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ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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ドル円の121円突破!

2014年12月06日 | 2014年の資産運用
  本日朝経済ニュースをチェックすると、アメリカの超強い雇用統計を受けて、ドル円が前日比1円25銭安の121.42銭となっていました。おっちょこちょいのななしさんのご要望もあり、私の見方を書いてみます。

  一日で1円以上動くのは尋常ではありません。これが果たしてアメリカの雇用だけで動いたのか、はたまたドル円に何らかの特異な力が加わったためかを見てみます。特異な力とは例えばトレーディングで積み上がったドル売りポジションが踏み上げ状態にされた、つまり強制的に決済させられたような状況を指します。

  我々にはトレーディング・ポジションが短期的にどうなっているかの詳しい情報を見ることはできません。しかしヒントになる情報はあります。ドルの対円だけではなく対ユーロなどの動きです。対ユーロでも対ポンドでも対円と同じ様な動きになっていれば、ドル円だけの特異の動きではなく、雇用統計によってドルが全通貨に対して高くなったということを意味します。

  昨日のドル円は1.25円、1.0%安。一方ユーロドルは0.75%安でした。両者ともに一日としてはかなり動いていますが、円とユーロでは大きな差はありませんでした。ポンドも同様ですので、今回のジャンプはどうやら雇用統計インパクトのようです。

  しかしドル円が大きく動く前の4カ月前の数字を比較すると大きな違いが見てとれます。ドル円は18%の円安ユーロドルは7%のユーロ安とかなりのひらきがあります。下の数値がそれを示していますが、ユーロの場合はドル円とは違い1ユーロが何ドルかで表示されますので、数字が小さくなるとユーロ安になります。

         8月5日   12月5日    比較
ユーロドル  1.3376    1.2286    7.5%のユーロ安
ドル円     102.58     121.44    18.4%の円安


  では、私が「120円を超えてくると大変だ」と言っていたことの内容について述べます。私が従来から心配していることの内容です。

1.07年来の円の安値124円を抜けてくると、いよいよ本格的円安の開始になる
2.せっかくしぼみかけた物価上昇の再燃は国民窮乏化に拍車をかける
3.政府・日銀の尻に火が付き、大本営発表だけでは済まなくなる
4.累積債務を積み上げ続ける政府、その債務を買い続ける日銀が共に信頼を失う

  それでも政府・日銀は振りあげたコブシを下ろすことができず、クロちゃんは大本営発表を続ける可能性は大いにあります。

何故か?

  超緩和政策を巻き戻すことは決してできないからです。円安が行き過ぎたからといって今さら国債買入れを停止することはおろか、売却することなど絶対にできません。彼の究極の目的である2年後2%の目標にまい進するのみです。

  また選挙運動中のアベチャンも「この道しかないんです」の大合唱をここでやめるわけには絶対にいかない。

  確信犯である二人の意地が日本国民を奈落の底に引きずり込もうとしています。

  それに対抗する道はたった一つ。「円のリスクから逃げること、『この道しかないんですよ、みなさん』(爆)」

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アメリカの金利見通しについて、その2

2014年12月05日 | 2014年の資産運用
  円ドルレートは遂に120円台をつけましたね。おっちょこちょいのななしさんから私が以前書いていた「120円になったら大変なことになる」って、いったいどうなるのという質問を受けました。この話はすぐフォローするようにしますが、今回はアメリカ金利の続きです。

  前回からアメリカの金利低迷の分析を始めました。前回指摘した金利に影響を及ぼしそうな要因は、

金利上昇要因;物価の上昇、雇用の回復、

  これらはおよそ予想の範囲で動いている

金利低下要因;需要サイドと供給サイドの要因があり前回はFRBと海外投資家の需要を数値で把握しました。
  
①需要;FRBによる国債購入が続いていた。額は14年の年間で36兆円

②需要;世界経済のスローダウンからアメリカにとっては海外投資家である世界の投資家がリスク資産から安全資産であるアメリカ国債にシフトしている。額は48兆円でこれは巨額

 そして私が見逃していた要素として以下があると指摘しました。それは

③供給:連邦予算の赤字削減

  ではその赤字額がどの程度か数字を見てみます。ピークだった09年度からちょっと飛ばしますが年度ごとに並べますと、

2009年度 :1兆4130億ドル               
  ---
2013年度: 6800億ドル
2014年度: 6490億ドル(前年比でマイナス4兆円、率にして5%)
2015年度: 5640億ドル (前年比でマイナス10兆円、率にして13%)
2016年度: 5310億ドル


