河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

PC版に一覧等リンクあり。
OCNから2014/12引越。タイトルや本文が途中で切れているものがあります。

2523- モートン・グールド 交響曲第3番 オリジナル・ヴァージョン 世界初 デイヴィッド・アラン・ミラー、オルバニー響 

2018-03-23 21:39:45 | 音源



 


(2006年12月ブログ0137-0138-0139の再掲(一つにまとめ編集))

モートン・グールドは一般に、編曲や日本風に言うところの軽音楽、などにその器用さを発揮した、ということぐらいしか知られていない。そんななか、こんなCDが出た。SACDハイブリッド盤である。

モートン・グールド 作曲 交響曲第3番
デイヴィッド・アラン・ミラー 指揮 オルバニー交響楽団

世界初録音 ALBANY RECORDS TROY515

グールドは数多の作曲をしている。交響曲は4つある。
この第3番、実にすばらしい曲。滑るような弦、迫力ある打楽器。薄いブルーが透明に淀んだようで、物理的機械的なサウンドのなかに漂うグールドの音楽観。派手なパーカッション、イルミネーション。
4楽章40分におよぶ本格的なサウンドの交響曲である。詳細は後日に譲るとして、まずは是非このサウンドを聴いてほしい。幾何学模様のオーケストラ・サウンドや音楽表現が何とも言えず、ヨーロッパを遠いものにしているが、グールドの音楽ヒストリーをトレースすると必然性がある。
彼は自分の身を置いた音楽環境をフルに活用した音楽を構築した。その現場にいなければ作ることができないようなサウンド。魅力的である。
オーケストラの切れ味は一流どころの次、線が細いなりにアメリカ音楽への日常的な取り組みを感じさせる。指揮も劇的なものより響きそのものを意識した譜の読みであるようだ。
このSACD、ホール感はそこそこで、音場が安定している。分解度は格別に高いわけではないけれどもヴォリュームを上げて聴くと前面に音が拡がる。
カップリングされているハリスも魅力的。ロイさんについては、またいつかふれることができると思う。


モートン・グールド
モートン・グールドは、私がスコアを見ることをしなくても新作を受け入れられる唯一の作曲家です。私は、その最初の一小節を見る前から良い作品であることを知っている。
- ディミトリ・ミトロプーロス -

モートン・グールドは1913年、ニューヨーク・クイーンズで生まれた。彼はピアノの天才児であり、はやくから作曲を始めていた。16才までに、自分の作風「超現代的」を宣言した。
世界大恐慌の間、ラジオ・シティ・ミュージック・ホールのピットの音楽家としてスタートした悲しい目をした一匹狼はNBC、WOR、CBSのための膨大な作業において、ラジオを通して指揮、作曲、アレンジで活躍した。それはバレエ、ブロードウェイ、コンサート・ホール、映画、果てはテレビにまで挑戦するといったもの。
彼は疲れを知らなかった。彼はどこにでも現れた。そして、ジョージ・ガーシュウィンのように、通りで人が実際に笛を吹くことができる身近な音楽を書いた。(ガーシュウィンの説明をした方がよいかもしれない。彼はインテリ仲間や評論家に冷遇されていた。許容することが懇願されていたけれども、決して受け入れられたわけではなかった。)
自分自身の曲や他の人の曲の多彩な音楽翻訳家であるグールドは、数えきれないほどのライブ・コンサートやレコーディング・セッションで国際的なメジャー・オーケストラを指揮した。グラミー賞への多数のノミネートを受け、1966年にはシカゴ交響楽団を指揮したチャールズ・アイヴスの交響曲第1番のRCAアルバムでグラミー賞をとった。
1986年に演奏権利団体ASCAPの会長になり、オリジナルな印象的な作品をプロデュースした。それらはオーケストラル・ワークと呼ばれるユニークなものにおよんだ。アメリカン・コンチェルテッテ、アメリカン・シンフォネッテ、ラテン・アメリカン・シンフォネッテ、交響曲や協奏曲や合唱曲へのショーピース、ブロードウェイのミュージカル「ビリオン・ダラー・ベイビー」から豪華な「ストリング・ミュージック」まで。この「ストリング・ミュージック」では、グールドも驚く、1995年ピューリッツア賞を獲得した。
翌年、心臓発作で亡くなった。

 

