1990年のケルンRsoによるマーラー第1サイクルがはじまった。
今後12か月の間に今回も含め3回のツアーを行い、マーラーの交響曲全部と大地の歌を演奏するというもの。
第1サイクルの2番目の曲は第2番復活。どんな感じだったのかしら。
.
1990年11月24日(土)
サントリーホール
.
マーラー作曲交響曲第2番復活
.
ソプラノ、クリスティーナ・ラーキ
メゾ、フローレンス・クイヴァー
.
ケルン放送合唱団
南ドイツ放送合唱団
.
ガリー・ベルティーニ指揮
ケルン放送交響楽団
.
2番は3番と異なり、どちらかというと1番に近いウェットな曲だ。復活というだけあったものものしい曲ではある。
この曲の白眉は何が何でも第5楽章の全部てんこ盛り状態がすごい。
炸裂する導入部、拡大されたスコアのティンパニの爆発的持続音、それにつづくブラスの咆哮、第三部の草書のようなスコアを吹くウィンド、違った二つのテンポの同時進行、とにかく、聴きようによってはメチャクチャな音楽、それを新しいものととらえるか、この曲も生で観聴きしなければならない。それは文字通りだ。ブラスがホール席で吹奏したりするので、聴衆もそれなりに大変なのだ。昔、小沢征爾がボストンを連れてカーネギーホールの定期でこの曲をやったときは、第5楽章の追加ブラスを2階正面バルコニーに置いた。だから聴衆の方をみながら棒を振っていた。指揮者が聴衆の方をみるというのはどうも変な感じではある。
ということでケルンのときはどうだったかというとはっきり覚えていない。ブラスが2階席横の方に陣取っていたような気もする。あまり印象に残っていないということは、小沢ほど派手ではなかったのだろう。
.
ところでこの曲、第1楽章冒頭の音を聴くとオーケストラの力がわかる。高弦による幅広なトレモロのなか、低弦がゴソゴソッ、と刻みをいれてくる。ここらへんもつれるかもつれないか。ケルンRso.の音はいま一つ透明感に薄い。世界トップクラスとはいかないようだ。ここを明瞭に弾ければいきなり唸るところだがそうはいかないようだ。それでも、強い音で音楽の輪郭を聴こえなくする、といった変なことをすることもなく、1小節ずつきっちりと仕事をしていく。こうゆうのは指揮者ベルティーニの目指すところだ。もしくは目指していなくても、このような交通整理がうまく出来る指揮者なのだ。ベルティーニに世界トップクラスのオーケストラがあてがわれたことはないと思うが、彼は自分の居場所がわかっていたのかもしれない。
つづく
.