昨日7-9月期のGDP統計が出ました。私含め誰もが低めのプラスの予想をしていましたが、まさかのマイナス1.6%と出て大きなサプライズになり株価も500円ほど下げました。消費税値上げ後の4‐6月期のマイナス7.3%に続くマイナスで、四半期のデータが2期連続でマイナスするということは、景況感の定義上は不況入りということになります。アベノミクスは2年を経て一時は成功したかにみえましたが経済の実態は不況に入ってしまいました。
そもそもアベノミクスとは何かから見てみます。内閣府のHPに説明がありますが、それによると「3本の矢をもってデフレを克服し経済を成長軌道に乗せ国民の富の増大を図る」。そしてその結果税収も増え財政バランスを達成する、というものでした。ここまでの2年を3本の矢に従ってレビューしますと、
1.大胆な金融政策
13年4月に黒田氏が1本の矢どころかバズーカ砲を発射し、「政策は小出にしない。できることはすべてやった」と豪語したものの1年半を経ても奏功せず、前言を翻し「できるものは何でもやる」と言いだし、2発目のバズーカ砲を発射しました。
なぜ奏功しなかったのか。私がこれまで何度も言ってきたとおり「いくら国債を買ってもオカネは世の中には回らず、日銀にブタ積みされるだけ」だからです。その副作用は甚大です。赤字国債を日銀がいくらでも引き受けるので、金利と言う経済の体温計を失い財政規律などなきも同然になっています。2発の砲弾は天に向けて発射されていますので、いずれはクロちゃんの頭の上に落ちてきます。
2.機動的な財政政策
失われた20年の最大の失敗は痛み止めのモルヒネを注射し続けたこと(財政出動)で、日本全体が中毒になってしまったことなのに、まだ同じことをしようとしています。今回のリセッション入りに対しても財政出動されるでしょう。その出動がまた「サプライズ」の規模になると、中毒ではすまされずショック死が待っています。
3.民間投資を喚起する成長戦略
美辞麗句は数多く並びましたが、具体的な成果は上がっていません。
では一応でも成果とカウントできるものは何か。必ずしも成功までに至っていませんが、一応上げますと、
1.デフレマインドの転換
もしかするとアベノミクスは本物かもしれないと思い、財布のひもを緩める人が出てきた。しかし大多数の人は物価上昇が先に来たので実質収入が減少してしまい、消費は縮小している。
2.株価の上昇
大企業のマインドも改善され、円安から業績が向上した。海外投資家を中心に日本株は大きく買われアベノミクス提唱前と比較すると2倍に上昇している。それが富裕層の財布を緩めるという資産効果を持った。
3.円安・物価上昇
金融緩和最大の成果で、物価上昇に寄与した。しかし多くの人にとって収入増がない中での物価上昇はマイナス効果しかないし、自分の資産をドル建てで評価すると巨額の目減りが起こっている。円安で輸出数量が増えるはずが全く増えず、大きな見込み違いが生じているので、目標は達成できても不幸の連鎖でしかないとも言える。
4.大手企業の賃上げ
アベノミクスへの支援という名目もあるため、利益が向上した企業では賃上げとボーナス増加を実現できた。しかし中小企業の社員、地方に住む自営業者、そして年金生活者も含め大多数にとっては恩恵が及んでいない。日本全体では物価上昇により実質収入がマイナスになってしまった。
ではアベノミクス2年のここまでの総合評価を私なりの言葉で表現しますと、
1.物価上昇を先行させれば経済全体がよくなるというのは本末転倒の幻想だった
2.少数の株式投資家のみが成果を実感したが、大多数の国民にとっては不幸の連鎖が続いている
もちろん最終結論はまだとしても、ここまでは株価を上げた以外に目ぼしい成果はないと言えます。それが今般の消費増税先延ばしと解散という強引な政局を招いたと言えるのではないでしょうか。
次回は消費増税先延ばしに関するインパクトをみてみたいと思います。
つづく
そもそもアベノミクスとは何かから見てみます。内閣府のHPに説明がありますが、それによると「3本の矢をもってデフレを克服し経済を成長軌道に乗せ国民の富の増大を図る」。そしてその結果税収も増え財政バランスを達成する、というものでした。ここまでの2年を3本の矢に従ってレビューしますと、
1.大胆な金融政策
13年4月に黒田氏が1本の矢どころかバズーカ砲を発射し、「政策は小出にしない。できることはすべてやった」と豪語したものの1年半を経ても奏功せず、前言を翻し「できるものは何でもやる」と言いだし、2発目のバズーカ砲を発射しました。
なぜ奏功しなかったのか。私がこれまで何度も言ってきたとおり「いくら国債を買ってもオカネは世の中には回らず、日銀にブタ積みされるだけ」だからです。その副作用は甚大です。赤字国債を日銀がいくらでも引き受けるので、金利と言う経済の体温計を失い財政規律などなきも同然になっています。2発の砲弾は天に向けて発射されていますので、いずれはクロちゃんの頭の上に落ちてきます。
2.機動的な財政政策
失われた20年の最大の失敗は痛み止めのモルヒネを注射し続けたこと(財政出動)で、日本全体が中毒になってしまったことなのに、まだ同じことをしようとしています。今回のリセッション入りに対しても財政出動されるでしょう。その出動がまた「サプライズ」の規模になると、中毒ではすまされずショック死が待っています。
3.民間投資を喚起する成長戦略
美辞麗句は数多く並びましたが、具体的な成果は上がっていません。
では一応でも成果とカウントできるものは何か。必ずしも成功までに至っていませんが、一応上げますと、
1.デフレマインドの転換
もしかするとアベノミクスは本物かもしれないと思い、財布のひもを緩める人が出てきた。しかし大多数の人は物価上昇が先に来たので実質収入が減少してしまい、消費は縮小している。
2.株価の上昇
大企業のマインドも改善され、円安から業績が向上した。海外投資家を中心に日本株は大きく買われアベノミクス提唱前と比較すると2倍に上昇している。それが富裕層の財布を緩めるという資産効果を持った。
3.円安・物価上昇
金融緩和最大の成果で、物価上昇に寄与した。しかし多くの人にとって収入増がない中での物価上昇はマイナス効果しかないし、自分の資産をドル建てで評価すると巨額の目減りが起こっている。円安で輸出数量が増えるはずが全く増えず、大きな見込み違いが生じているので、目標は達成できても不幸の連鎖でしかないとも言える。
4.大手企業の賃上げ
アベノミクスへの支援という名目もあるため、利益が向上した企業では賃上げとボーナス増加を実現できた。しかし中小企業の社員、地方に住む自営業者、そして年金生活者も含め大多数にとっては恩恵が及んでいない。日本全体では物価上昇により実質収入がマイナスになってしまった。
ではアベノミクス2年のここまでの総合評価を私なりの言葉で表現しますと、
1.物価上昇を先行させれば経済全体がよくなるというのは本末転倒の幻想だった
2.少数の株式投資家のみが成果を実感したが、大多数の国民にとっては不幸の連鎖が続いている
もちろん最終結論はまだとしても、ここまでは株価を上げた以外に目ぼしい成果はないと言えます。それが今般の消費増税先延ばしと解散という強引な政局を招いたと言えるのではないでしょうか。
次回は消費増税先延ばしに関するインパクトをみてみたいと思います。
つづく