交響曲第3番
モートン・グールドは4つの交響曲を作った。第1番(Victory Ode)は1943年、第2番(Symphony on Marching Tune)は1944年、両方とも第二次世界大戦に触発されたもの。
1952年からの第4番は最後の交響曲で、やはり戦争のことを扱っている。このコンサート・バンドのためのWest Point Symphonyは有名な軍隊学校により委嘱されたものである。
第3交響曲は異なる。ダラス交響楽団のために作曲されたこの曲は1946年後半から1947年1月にかけて書かれた。それは彼の最初の子供が生まれる頃であった。第3交響曲は彼の最も個人的な交響的な言葉である。この曲は彼が熱望した、野望的、シリアスな交響的作品である。第3番で、グールドは全てのアメリカの交響曲作曲家が熱望する核に到達した。彼は’Great American Symphony’を書いた。

グールドはこの作品を両親にささげた。そして両親にあて「私は今まであなたがたに何も捧げたことがなかった。あなた方は私の人生で最も大切な人。それゆえ、私の新作第3交響曲を捧げるにふさわしいと考えている。この第3番はいままでの作品のなかで最良の作品と思っている。」

第1楽章はトランペットによる苦悩の3連符、楽章を貫くリズミックな装飾音にびっくりするような突き刺す5連符のモチーフで始まる。容赦ない異常なマーチで締めくくる前に短い激情が2回にわたってあり、その後おさまる。(2/4拍子と3/8拍子を交互に使い変則拍子を楽しんでいる。)

第1楽章の容赦ない激しさにコントラストをなすように、第2楽章はかなり内省的で、くつろいでぼやけた感じのジャズ風な夢想である。それにもかかわらず緊張感的なセンスは決してなくなることはなく、ピッチカートのベースラインの八分音符の鼓動や、ヴァイオリンによる積極的なカデンツァのようなパッセージ、そして繊細な第1ヴァイオリンのハーモニーにより、むしろ暗示的でさえある。

そして嵐がブレークする。‘嘲笑的ユーモア’で演奏されるべきことを意味している華麗なジャズ・スケルツオ。
最初のニューヨーク公演における評論家でさえ、この楽章は何か特別であると感じた。
ニューヨーク・タイムズのハワード・トーブマンは、この楽章の‘抑えがたい勢い’について書いている。グールド氏は自分の作曲技法を通して、100人の高度に訓練された演奏者の技巧を使って、まるでジャズの手法を作っているようである。彼ら演奏者は、指揮者たちは仲間からこのようなことは聞いたことも学んだこともないと思っている。熱く演奏できるその仲間は、グールド氏の交響曲の第3楽章を聴くために昨晩ここにいるべきであった。グールドは二つのかみ合うフレーズ -駆け上がる、下る-を並べ絡ませる。それはこの曲を渦巻くようにし続け、ますます勢いづかせ、トルネードがその中心点に触れるもの全てを吸い上げるようにしている。嵐は木管と弦の柔らかな音でだんだん弱まり、スネアドラムの軽い音で締めくくられ、ベースから引き離され叩かれる。この輝かしい効果は、ヨーロッパ人が真似することができたかどうか疑うところである。奇妙な行進曲風トリオのあと、オープニングの短い再現が、ケトルドラムによるフォルテッシモの爆発によってクライマックスに導く。ついていくにはものすごくタフな楽章がドアを閉めるように熱狂的なコーダで閉じる。

ニューヨーク・フィルハーモニックの指揮者であるディミトリ・ミトロプーロスとグールドの最も熱心な支持者たちは、快活なフィナーレをスローで深刻なものに置き換えるようグールドに迫った、というのがおそらくこの楽章の純粋な輝かしさの理由であった。フィルハーモニックの契約の誘惑により、グールドは第4楽章を全て破棄し、新鮮な‘パッサカリアとフーガ’に置き換えた。ミトロプーロスは予定通り、この改訂版第3交響曲を1948年10月28日に公のものとした。評はおおむね好評であったが、作品の全体のまとまりの印象が薄い。新たなエンディングは誇れるものではあるけれども、グールド自身でさえこう認めている。‘この楽章は一部の聴衆からはポジティブな反応を受けているとはいえない。’

デイヴィット・アラン・ミラー(このSACDの指揮者)はこのレコーディングの準備を始めたとき、この曲の初期バージョンのことについて何も知らなかった。彼は、フィナーレの日付が、スコアにある第1,2,3楽章の日付よりかなり後であり、また別の用紙に書かれていたことを発見しそれらのことに興味をいだいた。フィナーレの音楽は、第1,2,3楽章の性格、イディオムと奇妙に調和していないようにも見える。彼はグールドの伝記を書いているピーター・グードマンに助言を求めた。グードマンはフィナーレの初期バージョンに言及し、シャーマー音楽出版社のライブラリアンにコンタクトをとった。シャーマーは、50数年の間触れられていなかった棚高くにあるオリジナル曲を発見した。二つのフィナーレを比較して、ミラー氏はあとのものよりも最初のバージョンのほうが作品の自然性においてより真実性があり、結果的に極めて成功していると感じた。このレコーディングは‘オリジナル’フィナーレであり、それゆえこの作品をもとの形に復元したものである。