  14会計年度(14年9月終了)の赤字は09年のピーク時から比較すると半減以下です。前年比での赤字削減額は4兆円程度でした。金利は将来を織り込んでいますので、すでに10月から開始されている15年度も見ますと、赤字は前年比で10兆円削減されることになっています。海外投資家の買いやFRBの買いに比べると要素としては小ぶりですが、発行見込み額が13%減少するのは小さい率ではありません。

  ということで15年はFRBの36兆円の買いがなくなりますが、予算上の赤字が10兆円減るので、差し引き額は26兆円です。もし海外勢の買いが今年と同じ程度継続するとしても26兆円の減少はかなりの額です。

 では、今後を見通していきましょう。インパクトの大きな海外勢の需要はどうなるのでしょうか。それを見通すのはとても困難ですが、にも関わらず金利に影響を与えそうな要素の大まかな見通しを、私なりに並べてみます。

世界経済の動向・・・欧州経済が低迷気味で、物価上昇もゼロ近辺。中国の成長鈍化。IMFの世界経済予測も今年より来年の成長率鈍化を見込む。これらはリスク資産か安全資産かの選択に影響し、米国債への選好は継続しそう

ドルをめぐる為替動向・・・経済の好調から株も買われ、世界経済のリスク回避から債券も買われる。通常は一致して買われるより、片方が買われ片方は売られるが、投資家が世界に及ぶため、このような動きになっている。ドルの選好は米国債需要につながる。ユーロは今後さらに緩和策が実施されるため、対ドルでは弱含む。安全通貨と言われた円は危険通貨になりドル高の流れに変化なし

資源価格の動向・・・価格低迷は資源国の成長を鈍らせ、オイルマネーなどの先進国への還流が鈍化し米国債への需要を減らす。ファンダメンタルズ的には資源消費国アメリカの経済を潤し、他の先進国もプラスの影響を受ける。しかし物価の低迷につながるため、金利を抑制する

  これらは独立して動くものではなく相互に影響しますのでクリアーな数量的な予測は困難ですが、いずれも今後アメリカ金利には抑制的な働きをしますので、要注意です。

  以上、金利を低下させるいくつかの要素を取り上げて見てみました。

  次にアメリカ国内の要素の先行きを見てみます。

  上昇要因であるはずの物価と雇用のうち、雇用は堅調さが持続することが見込まれますので、こちらは問題なし。一方物価はどうでしょうか。アメリカは貿易赤字国ですから、米ドルの強さは輸入価格の低下を通じて物価の抑制要因になります。その上世界の商品相場、特に原油価格の下落は物価をさらに押し下げる要因です。

金利上昇の最大のリスクになるのはこの物価だろうと私はみています。

つづく

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アメリカの金利見通しについて、その1

2014年12月02日 | 2014年の資産運用
  今年もあと一カ月になりました。日本国債の格付けはムーディーズによって1ランク格下げされシングルA1になっています。理由は消費税の先延ばしとアベノミクスが日本財政と経済の先行きに不確実性をもたらしているというものです。フィッチ・レーティングスも格下げが見込まれます。格下げのたびに格付け会社に非難が集まることが多いのですが、いくら批判しても彼らは一定の影響力をもっているため、あなどってはいけません。  

  さて、世界経済のスローダウンをしり目に、アメリカ経済は順調に回復基調をたどっています。コメント欄でお約束したアメリカの金利動向が本日のメインテーマです。

  アメリカは雇用が大方の予想以上の回復を見せ、それが消費の堅調さを裏付けています。耐久財消費を代表する車の売れ行きは絶好調。住宅投資も順調です。アメリカの場合、この二つのセクターは金利動向に大きく左右されます。金利が低いままで推移していることが雇用回復と一体になりアメリカ経済を順調に推移させています。

  何人かの読者の方から金利について質問が寄せられていますので、私の見方をお伝えします。私は常々金利や為替を的確に予想することなどできませんと言いながら、みなさんの要望に応える形で予想をしてきました。今年の金利については「FRBの政策転換の半年前くらいには市場が先走る形で金利の上昇があるだろう。アメリカのエコノミストのコンセンサスの上限は3%程度だが、私はそれより上の3.5%も可能性あり」という予想でした。

  この予想は予想通り当たりませんでした(笑)。私の予想が当たることを期待されていた方には申し訳ありません。ではまず何故予想が当たらなかったかにについて自分なりに検証してみます。

