河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

PC版に一覧等リンクあり。
OCNから2014/12引越。タイトルや本文が途中で切れているものがあります。

1625- 蝶々夫人、二期会、ルスティオーニ、都響2014.4.27

2014-04-27 22:49:30 | インポート

2013-2014シーズン聴いたコンサート観たオペラはこちらから
2013-2014シーズン
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2014年4月27日(日)2:00-4:45pm 東京文化会館
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プッチーニ作曲
栗山昌良プロダクション
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蝶々夫人
 第1幕48′
 Int.25′
 第2幕47′
 第3幕31′
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キャスト (in order of appearance)
ピンカートン 樋口達哉
スズキ 小林由佳
シャープレス 泉良平
ちょうちょうさん 木下美穂子
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ゴロー 栗原剛
ヤマドリ 鹿野由之
ボンゾ 佐藤泰弘
神官 渥美史生
子ども 今野后梨
ケート 谷原めぐみ

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二期会合唱団
ダニエーレ・ルスティオーニ指揮
東京都交響楽団
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セットもさることながら、人物の動きがきわめて美しい舞台であったように思う。特にスズキ役の小林の微に入り細に入りの至れり尽くせりの動きのしぐさの自然な美しさは特筆に値しよう!
同じくちょうちょうさん役の木下の、こちらはストップモーションというか静止した時の決まり具合の美しさが素晴らしい。ハミングコーラスにおける舞台の奥から光が照射された逆シルエットはそのアイデアとともに静止した美であり、それだけで涙ものだ!ハミングコーラスで我々はそれまでの物語のことを思い起こし、そして先の悲劇まで感じる、入れ込むほどに年甲斐もなく緩む涙腺!
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石の上にも三年ではないが、結果的には全く報われることのなかったその三年ではあるが、毎日毎日、来る船来る船、見続けるちょうちょう。その意味では彼女が自分で作り出した悲劇という側面もあるわけだが、でも、自ら退路を断つことの不安と自覚と覚悟、だけれども夢見る少女。
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第1幕ではルスティオーニのプッチーニ節は半開なれど、この幕前半のどちらかというと屈辱の日本女性という現代からは少しかけ離れた違和感が、徐々にストーリーにグイグイと引き込まれるにつれて霧散していく。人と人、ハートとハートのプッチーニワールドに引き込まれていく。
やや声太な主役二人、ピンカートンは個人的にはもう少し細い声が好みなのだが、ちょうちょうさんの抜群の安定感のもと、二人ともよく通る声だ。澄み切るには指揮者とオーケストラのさらなる頑張りが必要な第1幕。先にはプッチーニが待っている。
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昨今、幕をつないで長丁場にしてしまう舞台が多いがこの演出も第2,3幕をつないでしまったが、ハミングコーラスから間髪入れず一気3幕にはいったのは正解だった。緊張感が保持されたまま悲劇に向かう、聴衆の緊張感も継続されたままのほうが理にかなっている。
その第2幕で、愛くるしい愛の結晶が舞台に駆けてくる。ここで、ルスティオーニは音を爆発させた!ここから俄然鳴らし始め圧倒的な劇的表現を最後まで貫いた。彼のプッチーニ節はこのようなものだった。舞台と同じぐらいドラマチックな鳴りはど迫力で、上野がこんなに鳴っていいのかというところもあったが、まずは彼の解釈、思いの表現に耳を傾けるべきであろう。オーケストラが音を出すわけだがこの劇的な表現のあたりから良い鳴りとなってきた。指揮、オーケストラが一体になり、その上に歌が美しく弧を描く。これぞまさしくオペラハウスのオペラをほうふつとさせるオペラの醍醐味。あぁ、鼓膜がはがれる気持ちよさ。
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ハミングコーラスでは泣く。だいたいいつもこのざまだ。劇が自分に振りかけた気丈と哀れのないまぜ。自分の遠い昔を見ているようなデジャブ感。
ルスティオーニの棒は縁取りが明確だ。ピアニシモサウンドだけが悲哀を表現できるわけでもないんだよと言いたげだ。誠に迫力ある哀しみの表現がツボにはまった。
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第3幕のちょうちょうさん白熱の歌と演技が光る、それとスズキの好演技もみものだ。
ちょうちょうさんの自刀シーンは全てを越えて美しい舞台。このように雄弁な静止、1000の動きをもってしても替えることはできない。日本が舞台のプッチーニを日本人が演技するとこうなる。白熱のラストシーンであった。
おわり