(以上、ブックレットの河童意訳含む)

おわり






 
 


1342- ブルックナー交響曲全集 マゼール バイエルン放送交響楽団

2012-01-28 10:36:33 | 音源



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2010年の11月24日(水)に6,552円で購入したマゼールのブルックナー全集を聴き終えました。箱もの11枚です。
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ブルックナー交響曲 10曲。
ロリン・マゼール指揮バイエルン放送交響楽団
BRKLASSIK 900711  (11CDs)

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第1番:1865-1868リンツ稿1877改訂ノヴァーク版54′17″
第0番:1869ノヴァーク版48′48″
第2番:1877稿ノヴァーク版69′34
第3番:1889第3稿ノヴァーク版58′34″
第4番:1878-1880第2稿ノヴァーク版73′34″
第5番:1875-1878ノヴァーク版79′56″
第6番:1879-1881ノヴァーク版61′28″
第7番:1881-1883ノヴァーク版66′39″
第8番:1887-1890第2稿ノヴァーク版86′05″
第9番:1887-1896未完成ノヴァーク版70′40″
収録:1999年1月23日~3月20日の間に一気にライブ収録。
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最初の3曲で勝負あり。ユニークすぎてスケールでかすぎてマゼール節全開でのけぞります。特に第2番の圧倒的な立体感と、初期の確固とした構造物の大きさに吹き飛ばされます。生半可じゃない解釈だなぁ。
第2番
Ⅰ:21′59″
Ⅱ:17′32″
Ⅲ:7′31″
Ⅳ:22′31″
まず、異常な速度。特にⅠとⅣはこれより遅い演奏はないだろう。Ⅱでこれよりおそいのは河童蔵の音源ではシャイーとミスターS!
とにかく異常にスローなのだが、全く弛緩しない。オーケストラの能力の高さも圧倒的。



第1番。マゼールの解釈は相変わらずユニーク。最後のトランペットなんて、ほかの指揮者なら3回ぐらい終わっている感じ。
第0番。第1番のあとは第0番です。このボックスでもその並びです。なんともダイナミックな演奏で飽きさせません。
第2番。これぞ圧巻で圧倒的な70分、第1楽章第2主題あたりで既にマゼールの刻印。2番が最高かもしれない。第2楽章のスローさと息をのむ美しさ。でかい曲、フィナーレのコーダは第1楽章第1主題の再起のあと、第1番とは逆に早めのテンポで決める。全く曲の理解が深いとしか言いようがない。第1、0、2番の演奏の充実度、それから面白さは第3番を凌ぐ。もうこうなると自信に裏打ちされた孤高の芸術。
第3番。第2楽章の盛り上がりをロマンティックで古色蒼然というのは簡単だろうが、マゼールの場合、表現の多様性のうちの一つのように聴こえる。山のもっていきかた。起伏のつくり方、大見栄はどこではるか、全部わかりきっている。すごい。
第4番。ひねる、ひねる、彼にとっては普通に。
第5番。第3楽章は結構スロー。ティンパニがことごとく決まっている。最後に待っていた爆な仕掛け。コーダのもたれかたは尋常ではない。
第6番。やっぱり遊んでいる。響きの饗宴。
第7番。冒頭から精神の安定を感じる。第1主題と第2主題の明確な違いが、極端すぎる。高性能オケはユニゾンが下品にならない。第2楽章も第2主題が速い。ドライなサウンドが実力を露わにさせる。独特の音価でまことに勇壮におわる。
第8番。音楽が静止している第1楽章。わりとまとも、横幅があり巨大な演奏であることは言を待たない。
第9番。Ⅰ:31:17、Ⅱ:10:59、Ⅲ:28:23。うって変わって第2主題のスローさが耳をひく。際どい演奏だぞ。
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とにかく、全部マゼール節全開。面白すぎて一気にあっというまに聴いてしまったが、買ってから聴き始めるまでに1年2か月かかってしまった。2010年にCDを買いすぎたのでその影響だな。
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録音について。ボックスには書いてありませんが、中の一枚ずつに
BR-KLASSIK ARCHIVE
と、あります。つまりバイエルン放送のアーカイブということだと思います。
サウンドはきれいで横幅のあるものですが、いわゆる放送録音的であり、分解されて出てくる音ではなくまとまりを感じさせる。ボリュームを少し上げ気味にすれば解像度が増すような気がする。
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あっというまの10曲でしたが、すぐにもう一度聴くとしたらどれか、という質問を受けたら間違いなく第2番ですね。
おわり