  アメリカの金利を見通すのに私がなによりも重要な指標として見ているのは「物価と雇用」だと申し上げてきました。物価はある意味目標値である2%を若干下回っていますが、10月の1.7%は悪い数値とは言えません。雇用は順調に回復し失業率は6%を切っています。そして経済全体も7-9月期のGDPは実質でプラス3.5%ととても順調です。日本のマイナス成長とは大違いです。

 では金利を低下させるインパクトを与えているものはなんでしょうか。アメリカを除く世界成長の鈍化は重要な要素でしょう。それが原油価格に代表される商品相場を低迷させています。特にここにきて原油価格の下落の激しさは、リーマンショック後の暴落を想起させるほどになっていて、「シェール革命危うし」の声まで上がっています。ですが私はアメリカ経済にとって原油価格の下落は大きなプラスだと思っています。消費増大の最大の貢献者だからですが、その話題はまた機会を改めます。

  世界経済の低迷は日本を始め欧州、中国、ロシアと大所が軒並み予想に届かず、世界にとって大きなリスクと認識されるほどになっています。そして中国はすでに緩和に踏み切り、欧州もさらなる緩和が検討されています。しかしドイツなど一部には底打ちから若干の回復の芽も出てきました。この世界経済の低迷がアメリカの金利に対してどの程度のインパクトを与えるか、数字的に検証するのはとても難しいのですが、少しだけヒントになる数字があります。それは米国債保有者のうち、国外の保有者が保有額を増加させているか否かの数字です。海外投資家が自国株式を中心とするリスク資産から安全な投資先にシフトさせているか否かの示唆が得られるからです。

  アメリカの財務省は毎月の数値を集計して公表しています。11月末に9月までの数字が発表されていますので、1年前と比較します。比較としてアメリカの連銀FRBの保有額の変化も一緒につけます。

                  13年9月   14年9月   前年比    対前年増加額
海外保有額(10億㌦)    5,653      6,060     +7.2%   407・・・約48兆円
FRB保有額           2,154     2,461    +14%    307・・・約36兆円


 海外投資家は1年で400億ドルも保有を増やしています。FRBの保有額も予定通り順調に増えましたので、金利を押し下げる効果は大いにあったでしょう。しかしここに来てFRBはこれ以上の買い取りを停止しています。両者の合計額の4割にもなる買い手がいなくなるのですから、相当なインパクトがありそうに思われます。しかしFRBはこれまで徐々に買い取り額を減らし、10月には停止しています。この半年あまりの助走期間、そして完全停止後もその効果が金利上昇として表れていないという現実がありますので、FRBの買い取りだけでは金利低下を説明できません。

  コナンドラム?

 この金利低迷は、説明がつかない不思議な現象=コナンドラムなのでしょうか。

  いいえ、そうではありません。私がこれまで大きな要素に入れていなかった大事な数字があります。それは米国債に対する需要側ではなく供給側の数字、つまり財政の赤字額です。

  アメリカと日本どちらが安全かの議論をした時に、私はアメリカの財政見通しについて説明しました。その時、アメリカは単年度主義ではなく、年度をまたがって将来の見通しをコミットする形で予算を立て、赤字額も天井があって十分にコントロールされているというお話をしました。

  どうやら米国債に対する需要の大きさだけでなく、供給側である財政赤字の計画的削減が、金利上昇をはばむ大きな原因の一つのようです。

つづく

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特集;株式投資  by 週間ダイヤモンド

2014年11月23日 | 2014年の資産運用
週間ダイヤモンド、11月22日号の特集は株式投資でした。

タイトルは「買っていい株、買ってはいけない株 急変相場を見極める」

本当に見極められるのか、中身をちょっと見てみましょう。私は個別株には関心がないので、記事全体を大まかに見て過不足を指摘するにとどめます。

この号は10月31日の日銀クロちゃんのサプライズ緩和を受けて急きょ特集が組まれ、11月17日の7-9月期GDPの発表前に印刷されていますので、マイナス成長は知らずに書いています。

特集記事のはじめのころに、みなさんがきっとよくご存知の大手外資系・日系投資銀行のチーフエコノミスト5人の売れっ子専門家が今後の相場を予想しています。年収はきっと5人とも5千万から1億円以上と思われるピカピカのプレーヤーです。

質問1.消費増税を年末までに決定する確率

A氏;70% B氏;90% C氏;85% D氏;50% E氏;N.A.

