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2009-2010シーズン聴いたオーケストラ観たオペラより。
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この日は、お昼に新日フィルを聴いたのではしご。
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2010年7月24日(土)7:00pm
東京文化会館
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<ヴェルディ・プログラム>
マクベス
・前奏曲
・“ここで何をしていたのだい?いってごらん”
(魔女の合唱)
・踊り
・“虐げられた祖国”
(スコットランド亡命者の合唱)
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海賊 “私の頭から暗い考えを”
ソプラノ、イリーナ・ルング
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シチリア島の夕べの祈り 序曲
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ドン・カルロ “ひとり寂しく眠ろう”
バス、ニコラ・ウリヴィエーリ
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聖歌四篇(四つの宗教合唱曲)スタバート・マーテル
バリトン、ガブリエーレ・ヴィヴィアーニ
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ナブッコ
・序曲
・“行け、わが思いよ、金色の翼に乗って”
(ヘブライの捕虜たちの合唱)
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(アンコール)
オテロ “喜びの火、楽しげな炎は”
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ジャナンドレア・ノセダ 指揮
トリノ王立歌劇場管弦楽団、合唱団
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初来日で、椿姫とラ・ボエームの公演の合間の特別演奏会。
清く明るくて、かたくてつるつるしていて、素晴らしくうまいオーケストラのサウンドの響きは上野にこそふさわしい。清らかに響いたこのオーケストラの証明はマクベス冒頭の序曲で既にヴェールを脱いだ。今日ははしごで、お昼の新日フィルとのあまりに違いにびっくり。むろん、サントリーホールと上野の圧倒的な音響の違いもある。でもトリノのサウンドはその上をいく。
ガブリエーレ・ヴィヴィアーニのいかにも劇場にふさわしい歌い手による歌の見栄。
圧倒的なノセダの棒。これでも数年前よりずいぶんとおとなしくなった。体の動きと音楽がこれほど一致をみる指揮者は昨今あまりいない。そして、渋すぎるプログラム。中身で聴かせるノセダらしい。
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リゴレットもなければ椿姫もない。仮面舞踏会もなければアイーダもない。結局それらのようなもの以外からの選曲。それでも6演目からピックアップ。ヴェルディのオペラの多さをあらためて思う。また、このプログラム・ビルディングはノセダのものと思わずにはいられない圧倒的に渋いものだ。
オーケストラ演奏では冒頭のマクベスの前奏曲からして、明るく響きよく刻まれていてプレイヤーの音楽の楽しみを感じる。そして、夕べの祈り、ナブッコそれぞれの序曲の快活とさえいえる響きの明確さ。ノリの良さ。まったく素晴らしい。
歌い手は3名。バスは少し弱かったが、海賊を歌ったソプラノのイリーナ・ルング、ドン・カルロを歌ったバリトンのガブリエーレ・ヴィヴィアーニはよかった。
ルングの折目正しい歌いっぷり。ホール全体にまんべんなく響く声質。劇を表現するベースがしっかりできている。聴く方に快感を感じさせてくれる。
ヴィヴィアーニは役へのめりこむというか没頭できる。つまり劇場、舞台の場数を相当な数こなしているのは明白だ。このような人たちが劇場をささえている。
合唱では、行けわが思いよ、より、スタバート・マーテルの困難さの表現のちりばめられたニュアンスがなんとも言えず良い。
そして、合唱とオーケストラをつなぐのは、あまりにも激しくそれでいてデリカシーに富んだノセダの棒。しゃくり上げる棒なのだが、音との一体感がすごい。彼の通りの音がでてくる、この説得力がすごい。彼もたぶん劇場の人間なのであって、ライブでこそその神髄を聴くことが出来る。観ることもできる。ものすごいアクションでもあるのだ。全力投球。このような生真面目でいながら振り回す棒、音楽に真摯でありながら越える激しさ。今や時代の寵児。わかる。
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