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1340- TEAC X-2000R 110V対応 オープン・デッキ

2012-01-23 00:31:07 | 音源

この前、2回にわたりオープン・リール・テープ発見のブログを掲載しました。
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1334- オープン・リール・テープ
1338- オープン・リール・テープ 追加発見!!
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今日はオープン・デッキ本体をアップしました。
ちょっと別けあってデッキを動かさないといけないので、そのついでに写真を撮ってみました。
TEAC X-2000Rの雄姿です。
本体の上に載っているのは、110ボルトの昇圧機です。
このマシンはアメリカに住んでいた時に買ったもので日本仕様ではありません。電圧が異なります。
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このマシンは国内でオーバーホールしてますので十分に動きます。
たぶんそう遠くない時期、再使用する予定です。
なにしろ、お宝音源だくさんありますので。それと、また追加発見したのでそのうちアップしますね
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1338- オープン・リール・テープ 追加発見!!

2012-01-19 21:25:04 | 音源

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このまえオープン・リール・テープが150本ぐらいあるけどどうしようかという話を書きました。
1334- オープン・リール・テープ
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それで終わりかなと思っていたのですが、別のところからまた出てきました。
今回の新発見(笑)!!は12本だけですが、写真の通りレアレアです。
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この調子だと未発見がまだかなりありそう。思い当たるふしもあるし。
近いうちに、TEAC X2000Rをなんとか再始動させますね。
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1334- オープン・リール・テープ

2012-01-10 01:10:21 | 音源

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オープン・リール・テープが10年前に箱詰めしたものとか、さらしたまんまのものとか、音源がはいっているものが150~160本ぐらいあると思う。
早く何かにコピーしないといけないのだが、オペラ物が多く、CDRへの焼き付けは収録時間が短くてネック。
思うに市販されているCD、SACDともに高音質へ改善されて再発を繰り返しているが、収録時間の改善は全く見られない。リング・サイクルの無残なブツギリ状態は昔とほとんど変わっていない。ラインゴールドなら2~3枚。ワルキューレ、ジークフリート、カミタソなどは、無神経に前詰めブツギリされたひどいものがいまだに横行している。
DATはよかった。ラインゴールドが一枚に収録出来て、ほかの三つのオペラについても、DAT一本に2幕分収録できたし。でも、DATはシーラカンス状態。
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ここはとりあえず、オープン・リール・テープの話なんだけれども、やっぱりCDRへのコピーしかないだろう。まず、ハードディスク・レコーダーに丸ごと収めて、そこから少しずつブツギリしてCDR化するしかないだろう。不便な世界になったものだ。
ハードディスク・レコーダーは持っていないのでまずこれを買わなければ話はすすまない。オープン・リール・デッキは、以前はTEAC X10Rを持っていたが手放して、同じTEACのX2000Rはオーバーホールした状態なので問題なく動く。但し120ボルト対応なので昇圧機がいる。これももっている。ちゃんと機能するかどうか。
このまえ、カセットデッキとCDレコーダーが一台にくっついているものを買った。TASCAMの型番は忘れた。カセットも1200本ぐらいあるので、このマシンでコピーする予定。
あとは、DATがこれまた1500本ぐらいあるはずで、これもどうするか問題が山積。
順番にゆっくり移し替えようと思っています。
ただならクラウド移行でもしたいけれど、1タイトル2ギガぐらいだし、、、
あまり現実的ではない、今のところ。
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1329- クルト・ザンデルリンク追悼1912.9.19-2011.9.18 マーラー10番 6連発公演 ニューヨーク・フィル

2011-12-27 00:10:00 | 音源

前日ブログの続きです。

今日のテーマについては何度かブログ掲載をしておりますので、リンクをまた、貼り付けておきます。

エンタメの街で、ニューヨーク・フィル1983-1984シーズン1月の定期公演にゲストコンダクターとして出演しマーラーの10番を6回振ったのがザンデルリンクです。振る方も聴く方も大変な出来事でした。うち2回聴きました。