 すでにみなさんの笑う顔が浮かんできていますが、問題外の大外れでした。私も増税ありとみていましたので、大外れです。

質問2.増税先送りの場合株価は

A;中立 B;上昇 C;下落 D;下落 E;短期上昇、長期下落


 肝心な株価ですが、見方が割れています。実際には見送りのニュースが出てここまで上昇していますので、2人が当たり、中立を含3人は外れでした。

とまあ、当代一流のエコノミストでも、消費増税の決断があるかないかで大外れ。ない場合の見方では意見が割れ、実際には当たりは2人でした。外した理由は7-9月期のGDPの見通しの狂いからきているものと思われますが、GDPの予測こそ彼らの本職中の本職です。

  私がこの株式相場予想の特集記事を話題にした理由は、それがいかに難しいかを実例をもって示したいからです。先日のコメントの欄にただのさんから次のような質問をいただきました。

>今は安倍ちゃんにのっておいてインフレ資産を増やす時期かなぁ~とも思いますが日本の資産インフレ率とドル円の為替による日本円の資産価値減少の割合はどちらが大きくなると思われますか??

それに対して私の返答は、

私にはそれを予想する能力はありません。そうした能力がなくても可能な投資法をお伝えするのが私の役目で、それこそが「ストレスフリーの資産運用」だと思っています。答えになっていなくて、すみません。」としています。

これは冷たく逃げているのではなく、本当に私の手には余るからなのです。たとえば目の前に衆議院選挙があります。選挙は水もの。先日の消費増税がそうだったように、ほとんどの人が増税決断を予想しながら、大外れ。選挙も誰もが自民党の過半数確保を予想しています。しかしもし自民党がまさかの過半数割れとなったらいったい世の中はどうなるのでしょうか。株価はこれまでアベノミクスをはやしたて、それに乗った黒田日銀の異次元緩和を根拠に上げてきたのですから、もしかすると暴落するかもしれません。
  
  予測不可能なのは選挙ばかりではありません。世界を見通せば中国経済はますます怪しくなっているし、ロシアを巡る東欧情勢もあやしく、イスラム国からも目は離せません。政治は「一寸先は闇」と言われますが、それと同様世界情勢も株式相場も一寸先は闇です。ただのさんのご質問にある資産インフレに乗っていられるのはもしかすると投票日までのわずか2-3週間かもしれません。

  週間ダイヤモンドにはもう一つ注目すべき投資体験談が載っています。実名・写真入りのためここでも実名でいきますと、「さおだけ屋は何故潰れないのか」の著者で公認会計士の山田真哉氏の投資体験談です。2005年に株式投資を開始し投資総額は2,500万円。一時は1,500万の含み損を抱えましたが、アベノミクスでやっと含み損が2-300万円になったとのこと。なかでもJALに投資し破綻、カリスマ投資家から「山田さんだけに教えます」と言われた買った会社も倒産したそうです。しかも株のほかに彼はFXでも大失敗。4,000万円を失っています。ベストセラーで得た印税が消えてなくなったそうです。それでも懲りずに余裕資金ができたらまた株を買いたいと結んでいます。もう一つ、悪い冗談としか思えませんが、最近の著書は「NISAにゅうもん」だそうです。

  彼の失った投資額はサラリーマンなら生涯の痛恨事ですが、最近つかまったおばさんの10億をバクチまがいの先物やFX投資で失った話に比べればまだかわゆいのかもしれませんね。

  ちなみにダイヤモンド社で私を担当してくれた方は、「当社が株式投資特集を組んだあとはほとんどが暴落でした」と言っていました(爆)。

  さわらぬ神にたたりなし!

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アベノミクスとは何だったのか その2

2014年11月20日 | 2014年の資産運用
回答は、「不況の克服をデフレの克服と言い変えたに過ぎない」です。

  円安が恐ろしいほど昂進し118円台に乗せています。クロチャンはバズーカ2の成果だと誇らしげですが、私は増税先延ばしによる円の信認低下がここにきての原因と見ています。

  消費増税の先延ばしについてエコノミストや経済界を含め大方の意見は「景気の回復が先」と、賛成意見が多くなってきました。7‐9月期のGDP発表まで大方の意見は「財政再建のためには予定通りの増税が必要だ」というものでした。何と言う変節でしょうか。

  その変節はアベチャンも同じことです。これまで強気の発言を繰り返し「デフレの克服に向けて経済は着実な回復軌道に乗っている」と豪語していたのが、おとといの解散宣言の中では一転、「残念ながら成長軌道に乗っていない」と発言しました。経済は突然脱線などしません(笑)。数字を見ていればわかりきっていたことを、大本営発表として強弁していたのですが、遂に現実を認めざるを得なかったのです。