1624- アゲイン!、火の鳥、不滅、山田和樹、日フィル2014.4.26

2014-04-27 01:01:05 | インポート

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2013-2014シーズン
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2014年4月26日(土)2:00pm サントリー
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ストラヴィンスキー 火の鳥、全曲版 46′
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ニールセン 交響曲第4番 12′15′10′
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山田和樹 指揮
日本フィルハーモニー交響楽団
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前日に続き日参。前日はたまたま手に入れたチケットで、この日が本来の定期の席。二日続けて聴くとかなり見通しがきくようになる。前の日行っておいてよかったと言えよう。
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前半の火の鳥全曲は、前晩よりテンポよく跳ねるおもむき、前半から滑らかに後半に推移しクライマックスへ。尤も、前晩より良い」という表現は自分の状態のことを言っている感が強いかもしれない。ただ、場面、情景シーンなどをほうふつとさせるにはまだ遠い。
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不滅は交響曲という範疇に入れてしまうと弱い構成ですが、このコンビはその弱さを忘れさせてくれる濃度の演奏。主題と形式が軟弱すぎる曲だけれども、日フィルはインストゥルメントのもつオリジナルなサウンドが妙に魅力的で、本来あるべき姿を呼び起こしたような演奏になっていた。これは演奏の成功例ということになるかと思います。
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この週は、バレエ音楽週間のようになりました。
水:ヨセフの伝説
木:ヨセフの伝説
金:火の鳥
土:火の鳥
おわり



1623- 火の鳥、不滅、山田和樹、日フィル2014.4.25

2014-04-26 01:05:22 | インポート

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2013-2014シーズン
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2014年4月25日(金)7:00pm サントリー
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ストラヴィンスキー 火の鳥、全曲版 48′
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ニールセン 交響曲第4番 12′16′9′
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山田和樹 指揮
日本フィルハーモニー交響楽団
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両曲ともに演奏会ではあまり聴く機会が無い。
火の鳥の全曲は伴奏音楽の色彩が濃く、ハルサイみたいな緊張感を音だけで味わうには少し厳しいものがある。特に前半はかなり力を入れて聴かないと眠りにつく、実際のところ落ちた。
不滅もネームヴァリューの割には、諸作曲家の数ある名作に比べ、バックバー3段目といった感じ。不透明感漂う曲で、交響曲という枠組みにはめたいのか、はめたくないのか、最後までわからない曲、始終しゃくりをしているような曲想も気になる。
山田も一度は振らなければならない曲たちなんだろうが。
おわり


1622- アゲイン!、シュトラウス、祝典前奏曲、紀元2600年祝典曲、ヨセフの伝説、ネーメ・ヤルヴ

2014-04-25 01:19:30 | インポート

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2013-2014シーズン
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2014年4月24日(木)7:00pm サントリー
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オール・リヒャルト・シュトラウス・プログラム
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祝典前奏曲 13′
紀元2600年祝典曲 14′
ヨセフの伝説 59′
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オルガン、小林英之
ネーメ・ヤルヴィ 指揮 NHK交響楽団
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前の晩は、ほぼわからず、ストレスのたまる演奏会でしたが、この日は、ガラッ、と変わって非常に素晴らしいものでした。いくら音楽という抽象的なものを相手にしているとはいえ、自分の気分の違いだけでこうも変わるもんでもない。と思うのです。
N響は前の晩とだいぶ異なり、気張ってなくて肩から力が抜けた軟らかい演奏、だいぶ、こなれてきた。一晩でこうも違うものなのか。ヤルヴィもそうだな、この日の最終アクションは満面の笑み、満足した出来だったのだろう。
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最初の祝典前奏曲でまずびっくりしました。前晩と「まるで」異なるしなやかな表現でビックリ。演奏解釈が変わったというよりもプイレイヤーたちが二晩目で肩の力が取れたリラックスした表現で演奏できたことが大きいと思います。ヤルヴィも一晩で大きくなったのかフレーズに余裕あり。結局この10分の曲が、前晩より2分も長くなるという昔の大巨匠時代の解釈を思わせる変貌ぶり。精緻で滑らかでうるさくない。本当にいい演奏だったと思います。シュトラウスの中にあってはマイナーな曲も演奏次第でこうも変わるものなのかと、感心感激。
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次の祝典曲。鐘の音アクションは前日のほうが見た目、迫力ありましたけれど、この日は全体的に音楽が整理整頓、コントロールされており、はみ出ていない。この曲も派手なものではありますが四方八方飛び散るサウンドではなく、滑らかなアンサンブルが心地よい。そちらのほうに耳が奪われる。
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クライマックスは後半の大曲バレエ音楽。この日の前半と同じく自然で滑らか。音が飛び跳ねたり盛り上がったり、浮き沈みを繰り返す。音が生き生きと生きている。全く弛緩しない。このバレエ曲のクライマックスはどこなんだろう。たぶんスコアの特定のバーの位置のところじゃないんだ。音楽が進むにつれてうねっていき燃焼する。そういうチリチリ感がこの曲の盛り上がりクライマックスなのかと思ってしまう。美しく燃えた1時間でした。
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結局、ヤルヴィやり尽くしのワンナイト。前半の曲もさることながら、ヨセフ伝説はヤルヴィ快心の大満足な演奏で、聴衆も、ふ~、と大満足。
ナチュラルなブラボーがそのことをよく証明しておりました。
ありがとうございました。
おわり