おわり


1328- クルト・ザンデルリンク追悼1912.9.19-2011.9.18 ショスタコーヴィッチ交

2011-12-26 00:10:00 | 音源

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ザンデルリンクはほぼ一世紀近い年月(としつき)の天寿を本年全うした。2002年に引退しているのでポーディアムでの活躍は70年ぐらいか。
彼のことは詳しくないけれど、マーラーの10番全曲版の演奏では必ず名前が出てくるし、またショスタコーヴィッチ15番でも同じ。このフリークともいえるような執拗なプログラミング、なんだかよくわかる。ここらあたり自分とザンデルリンクの気性のようなものが妙にオーバーラップする。
これらの演奏は重くなく妙にさらさらしていて皮膚を音が滑っていくようでもある。最初から本質を理解していたのだろうとも思う。多様な演奏解釈の向かう先のような表現である。
流行りはじめのころは演奏すること自体が先端を行く行為であり、オーソリティとして、どうだ、という意気込みで振っていたと思う。そして時代は彼を追い越してしまい、それでもなお10番と15番を振り続けていたように思う。鋭い感性は変わらずとも時代が変遷すれば、それは取り残されたという奇妙な感覚の言葉で表現されてしまうのかもしれない。こんなことはザンデルリンクには無用なことではあっただろう。だからオーバーラップというのは私自身の自意識過剰以外のなにものでもない。
ザンデルリンクのショスタコーヴィッチの第15番第4楽章の演奏時間は20分前後、録音データでは昔からほとんど変わらない。しなやかさと静けさ、そしてパーカッションの謎めいたピアニシモによるシンポジオンでエンディングをむかえる。圧倒的な清らかさで終息をむかえるショスタコーヴィッチの人生のエンディング・シンポジオン。これ以上の演奏表現はないでしょう。ザンデルリンクは最初から最後までお見通し。
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【河童ライブラリー】
ショスタコーヴィッチ 交響曲第15番
クルト・ザンデルリンク 指揮
河童ライブラリーです。ほかにもあるかもしれませんが、自分でもっているものだけ書いておきます。
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1. ベルリン放送交響楽団
 ベルリン、イエス・キリスト教会
 ・ドイツ・シャルプラッテン LP ET5061
  録音1978/5/26-/6/2
 ・AVEX SACD AVCL-25286
  録音 1978/5/26,31、6/1,2
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2. BBC交響楽団
 マンチェスター
 ・Eyewitness
  録音1984
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3. シカゴ交響楽団
 オーケストラホール(おそらく)
 ・RARE MOTH 539-S
  録音1985.11
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4. ベルリン・フィルハーモニカー
 フィルハーモニーザール
 ・NHK-FM DAT-102(河童蔵通番)
  録音 1988/9/17
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5. クリーヴランド管弦楽団
 セヴェランス・ホール
 ・ERATO 2292-45815-2
  録音 1991/3/17-18
 ・ERATO SHMCD WPCS12233/4
  録音1991/3/17-18
  ****最高音質****
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6. シュトゥットガルト放送交響楽団
 ベートーヴェンザール
 ・NHK-FM DAT-1097(河童蔵通番)
  録音 1996/2/29
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7. ベルリン・フィルハーモニカー
 フィルハーモニーザール(おそらく)
 ・自主制作盤 BPH0611 
  録音 1997/6/9または1999/3/16
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8. バイエルン放送交響楽団
 場所不明
 ・RE!DISCOVER RED101
  録音 1990年代
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以上が河童蔵にあるものです。
これだけでも執拗な数だと思うのですが、コンサート・プログラムとしては当然これの何倍も演奏しているはずです。同一プログラミングの定期公演も単数カウントすると、もう、とんでもない数かと。
海賊盤が3個ありますがそれはそれとして、最高音質はエラートのSHMCDフォーマット。非常に済んだ清らかなサウンドで聴くことが出来ます。(5番の二つ目のCDです)
7番の自主制作盤も清らかな演奏ですが、自主制作盤なら録音データをきっちり載せて欲しいですね。例によってカップリングとの日付が不明確。昔からの慣習で、日付データは古い方から並べるやりかたをいまだ踏襲している。CDの収録順と録音データの順番は一致しているわけではない。画竜点睛を欠くCDです。指揮者の演奏には影響する話ではありませんけれど。
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ほかにザンデルリンクのショスタコーヴィッチの15番ご存知の方おりましたら教えてください。
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1278- コントラ・ワーグナー 湯治場朝七時さまよえるオランダ人・他 CD紹介