  我々はこうした実績数字に反する政府の発表をしっかりとチェックしないと、個人的にも将来を誤ります。どうかその点をお忘れなく。

  消費増税について私はもちろんいやですが、せざるを得ないと思っています。「財政再建は近視眼的な景気変動によって左右されるべきではない」という意見です。しかもアベチャンは緊急経済対策が必要だとまで言い始め、政府もその方向に動いています。前回も申し上げましたが、痛い時にはモルヒネをという甘い政策がこの国をここまでひどい中毒患者にしているにもかかわらず、まだ懲りずに注射を射ち続ける。アベチャンは「デフレ克服の芽をここで摘んではいけない」とも言っています。実は歴代内閣も冷静に考えれば同じ様なことを言い続け、その結果が返済不能な累積債務となっているにもかかわらず、同じことを繰り返そうとしています。

  今回の「アベノミクスとは、不況の克服をデフレの克服と言い変えただけの話」なのです。

  増税先送りに異を唱える向きはすでに少数派になりつつあります。その一つが格付け会社のフィッチ・レーティングスです。増税先延ばしに対していち早く反応。「日本の格付けを見直しする」とアナウンスました。

  18日の日経電子版を引用します。
『大手格付け会社のフィッチ・レーティングスは18日、安倍晋三首相が10%への消費税率の引き上げ時期を2017年4月に1年半延ばすと表明したことを受 け「日本国債の信用に関して重大な事態の進展だ」とのコメントを発表した。そのうえで、年内に日本国債の格付けを見直す方針を示した。日本の経済や財政の状況、先行きの財政再建への取り組みを再点検する。同社は現在、日本国債の格付けを上から5番目の「シングルAプラス」、格付けの見通しは「ネガティブ (弱含み)」としている。』

  政府は2015年度までに基礎的財政収支の赤字をGDP対比で2010年度の6.6%に対し、2015年度には3.3%に半減させる目標を立て、それを国際公約にしています。増税を先送りすれば達成は困難です。財政健全化目標が達成できずそれが日本国債格下げにつながれば今後さらに悪い円安につながる可能性があります。格付け会社のコメントをないがしろにすると、あとで痛い目に遭います。
 

  さて、私はこれまで日本の国債はやがて危うくなる、そのルートは2つあると指摘していました。

  一つ目は、日本政府の累積債務が家計の金融資産を食い尽くし、国の赤字補てんができなくなる金融資産喰いつくしルート。二つ目は貿易収支の赤字が大きくなり、経常収支も赤字になって円安が昂進し、危険を察知した人々が自分の資産をドル等の外貨に移し始め、国の赤字補てんができなくなる円安ルート。このいずれかもしくは両方が一度に来て財政が立ち行かなくなる可能性がある、と言い続けてきました。

  このところの円安の進展具合から円安ルートが家計の金融資産喰いつくしルートより先行する可能性が高くなりそうだと考えていました。ところが私の予想に反して消費増税の先延ばしが決定されることにより両方が一度に来るシナリオも考慮に入れておく必要があると思い始めています。「考慮に入れる」とは弱い表現ですが、その理由は日銀の無茶な国債爆食によります。

  国債の発行残高約1千兆円に対して、日銀の保有残高は200兆円で、それを今後の予定では300兆円以上に増やそうとしています。国債発行残高の3分の1を中央銀行が保有するというのは中央銀行による赤字国債引受以外の何物でもありません。市場から買おうが、政府発行を直接買おうが同じことです。しかも繰り返しますが国債爆食は金利という経済の体温計を壊してしまっているため、本来は体温が徐々に上がって来るのをチェックできますが、体温が上がる前にショック死する可能性があるのです。

  昨日日銀の政策決定会合があり、その後にクロチャンが記者会見に臨みました。2四半期連続のマイナス成長にもかかわらず、彼は「経済は穏やかに回復しつつある」と大本営発表を続けています。その点ではアベチャンよりずっと頑固なようです。そして注目すべき発言は、「財政再建を政府に期待している」「財政再建は日銀の責任ではない」という発言です。これは消費増税先延ばしに対する批判です。なにをおいてもデフレ克服という強引な政策を推し進めるクロチャンですら、増税先延ばしは計算外だったのでしょう。

これまで歩みを共にしてきたアベクロコンビの間に、初めて隙間風が吹きました。

  この支離滅裂になりつつある自民党政府・日銀を一方に見ながら、野党は野党で対立する政策を掲げられない。双方が増税先延ばしだと言っているのに、選挙ではいったい何を問うのでしょう。

だれに投票したらいいの?

お願いです、どなたか教えてください(笑)

おわり

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