1621- シュトラウス、祝典前奏曲、紀元2600年祝典曲、ヨセフの伝説、ネーメ・ヤルヴィ、N響2014.4.23

2014-04-24 01:53:57 | インポート

2014.4.23
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2013-2014シーズン
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2014年4月23日(水)7:00pm サントリー
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オール・リヒャルト・シュトラウス・プログラム
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祝典前奏曲 11′
紀元2600年祝典曲 15′
ヨセフの伝説 57′
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オルガン、小林英之
ネーメ・ヤルヴィ 指揮 NHK交響楽団
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久しぶりに見るヤルヴィですけれど、プログラムがシュトラウスのあまり演奏されない曲ばかり。
前半2曲は音がでかいだけの駄作ではないのか。N響も気張った演奏でギクシャクしている。
祝典前奏曲はのっけからオルガンの派手な響き。空騒ぎとでもいうのでしょうか。
P席後列の通路のところにバンダが並びました。演奏後、ヤルヴィがスタンディング指示をだしていましたが、そもそも立っているので背伸びしていたバンダさんもおりましたね。
2曲目の祝典曲も併せ、今日のN響は収録マイクの掃除を兼ねた演奏会ということかしら。
ヤルヴィも気持ちよさそうなんですね。
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後半のヨセフの伝説、これはCDなどでもたぶん聴いたことが無くて、とにかく初めて。
前半2曲の混迷曲の尾をひいた伝説ではありましたが、弾まない、流れない、は徐々に解決していきました。
オルガン日和な3曲。よくわからず、翌日リトライ!
おわり


1620- シェーンベルク、弦楽のためのワルツ、リスト、ピアノ協1、デミジェンコ、マーラー4番、エイ

2014-04-18 00:52:03 | インポート

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2013-2014シーズン
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2014年4月17日(木)7:00pm サントリー
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シェーンベルク 弦楽のためのワルツ  14′
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リスト ピアノ協奏曲第1番  15′
   ピアノ、ニコライ・デミジェンコ
(encore) メトネル おとぎ話  4′
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マーラー 交響曲第4番  16′10′19′9′
  ソプラノ、ローラ・エイキン
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シルヴァン・カンブルラン 指揮
読売日本交響楽団
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カンブルランは今回は同一プログラム2回だけという短い滞在だが、シーズンの振る回数が少ない名ばかり音楽監督が多い中、彼は結構まめに顔を出しているほうだと思う。そして毎度のことながらプログラムが良い。コンサートではレアなシェーンベルクの小品、そしてソリストが別曲に二人という演目。これだけ見ても素晴らしいですね、聴く前から。
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冒頭のシェーンベルクの弦楽のためのワルツ。初期の作品で、ショートピース11曲の束、うち未完の一曲を除く10曲の演奏。
わかりやすく魅惑的な曲と演奏。カンブルランが自ら楽しんでもいいような気もするが、彼は飽くまでも聴衆にこの音楽を聴かせようとするスタンス。自分が楽しむのではなく、聴衆が楽しみ理解してくれればと、その姿勢が好ましいし、現代音楽のオーソリティにとってそのようなアクティヴなモチベーションというのをどのような音楽においても常に心がけているのだろう。前向きで誠実な指揮者だと思う。
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2曲目のリストの協奏曲は、オーケストラが非常に引き締まっている。妙に埃っぽくなったりするリストの管弦楽だが、ここは協奏曲とはいえ主役のように動き回らせ、練習回数のきいた引締め度。ピアノが出てくる前から気持ちが良い。そのピアノは見た目の風体とは少し異なり、思いのほかソフトタッチ。オーケストラが引き締めてピアノが歌う。ドライでウェットなハイブリッド感の耳触りがいい。
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二人目のソリストはローラ・エイキン、なんとも豪華な一夜ではありますね。
カンブルランのマーラーは、日本人の指揮者でたまにいる無意味で作為的なフレーズ変態延ばし演奏解釈とは、当然のことながらまるで異なる。
テンポ感はオーソドックスなもの、個別のソロ旋律やアンサンブルのハーモニーをくっきりと際立たせたもので、クリアで明快。それぞれ分解されたように聴こえてくるフレーズは四方八方を向くことなく、マーラーの音楽という小宇宙の空間の内面を撫でていく。ドライ、ウェットという言葉の範疇とは別のもの、スペースステーションの骨組みを遠くから見るような感じ。作曲から一世紀以上経った曲が、現代的な表現で見事に蘇生された演奏と言えよう。
第2楽章の一見グロテスクな音楽が小舟のワルツに変わるところで、冒頭のシェーンベルクのワルツと繋がった。これまた見事な大団円の表現と言えよう。最後で完結する必要もない、いたるところで思い起こしや気づきをさせてくれるカンブルランのプログラム・ビルディングの妙でしょう。
終楽章はその発想が、シェーンベルクの弦楽四重奏曲第2番へのつながりを感じさせる、これは聴きながら感じるというものではなくそのような歴史的な作品ではあるのですが、やはり気づきをさせてくれる。今でも十分に斬新な発想です。
ローラはこの曲に馴染んでいく歌い口で自然。シェーンベルクを歌ったら、また別の面が出てくるような気がしました。
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プログラム、ソリスト、指揮者、オーケストラ、一体となった、しっとりしなやか芯のある、いい一夜でした。ありがとうございました。
おわり