2011-07-21 00:29:29 | 音源

この前2011.7.19の読響定期はブル4のスケルツォが終わったところでスーパー・フライング・ブラボーがはいる想定外公演だったわけですけど、日テレ収録があったからとにかく収録されてしまおうというメモラビリティー溢れる作戦だったかもしれません。ただ、楽章間の雄叫びは編集カットされる可能性が高いので、演奏中に叫べばよかったのでは?何が目的で演奏会に来るのか、これら雄叫びマンの脳内回路を覗いてみたくなります。
それで、この日の前半一曲目。奇妙なタイトルの曲。ありましたよね。
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ヒンデミット さまよえるオランダ人、序曲
~へたくそな宮廷楽団が朝7時に湯治場で初見をした~
(下野竜也編・弦楽合奏版、世界初演)
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爆笑演出付き看板付き時計付きの公演でした。詳細は1277-を読んでください。
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それで、今日はこの曲が収録されているCDを紹介しますね。
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≪コントラ・ワーグナー≫
1. ワーグナー 夢
2. モンティ チャルダーシュ
3. ワーグナー ジークフリート牧歌
4. シャブリエ ミュンヘンの思い出
5. ヒンデミット さまよえるオランダ人(弦楽四重奏版)
6. ワーグナー 夢
7. クルシェネク セレナーデ
8. ウェーベルン 断章
ベルリン・フィル・メンバー
Col legno WWE1CD60018
2007.4.4 & 4.8 ザルツブルク・イースター2007
ザルツブルク、モーツァルテウム

全部ワーグナーの曲が下敷きになってます。もちろん夢とジークフリート牧歌は作曲家自身のもの。
それで湯治場はどちらがよかったかというと、演出付きの読響温泉の方が断然面白かった。オランダ人自体はブラスをいれた壮大な演奏の方が気分がスッキリしますが、なにしろ朝7時の湯治場での少人数による‘初見’ですからそもそも無理。
初見って最初の一回だけしかその味をかみしめることができないんですが、ワクワク感があっていいものですよね。知らないものに最初に挑むときって新鮮。
いっぺん真似してみたらどうでしょう。坊ちゃん湯あたりで。
CDのほうはベルリン・フィルのメンバーが中心になって固めてますので間違いのないところ。安心してこれら奇妙なパロディー風な音楽を楽しめます。
おわり
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1272- ブルックナー9番、ベートーヴェン レオノーレ2番、ワルター&ニューヨーク・フィル

2011-07-06 00:33:59 | 音源

 

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1946年3月17日(日)3:00pm
カーネギー・ホール
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ブルックナー 交響曲第9番(in the original version)
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ベートーヴェン 序曲、レオノーレ第2番
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ブルーノ・ワルター指揮
ニューヨーク・フィルハーモニック
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当日のプログラムの順番も上の通りです。放送時間の関係で変則なのか、ワルターのユニークなプログラム・ビルディングなのか、おそらく前者と思われます。
七、八年前に正規版のCDがでてから音の割には何度か出回っている音源。
1940年代、当時の日曜午後3時は、CBS(Columbia Broadcasting System)による生放送中継で決まり。
全米に放送されているのですが、ニューヨークなら生放送、ほかのところは州(放送中継基地)により後日の放送。ですので音源の可能性としては、後日放送用の録音音源とあとはプライベート録音ということになります。商用音源としては前者となるでしょう。
掲載してあるプログラムは、CBSによる全米放送用のプログラム(!)です。時代的に放送すること自体が貴重で、また、ひとつの教材ともなっていたようでこのような丁寧なプログラムがあるわけです。カーネギーホールのオフィシャル・プログラムは別にあります。
なお、この9番の版についてはin the original versionという微妙な表現になっておりますが、Orelオーレル教授版ということで、詳細はこのプログラムのなかに書かれておりますが割愛します。
2枚目の写真は当時つまりロジンスキー時代のメンバー表です。音楽監督がアルトゥール・ロジンスキー、客演指揮がジョージ・セル、ブルーノ・ワルター、ハワード・ハンソン、イゴール・ストラヴィンスキー、というなんだかとんでもない時代でしたね。
それでメンバーのコンマスは、ジョン・コリリアーノ。今の著名な同姓同名は息子です。ちょっとそれますが息子のCDを紹介しておきます。

