河童
「日本人にはハロウィンなんて関係ないんじゃないか。」
静かな悪友S
「いやいや、日本人は西欧のありとあらゆるイヴェントを組み込まないと気が済まないのさ。彼らが右を向けば、右に行列をなすわけさ。その先になにがあるかわからんが、とりあえず並んでみようと。」
河童
「なんでかね。そうゆう特質なのか。河童界では理解できんな。」
S
「最近は商売便乗みたいなところもあるみたいだ。小金あまり、時間あまり、平和ボケ、無いのは、何だろう。パンプキンの中身みたいなもんだ。」
河童
「人間界だとこの前夜祭、外国かぶれした人間どもが余計な仮装をして暴れまくり地下鉄も時間によってはうようよしているな。ウィークデイの何でもない日でもおめでたいことだ。後先見ずに遊びまくりだろう、きっと。」
S
「そうだな。おめでたい。ところでアメリカあたりでもそんな騒ぎが大きかったのかね。」
河童
「どうかな。アメリカ人のすることはたまにわからないこともあるし。」
S
「河童さんが棲息していた摩天楼ではガキどもも入ってこれなかったんだろう。」
河童
「それがそうでもないんだ。ドアマンがいて、セキュリティも厳重で普段なら絶対に誰も侵入できないはずなのにだ、ドンドンとドアをたたく音がする。」
S
「それで。」
河童
「誰だ。不埒な闖入者は。といっても反応がない。誰だ誰だ。こんな21階まで上がってくる奴は。名を名乗れ。」
S
「マンハッタンでは何がおきても不思議はない。」
河童
「ドアの覗き穴から恐る恐る廊下をみても誰も視界にはいらない。それなのにドンドンたたく音だけはやまない。」
S
「なるほど。ガキども視界にはいらないはずだな。」
河童
「3~4人でドアの外でわめいている。なんかくれないとワルするぞ。ってね。はは、これは外で騒いでいる連中のガキどもが、ドアマンに言って催促にきてるんだな。というのはわかった。」
S
「でもあげるお菓子なんか部屋にないだろ。」
河童
「そうだ。毎晩飲みふけって皿にもアルコールが充満しているし、いま皿、何もない。」
S
「でも何かあげないとあの子たち帰らない。」
河童
「最後の手段さ。おかね。お小遣い気味のおかねを渡すと割とおとなしく退散するんだな。利口な子たちだよ。」
S
「毎年そんなことしてたのか。」
河童
「いや、運悪くニューヨーク・フィルの定期のない月曜とか水曜にあたると居留守を使うわけにもいかないが、それ以外は毎晩エイヴリーフィッシャーホールかメトロポリタンオペラハウスかはたまたカーネギーホールだな。だから、もぬけのからというわけさ。でも後で考えると、外からの侵入というのはやはり考えにくい。同じビルの他の住人の子供たちの悪ふざけということだったのかもしれない。」
S
「なるほどね。それはそうとお河童さんの21階のお部屋の番号はSuite何番だったんだい。」
河童
「#21BBだね。」
S
「そうか。それで、Best Boy だったのかね。Bad Boy だったのかね。」
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