この間、バーでお酒を飲んでいたら、なぜか、ベリーニに話題が舞台転換してしまったので、ちょっと、清教徒、日本初演を思い出した。
ときはバブル真っ盛り、1989年2月という後れてきた日本初演だ。エルヴィーラは歌うしぐさがカラス似と言われていたルチア・アリベルティ。アルトゥーロはアルド・ベルトロという知らない人。カルロ・フランチ指揮東京フィル。藤原歌劇団公演。
注目はテノールのアルトゥーロのハイ音、歌う方もそのためにわざわざ来たのだと思う。全部完璧に出したのかどうか河童の記憶はここでも溶解し始めている。
1発目→3点cis。2発目→3点d。3発目→3点d。4発目→3点f。
こうやって書くだけで気持ちがブルーになってくる。ファルセットではなかったと記憶する。ベルトロはわりと小柄でアリベルティとアンバランスな感じではあったが、本気モードで頑張っていたようだ。高音を出すときの目の動き、顔の雰囲気がホセ・カレラスっぽかったような気もする。
曲自体が日本初であるため、いろんな人が来ていたと思うが、ハイ音の心の準備をしてきた人はあまりいなかったのではないか。みんなバブルに浮かれていたし、また初物だ、と言う感じ。アルコールで日本国中ボーッとしていて思考が停止していたのかもしれない。
でもみんな頑張った。カラス似と言われたアリベルティは、弱音を歌うときあごをひき、伏し目がちになる。一瞬カラスみたいな気がしないでもない。ただ、あごをひくときと声をはりあげるときで音質が異なってしまう為、2色音声のようだ。でも要所は決める。オケも初物にしてはホルンのソロをはじめベリーニ特有のひたすら流れる音楽に身を浸すことが出来た。たしかNHKのテレビ放送があったはずなので、是非DVDで出して欲しいものだ。これは上野なので音もいいはずだ。メト座の河童はサザーランドのエルヴィーラを見たような気がするぞ。それに連隊の娘とかも。別途。
アリベルティはその後も何度か来日した。オペラにガラコンサートにと日本でも活躍した。
‘Pretty night tonight
‘Thanks
‘When you back again?
‘I don’t know
‘Who knows?
‘Nobody knows
‘Nobodyelse knows?
‘I give you my autograph, bringing too much.
‘Thanks
こんな河童会話を最後に、最近は来ていないような気がする。
河童のプリターニ狂時代のアイテムをメモっておく。今手に入るかどうかはわからない。また、ハイ音の上げ下げは聴いて確かめて欲しい。
1.マリア・カラス/ジュゼッペ・デ・ステファノ
ピッコ指揮メキシコ 1952
2.マリア・カラス/ジュゼッペ・デ・ステファノ
セラフィン指揮ローマ 1953(ANGEL RECORD)
3.ジョン・サザーランド/ルチアーノ・パヴァロッティ
ボニング指揮ロンドン 1973
4.ルチア・アリベルティ/アルド・ベルトロ
フランチ指揮東京フィル 1989(NHK-FM)
5.ビヴァリー・シルズ/ニコライ・ゲッダ
ルデール指揮ロンドン 1973
6.マリエラ・デヴィーア/ウィリアム・マテッチ
ボニング指揮マッシモ・ベリーニ 1989
7.エディッタ・グルベローヴァ/ジャスティン・ラヴェンダー
ルイージ指揮ミュンヘン放送 1993
8.エディッタ・グルベローヴァ/マルチェルロ・ジョルダーニ
プラシード・ドミンゴ指揮ウィーン国立 1994(NHK-FM)
9.ミレイラ・フレーニ/ルチアーノ・パヴァロッティ
ムーティ指揮ローマ 1969
10.クリスティーナ・ドイテコム/ニコライ・ゲッダ
ムーティ指揮フィレンツェ 1970
11.モンセラ・カバリエ/アルフレッド・クラウス
ムーティ指揮フィルハーモニア 1979
12.アドリアーナ・マリポンテ/アルフレッド・クラウス
ガヴァッチェーニ指揮カタニア 1972
13.クリスティーナ・ドイテコム/アルフレッド・クラウス
ヴェルトゥリ指揮ブエノス・アイレス 1972
14.ルチア・アリベルティ/ジュゼッペ・サバティーニ
パテルノストロ指揮ベルリン放送 (ハイライト)
15.ジョン・サザーランド/ピエール・デュヴァル
ボニング指揮フィレンツェ5月音楽祭 1963
16.ミレイラ・フレーニ/アルフレッド・クラウス
ヴェチ指揮モデナ 1962
17.カティア・リッチャレルリ/クリス・メリット
フェッロ指揮シチリアーナ 1986
18.ジョン・サザーランド/ジャンニ・ライモンディ
セラフィン指揮パレルモ 1961
19.Lina Pagliughi/Mario Filippeschi
プレヴィタール指揮ローマ 1952
20.ステファニア・ボンファデルリ/ステファーノ・セッコ
クーン指揮カタニア 2001
21.ジョン・サザーランド/ロックウェル・ブレイク
ボニング指揮メト 1986(WQXR)
ANGELのカラスの歌は、美空ひばりがスコアを見ながら歌っているようないざとなったときの正確性に驚く。
指揮者では、リッカルド・ムーティがいかに若いときからものすごい連中とやりあっていたかわかる。日本ではぱっとしないが、昔河童が生聴きしたフィラデルフィアとのスクリャービンの3番はすごかった。彼はこれが得意でウィーンでもベルリンでも振っている。
それはそれとして、ここにリストアップした清教徒、みなさん聴きまくりオペラのつぼにはまりましょう。