1619- キリストの昇天、バービ・ヤール、エギルス・シリンス、アンドリス・ポーガ、新日フィル2014.4.13

2014-04-13 17:27:15 | インポート

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2013-2014シーズン
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2014年4月13日(日)2:00pm サントリー
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メシアン キリストの昇天 5′5′6′5′
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ショスタコーヴィッチ 交響曲第13番 バービ・ヤール
   バス、エギルス・シリンス
   男声合唱、栗友会合唱団
           16′8′12′12′13′
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アンドリス・ポーガ 指揮
新日本フィルハーモニー交響楽団
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お初で観る指揮者です。見た目、大きくてゴツゴツしている。
何かに特に強いインパクトがあるといった感じではありませんでしたが、なるほどこういうとらえかたもあるのか、そういった気づきをさせてくれるような面がある。充実の演奏会だったと思います。
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プログラム前半のキリストの昇天は、全楽器の中でもブラスは気を緩めたら絶対ダメな曲。弦は居眠りしたくなるところもありますが、しっかりとブラスの響きをとらえたいものです。
メシアン独特の澱んでいながら透明、青い沈殿物と清らかな流れ、そして光の放射、最初から魅了されるいいバランスの響き。やつすことなくしっかり譜を伸ばし切るのでなんだかウェットさも加味された柔らかな光と影。
プログラムにある予想タイミングはデューレーションとしてなら間違ってなくも無い。曲全体で35分かかればいいなぁ、と欲張りな気持ちになりました。メシアン初期の傑作。
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後半は大作バービ・ヤール。少し前にコボス&都響の演奏がありましたね(2013.11.28)、あれも素晴らしい演奏でした。
この日の新日フィルも濃い演奏で。自席がオーケストラに近いので全部見渡すことができないのですが、かなりの大編成で迫力あるサウンド。男声合唱の人数も相当な規模のよう。バス独唱はこの前(2014.4.5)のラインの黄金でヴォータンを歌ったエギルス・シリンス、非常に明瞭な歌。ポーガはじめ、割と明るく乗っていけるような感じのバービ・ヤール。妙な話かもしれないけれども。
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この日の公演では字幕スーパー無し、ブックレットの対訳もなく日本語のみ。ただ、詳細な訳注があり、本来の意味合いや誤りを訂正しつつ掲載。これは結構ためになった。理解が一段深まった感じです。
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第1楽章、バービ・ヤール
ナチス・ドイツによるユダヤ人虐殺の地、今の今現在、混乱のウクライナ。その国にある地名。暗い歴史の地。それぞれの時代にナツィだけでなくロシア人たちもユダヤ人を迫害したじゃないかと、虐殺・迫害に対する反体制的なモチーフがベースとなっているのだが、音楽が妙に明るい。明るいというより分厚く動き回る。何度か聴くたびに書いているのだが、ほぼムソルグスキー状態の音楽ではないだろうか。ショスタコーヴィッチの姿は見えこそすれムソルグスキーワールドの響きの陰にある。そういう意味では時代を遡ってしまった音楽のように聴こえる。分厚い響きの快活さなのだが、日本おける曲の紹介のされ方が副題ストーリーに引きずられすぎなのではないかといつも思う。思うほど暗い音楽にはなっていない。ボリスの旅籠屋シーンさえ思い浮かべるのだが。
だから、
第2楽章、ユーモア
にも、全く違和感なく入っていける。第1楽章に増してさらに動き回る音楽。ようやくここでショスタコーヴィッチの音楽がひらけてくる。
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ここでちょっと、
この交響曲の副題のバービ・ヤールというの、第1楽章についた副題を言っているのであって、全楽章をバービ・ヤール的なナチスによる虐待のストーリーとして聴いてしまうと自分で自分を印象操作してしまいかねない。一方、反体制的な内容という意味合いではこのシンフォニー全体を貫く通奏低音としては正解だと思うので、そのような串刺しで聴くのがいいかと思うのです。
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ここまでの2楽章、とにかくよく動き弾む音楽で、これまで生で聴いた中でこんなにスッキリ明るいのも珍しい。ムソルグスキーとユーモアの勝利か。
それにしてもオーケストラのサウンドと男声合唱がズシンとくる。独唱は席が近いせいもあってクリアだなぁ、きれいな清唱です。シリンスはそうとうに力がこもっており、説得力がある。オペラ風な歌唱はしておらずそれでいて気持ちの込めかたが、あたりまえの歌詞連動なのだろうが、圧巻。
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続く第3,4,5楽章は切れ目が無いが、一見ばらばらの副題のイメージなので明らかにムードが違ってくるのですぐにわかる。第4楽章の恐怖というのはそれほどでもない恐怖のようだが、音楽はチューバを織り交ぜた非常に深刻なもの。
第3楽章、商店で
第4楽章、恐怖
第5楽章、出世
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最後の出世もまた面白い内容、最後の最後でショスタコーヴィッチ最後のシンフォニーの一番最後の最後、その響きがかすかに聴こえながら終わる。
この連続した3,4,5楽章の緊張感はまことに素晴らしく、ポーガの棒がさえていたと思います。オーケストラ、男声合唱、バス独唱、一体化した演奏の運びは、ショスタコーヴィッチの何が本意だったのか、あらためて考えさせてくれるような演奏でした。屈折の思いへの気づき、気づきはこちらの話ではあるのですが、考えさせられる内容だったと思います。ありがとうございました。
おわり


1618- ブルックナー5番、マレク・ヤノフスキ、N響2014.4.12

2014-04-12 21:50:52 | インポート

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2013-2014シーズン
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2014年4月12日(土)6:00pm NHKホール
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ブルックナー 交響曲第5番(ノヴァーク版)
       19′17′12′22′
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マレク・ヤノフスキ 指揮 NHK交響楽団
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ヤノフスキの棒は、この前(2014.4.5)、東京春音楽祭でコンサートスタイルの「ラインの黄金」を同じN響で聴いた。
一週間後のこの日はブルックナーの5番ということでしたが、ラインの黄金の延長戦みたいな感じでした。
うねりのない、いたってオーソドックスなもので、ゴツゴツ感も滑らかさもない平板な演奏で全体的に小振り。一言で言うと呼吸が無いということになるかと思います。
プレイヤーとうまくインターフェースが取れていないのかギスギスしていてやりにくそう。彼らの普段の演奏スタイルとかなり違うのかもしれない。(音の出すタイミングといった呼吸関連が)
ただ、ラインの黄金をそれなりに演奏しているので、ワーグナーは合うけどブルックナーは今一つというだけなのかもしれない。もしそうだとするとブルックナーに期待するのはどうかという話になる、
N響連中のコンディションもよくなさそう。毎度のミスみたいなものもあるが、それはそれとしてもノリがない。いいとは言えない演奏でした。
あと、音が引っ込み思案風な趣だったのは、ホールの座席、最前列一列がいつもより前にとってつけたように並んでいて、その分だけステージが引っ込んだと思われます。いつも通りグイと前にセットアップされればもっといい鳴りだったはずです。最近は昔と違ってステージを前方に出しているのに、この日は椅子一列分とその後ろの横通路スペース分(奇妙なセッティング)だけステージが奥まってしまった、誰のどのような意思によるものなのかわかりませんが、失敗ですね。
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全体的に音量が不足気味でブルックナーの幽玄の響きを楽しめない。コントラバスは正三角形の底辺になることを嫌ったような音で、音量が足りなく乾いている。なんでこうなるのか。
第1楽章ソナタのゆっくり目の第2主題と息つく間もないせかせかした第3主題のぎこちない連関は、自分の持っているブルックナーのイメージとはだいぶ異なり、別の力学なんだろうとは思ったが、その割にはブルックナー力量指揮者という噂が飛んできているわけでもなく、前提を取り払って聴く分にはいいが答えは同じだ。
あまり書いてもしょうがないので、今回は不発だったということで。
おわり


