「ぜんぜんわかんなかった」でもかまいませんので、是非遠慮なく感想をお寄せください。今後のブログ記事の参考にさせていただきたいのです。よろしくお願いします。
さてやっとアメリカについてです。
「マイナス金利でも運用益」という話に入ったとき私は、「アメリカのスローダウンなど単に景気循環で、深刻な話などではない」と言い切り、しばらく横に置いてしまいました。
ではアメリカが怪しいという論調が多かった1・2月頃から、世の中の論調はどう変化したかまず見ておきましょう。
私には、ブログのコメント欄が賑わったころとはだいぶ変わり、あれは杞憂だったかもしれない、という論調が多くなったように思えます。当たり前です。アメリカ経済はいまだ順調で、アメリカ発のショックの芽など、どこにもありません。一時的とはいえ、何故あれほどまでに悲観的になったのでしょう。
みなさんに申し上げたいのは、
「相場に振り回されなさんな」ということです。
そして同じように、
「報道に振り回されなさんな」です。
クロちゃんが凶暴さを発揮したころから彼の意図に反して円高、そして世界的株安と続いたため、日本での論調もだいぶ悲観的になっていました。あたかも世界同時不況が今年中にもありえるほどでした。
でもよく考えてみてください。アメリカの実体経済は、12月の利上げからたった1-2か月で急転直下、おかしくなってしまったのでしょうか。そんなことはぜんぜんありません。もちろんこのところの統計数字もよかったり悪かったり、跛行色が強くなったのは確かです。しかしアメリカの株式相場の反応ほど実体経済は悪くなっていないというのが、現在の状況だと私は思っています。
昨年の10-12月期、日本のGDPは年率マイナス1.1%でしたが、アメリカのGDPはプラスの1.0%です。そして先週発表の雇用状況も好調維持の目安である新規雇用者数20万人を上回り、失業率も4.9%とこれは絶好調の数字です。
もっとも雇用は遅行指標だし、いくつかの先行指数は目安の50を割り込むものが出てきているため、若干のスローダウンはあるかもしれません。しかしそれはしょせん景気循環であって、構造的に大きな問題を含んだ後退ではありません。数年も拡大が続いたのですから、少しは休ませてあげましょう(笑)。
では、今後を見るにあたり、一番大事なことは何か。
世界経済を震撼させるような芽はどこにあるかを見ておくことです。アメリカには、サブプライム問題のような世界を震撼させるバブル崩壊の芽はありません。世界経済を揺るがすとしたら、筆頭は中国。その他の新興国経済は規模からして世界は震撼しない。原油価格の暴落も問題なし。順番で次があるとすればそれは日本です。
次回からはアメリカを不安視する原因となっているシェールオイル産業などを見ていきます。
つづく