ジョン・コリリアーノの息子はジョン・コリリアーノ

ヴィオラはウィリアム・リンサー、チェロはレナード・ローズ、フルートはウンマー、オーボエはゴンバーク、トランペットにヴァッキアーノ、ホルンにはすでにヨゼフ・シンガーの名前が見えます。くらくらするようなメンバー表ですが、だいたいこの体制でバーンスタイン時代にこのあと突入していくのですから、それはすごい時代でした。
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音源はとりあえず3枚紹介しておきます。
1枚目は、MUSIC&ARTSからのもの。2003年に発売。Previously unreleasedとクレジットされていて、世間一般的には、初商用リリースとなります。一時間余りの短いコンサートですので2曲とも収められております。ノイズカット等編集した人の名前まで明記されております。ここらへん、MUSIC&ARTSのまめなところですね。ライナーノーツも非常にコアでマニアック。23ページにおよぶもので、ワルターの棒によるブルックナー9番の6種の音源タイミング比較表などの記載もあります。どなたか訳した人がいたら教えてください。いなければ自分でやります(笑)時間のある時に。
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2枚目。これは知る人ぞ知る。見ただけでわかる人はわかる。ウィングの限りなく妖しい(?)CDです。音質的には特有の硬さみたいなものがありますが、ウィングを好きだった人は結構いると思います。例によって解説書のようなものはありませんので、何も足さない何も引かない、音で勝負といった感じ。
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3枚目は、一番最近のものとなるデルタ盤。このCDにはオーレル版と明記されておりますね。ライナーは見開き2ページだけですが非常に小さい字でこの版のことも含めてかなり詳しく書かれております。ただ、このCDにはレオノーレが収録されておりません。完全な片手落ちで非常に残念なCDです。
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1259- 音源紹介、コルンゴルト 交響曲 嬰へ、付随音楽 から騒ぎ、マルク・アルブレヒト

2011-06-20 23:30:00 | 音源

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これは昨年2010年に買ったCDなんですが、なんだか昨年だけで2000枚ぐらい増えちまって全然消化できてませんでした。演奏会の方も忙しいので週末も時間とれず。この日曜の午後少し時間が空きましたので、ブロムシュテット&ゲヴァントハウスの尻つぼみ的なブルックナーの5番のSACDを聴いた後に、同じSACDつながりでこれを聴いてみました。
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コルンゴルト 交響曲 嬰へ
コルンゴルト 付随音楽 から騒ぎ
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マルク・アルブレヒト 指揮
ストラスブール・フィル
PentaTone Classics PTC5186 373
SACD ハイブリッド
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交響曲だけで50分です。コルンゴルトは妄想(?)がどんどん膨らんできて収集のつかないような大曲になっちまいます。ヴァイオリン協奏曲なんかもそうですね。映画のメージがどんどん大きくなっていくのでしょうか。
この交響曲はなんだかとっても迫力あり。内容は聴いてのお楽しみ。アルブレヒトの棒さばきがいいです。ほんとにさばいている感じ。みずみずしさがありますね。
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おまけのようについている、から騒ぎ。これとってもいいです。甘ったるくてめくれるような美しさ。ほれぼれする。
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1252- ショスタコーヴィッチ 交響曲第5番 レナード・バーンスタイン ニューヨーク・フィルハーモ

2011-06-06 22:00:00 | 音源

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平林さんが制作したCDで、ツートラサンパンチではなく、その半分の規格の4トラック19センチの昔の市販オープンリールテープをCDに焼き付けたもの。
ライナーに一言作成経緯などの記述があって然るべきだと思うのだが、ない。かわりに玉木さんの小文が載っている。平林さんの昨今の活躍から言ってこのような企画があって不思議ではないので違和感はないのだが、一言あればなおよかったと思う。
ソニーから出ている1959年録音の同曲と同じ演奏。最初にLPで発売され、次にリールテープが発売され、それを手に入れられオリジナルとして作成されたCDだろう。7号規格でフォワードとリバースでそんなに大きなものではない。銀紙フォイルセンサー無しのオートリバースなしなので第2楽章が終わったところでLPなみに裏返すか、リバース機能があれば少しは楽。曲の長さのバランスが悪いとこれまたLPなみに楽章の途中で操作が必要となる。といったところか。
なぜマスターテープからではなく市販リールテープからのダビングなのか。そこらへんの詳しい情報もほしかったですね。例えばフルトヴェングラーものならば、使用過多でオリジナル・マスターそのものが劣化して、、、といった話がよくあったりするが、この1959年当時のマスターテープについてはどうだったのだろうか。やはり使用過多のオリジナルよりも高性能市販リールテープの方が作りも含め丁寧だったということなのか。それはありうる。自分でもそのような経験があるから。見事な定位をもった4トラ19センチを何本か持っていて愛聴していた時代はそんな昔の話ではない。
再生は結局今は、TEACのX2000Rを持っているが、最近はあまり聴かない。配線もやめている。アメリカ120ボルト仕様。昇圧機をかませば問題なし。一度日本でオーバーホールしたことがある。7万ぐらいとられたから腕時計の分解掃除なみだった。動くことは動くがリールテープの磁気の粉とかを一回ずつヘッドから取り払わないと速度が緩んだり再生音が変になったりする。とにかく面倒くさい。それがいいという人もいますけれど。
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ということで今回の平林さんの製作はCDなので非常に楽。それで音はどうなんだろう。聴いてのお楽しみ。びっくりするぐらい分解されていて特に低音のクリアな響きがすごい。それに高音のヴァイオリンの音も美しく、演奏のおそらく一発勝負的な雰囲気がよく出ている。足音などもリアル感あり。書くのはここまで。
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1251- シベリウス交響曲第7番 演奏は曲を超えた。異形の絶演!ムラヴィンスキー&レニングラード・フィル