1617- ヴィラ=ロボス、モモプリコシ、ジャン・ルイ・ストイアマン、ラフマニノフ、交響曲第1番、ロ

2014-04-08 23:28:39 | インポート

2013-2014シーズン聴いたコンサート観たオペラはこちらから
2013-2014シーズン
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2014年4月8日(火)7:00pm 東京文化会館
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ストラヴィンスキー 小管弦楽のための組曲第1番 4′
ヴィラ=ロボス ピアノと管弦楽のための幻想曲モモプリコシ
        ~「ブラジルの子どもの謝肉祭」による 23′
  ピアノ、ジャン・ルイ・ストアマン
(encore)
ヴィラ=ロボス ブラジル風バッハ第4番よりコラール 3′
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ラフマニノフ 交響曲第1番 13′8′9′11′
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ロベルト・ミンチュク 指揮 東京都交響楽団
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また、3曲仕立て。ストラヴィンスキーは短い曲。
ヴィラ=ロボスのモモプリコシは全く知らない曲、ピアニストもお初。
ウィットに飛んでいる、奇抜さが面白い、といったところがない。ピアニストの硬くてドライな響きのもと、というか、必要以上に鍵盤の押しが強いのではないか。2メートルぐらいの至近距離で観ましたのでよくわかります。
曲のサウンド心地もあまりいいとは言えない。別の曲を聴きたかったというのが本音。
アンコールの曲も、指の押しが一様でないためか響きが都度まだら模様。
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後半はメインのラフマニノフ。
1995年に聴いたシモノフ&N響以来。荒々しく激しい曲という印象がある。
この日の都響の演奏は言うならば、高性能オケで分かるその真価、そして指揮者も。
演奏は大変に素晴らしく引き締まっており、収録して発売したら買うかもしれない。以前のN響の演奏より遥かに締まっていて気持ち良い響きの連発。
チャイコフスキー4番5番6番しか知らなかった頃に初めて聴く2番の新鮮さ、この感覚に近い。長さはこれぐらいがちょうどいいと思う。荒削りで妙に新鮮なラフマニノフでした。
一応形式を踏まえているのでシンプルな感覚で楽しめます。
指揮者は、引っ張っているというより引っ張られているのかな。まぁ、たしかに、主旋律しか振らない指揮者ではありますね。
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曲の面白さという点ではシモノフの棒のほうが迫力あるノコギリサウンドでギザギザ感を楽しめたことを思い出しました。
おわり


1616- ラインの黄金、マレク・ヤノフスキ、N響2014.4.5

2014-04-05 21:14:48 | インポート

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2014年4月5日(土)3:00pm 東京文化会館
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ワーグナー ラインの黄金 (コンサートスタイル)
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第1場   20′
場面転換   4′
第2場   37′
場面転換   3′
第3場   21′
場面転換   4′
第4場   46′
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ヴォータン、エギルス・シリンス
ドンナー、ボアズ・ダニエル
フロー、マリウス・ヴラド
ローゲ、アーノルド・ベズイエン
アルベリヒ、トマス・コニエチュニー
ミーメ、ヴォルフガング・アブリンガー=シュペルハッケ
ファーゾルト、フランク・ヴァン・ホーヴ
ファフナー、シム・インスン
フリッカ、クラウディア・マーンケ
フライア、藤谷佳奈枝
エルダ、エリーザベト・クールマン
ヴォークリンデ、小川里美
ヴェルグンデ、秋本悠希
フロースヒルデ、金子美香
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予告なしゲスト・コンサートマスター、ライナー・キュッヘル
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マレク・ヤノフスキ 指揮 
NHK交響楽団+鉄床多数(20個ぐらい)
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10周年を迎えた東京春音楽祭、今年から4年がかりでリングを公演する。舞台はなくコンサートスタイル。振るヤノフスキは持論でこのようなスタイルの長所を述べているが、個人的には舞台がなければ今一つ燃えない。パルジファルとかになるとイメージの世界が補完的にあれば相応に楽しめますが、この日の公演のようにバックにあまりぱっとしないイメージを映すだけでは、いやはやなんとも。
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出演者は乙女三人衆とフライアが日本人キャスト。彼女たち4人以外は外国勢。日本の男連中が歌えないわけでもないと思いますが、指揮者の意向があるのですかね。そこらへんはわかりません。
わき役をかためるケースの日本人の歌唱は、ほんと、いつもだいたい素晴らしい。この日の乙女もよく声も出ていてきれいなハーモニーから始まりました。それに比して、この第1場のアルベリヒはあまりぱっとしません。声が出る前段階の状態。
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第2場のファーゾルトは代役のホーヴ、きゃしゃな紳士という感じですが、なぜか髪が見た目、左サイド方向に飛んでいる。(演出か寝ぐせか)
声はしっかり出ていたと思いますが、この兄弟のポジションがオーケストラの右奥。オンステージのオーケストラなので声に被る。ワーグナーのオタマジャクシは入念ではありますが。馬蹄形な場合、このようなスタイルの公演だと上の席に陣取ったほうが声が通っていくのかもしれませんね。
ヴォータンは舞台映え必須ですが、今回はあまり関係ありません。見た目があっての威厳の声、それでいてちょっとヤワな感じ、なかなかうまく雰囲気が出ません。
半神半人間の火の神が出てきたところでようやく締まりました。性格俳優風に迫るならこちらがアルベリヒでもいいかもしれません。この日のモードは生真面目アルベリヒ、狡猾ローゲの構図ですね。
この第2場ではこのローゲの見事な歌唱が光りました。存在感のあるベズイエンでした。一方、引きずられるヴォータンといった趣が強い。
フライアが巨人兄弟に連れ去られ、ローゲとヴォータンはニーベルハイムに黄金を奪いに行く。
一斉に鉄床が鳴ります。オーケストラ最後尾、左から右まで約20人が一列に並んで叩く。見た目は圧巻、音はそれほどでもない。ヤノフスキの舞台的な主張はここに焦点を絞った感があります。場面転換の意味合いとしてというよりも、長い2場の空気感を変えるような感じ、とはいっても地下の暗い世界に降りていくわけですけれども。
ちょっと話がそれますが、キース・ウォーナーのトーキョー・リングでは、この第2場のフライア・リンゴの場面、神さんたちが若返りのリンゴがなくなって力なくスローモーションになっていく。あの舞台は印象的でしたね。肥大化された細部の演出がずっと頭の中に残っている。これはこれで全体を思い出すときの良い手掛かりにはなります。
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第3場は面白いほど短かくて、内容的にはあまり面白くなかった。
スケルツォ、トリオ的な場だと理解すればこんな感じでいいのかもしれません。それに予定調和的にアルベリヒは捕まってしまうのですから。他場面でのヤノフスキの締め具合は見事ですが、ここはちょっと締め上げすぎかな。整理整頓されすぎているのかも。
わき役的傍観者ヴォータンのもと、次第に調子を上げてきたアルベリヒと最初から調子のよかったローゲの絡み、ちょっと速すぎるヤノフスキの棒のもとコンサートスタイルにおけるコンディションはやはりいいものだと歌い手たちもふと思っても不思議はありません。
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そして見た目は壮大な鉄床音とともに第2場と同じところに戻る第4場。ようやく音楽が少し緩くなる。いい雰囲気だ。
カエルのアルベリヒは財宝、頭巾、指環を、早い話ヴォータンに身ぐるみはがされて解放。
そこにフライアを連れた巨人の兄弟が、その財宝、頭巾、指環を身ぐるみはがしフライアを解放。ただし、指環を奪われる前に、カミタソ序幕で語り部となるノルンたちの母エルダが、東京文化会館右2階席に突然現れ、指環のアドバイスをする。アルベリヒが身ぐるみはがされたとき彼は指環に呪いをかけたので、それを持っているとろくなことにならない、と。
エルダを歌ったリズ・クールマン、太く安定感あり威厳のエルダ。ぴったりとストーリーにはまりました。良かったと思います。2階席からの歌唱、いいサウンドでした。
ここらあたりで先々のカミタソまで話は少しつながったわけですけれど、カミタソは2017年のことになるわけですね。それはそれとして、
指環を手に入れた巨人は兄弟喧嘩をはじめ、さっそく代役ファーゾルトはお陀仏。巨人の喧嘩は舞台だと面白いもので、そのあとの、このうっとうしい空気を変えよう、というあたりの雰囲気は良く出るのですが、この日は右奥の巨人兄弟が退散するのみ。
ところで、この空気変えたい雰囲気、うっとうしいこれまでの音楽、ホント、うっとうしかったと思ったのはもしかして作曲者ワーグナー自身ではなかったのかと思うぐらい見事に音楽で空気を変えてしまいます。凄い音楽です。
ドンナーの雷起こしハンマー、フローの虹、そして神々の入城にいたるもう一つの場面転換とでもいいたくなる生理的にも気持ちの良い音楽がワーグナーファンのアドレナリンを沸騰させ、そのカタルシスな世界にはまっていくところで音楽は終わる。ヤノフスキの棒はどろどろしたところが無く、文字通り浄化の世界を聴かせて音楽は終わる。
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ヤノフスキの棒は理知的なコントロールが基本だが、第1拍目でバーンとフォルテシモで叩きつける盛り上げの箇所の前のアウフタクトは過剰なぐらいタメを作る。この叩きつけのあとの音の移動に伸縮が見られる(オーケストラが合わない)、それはそれでいいかと思います。音の解放、このような箇所だけ聴けば古風と言えるかもしれない。
しなやかさもあるがそんなに重視していない、リズミックに音の粒立ちよくテンポ良く進む。この2時間越えのワルツ、聴くほうも大変なのでリズミカルな進行のラインゴールドも悪くはない。オーケストラの響きがあまり重く感じなかったのはそのせいもあるかもしれない。
プライドの高そうなヤノフスキの演後の立振舞いを見ていると、びっくり参加だったのかコンマスのライナー・キュッヒルはじめ歌い手たちも少し戸惑っているところもありました。
N響はこのような指揮者に従い、おりこうさんと褒めてもらうとますます気持ち良くなっていい演奏をしたものだなぁと、昔のDNAが復元したのかもしれないと脳裏をかすめた公演でもありました。
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4月12,13日はN響定期でブルックナーの5番を同じ組み合わせでやるわけですが、アウフタクトのタメ造りのブル5が成功するのかどうか、それとも構造に目を光らせた異次元の解釈となるのか聴きものではあります。
おわり


1615- ウェーベルン、パッサカリア、バルトーク、VnCon1、エステル・ハフナー、ブラームス1番

2014-04-03 23:25:45 | インポート

2013-2014シーズン聴いたコンサート観たオペラはこちらから
2013-2014シーズン
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2014年4月3日(木)7:00pm サントリー
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ウェーベルン パッサカリア 11′
バルトーク ヴァイオリン協奏曲第1番 8′+12′
 ヴァイオリン、エステル・ハフナー
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ブラームス 交響曲第1番 12′8′4′18′
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ロベルト・ミンチュク 指揮 東京都交響楽団
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この指揮者はお初です。
無理やりの3曲構成のようにも見えますけれどそれなりに楽しめます。
ウェーベルンはウェットで滑らかな曲、それをことさら強調するわけではなく自然と円弧がつくあたりはオーケストラの技量なのかもしれない。
2曲目のバルトーク、前に聴いた2番(2013.12.192013.12.20)よりはわかるが、どうも水中から地面に出てきたナマズが乾いてしまったようなサウンドは苦手。かすかに弦チェレがエコーするような気もするが管弦楽曲の魅力の前にヴァイオリンの協奏曲1,2番ともに心やすまらない。
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後半のブラ1は、オケ、指揮者ともにレパートリーでしょうから、しり上がりに良く鳴ってきましたが、どうも今一つこなれていない。また、
ティンパニの音が引き締まっておらず、かつ、他の楽器と同じタイミング、もしくは少し遅れたりして、水先案内になっていない。この曲はティンパニがもっと積極的に果敢に攻めてほしいと思います。
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指揮者は突き詰めるとユーティリティー・コンダクターの雰囲気です。若い時はニューヨーク・フィルの副指揮者をつとめたことも。その前は天才ホルニストだったそうです。
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1984.4.4、11:00am エイヴリ・フィッシャー・ホール
ニューヨーク・フィルハーモニック
ヤング・ピープルズ・コンサート
フレンチ・ホルン、ロベルトミンチュク
モーツァルト ホルン協奏曲第2番 第2,3楽章
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おわり