2011-06-05 22:10:00 | 音源

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解釈の為に存在する曲。
こんなとんでもない演奏はいまだかつて聴いたこともなかったし、これからもありえないだろう。空前絶対絶後。
まさに空前絶後という言葉がぴったり。
1972年ごろ手に入れた新世界レコード。
ムラヴィンスキー&レニングラード・フィルの1965年モスクワのライヴ録音。
何度聴いたことか。彫れて白くなっている。
白すぎるのはシベリウスの交響曲第7番。この演奏解釈を何にたとえよう。唯一、第2次世界大戦中のフルトヴェングラー指揮による運命の第4楽章コーダにおける超アチェルランド。トランペットのもつれるタンギング。ものともせず駆立てるフルトヴェングラーの震える波状攻撃の棒。並ぶのはこの演奏しかない。それほどすさまじいムラヴィンスキーの超シベリウス解釈。
とにかく跡に残ったのはすさまじい解釈とオケの実力だけ、と言った感じ。
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シベリウス作曲
交響曲第7番
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エフゲニー・ムラヴィンスキー指揮
レニングラード・フィル
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録音:1965年2月23日
モスクワ音楽院大ホール
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演奏は約20分。
交響曲とは言いながら自由な曲想で進む。
主にテンポや雰囲気が変わるところを羅列してみる。
聴きながら河童さんの駄文のお皿いをする人は是非、音量をオケの定位が明確に感じられるほど、あげて聴いて欲しい。
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1. Adagio ティンパニの弱音(ピアノ)による導入。
1.1 mezza voce(22小節目) 弦楽器による流れるようなメロディーライン。
1.2 (60小節目)トロンボーン・ソロ。
1.3 (71小節目 練習番号D)ティンパニの打撃。
2. Un pochett meno adagio ~poco affrett(練習番号Fの前後)テンポ徐々にアップ。
3. Vivacissimo(練習番号J)スケルツォ風。
4. Adagio(練習番号L)トロボーンのソロに導かれ金管の彷徨。
5. Allegro molto moderato 流れる弦と木管。
5.1 (練習番号T)弦の驚異的なハーモニー。素晴らしい。
6. Vivace さらなる加速。
7. Presto シベリウスのギザギザ音。
8. Adagio トロンボーン再帰。
8.1 (練習番号Y)ティンパニ炸裂。
9. Largamento (練習番号Z)全金管炸裂。
10. Affettuoso 最後の準備。
11. Tempo I
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(1)抑え気味のティンパニに続いて2分の3拍子で弦が先を急ぐように上昇する。この時点でムラヴィンスキーのはがねの意志とレニングラード・フィルの実力のすさまじさを聴き取る事が出来る。
(1.1)そしてすべるような長い長い弦楽器主体の柔らかなフレーズ。飛行機から見る眼下の流れる雲。魔法のじゅうたん。
そして曲想は一気に盛り上がり最初のクライマックスをむかえる。
(1.2)圧倒的なトロンボーン・ソロ。向かって右側に定位したトロンボーンが、ムラヴィンスキーによりこれまた圧倒的に静寂を奏でるべくコントロールされた他の楽器のもと、まるでトロンボーン・コンツェルトなみに朗々と吹きまくる。目の前にトロンボニストのバジングが、アンブッシュアが、濡れた唇が、震えるビブラートが、なんという大胆な響き。これぞまさしく、何も足さない何も引かないムラヴィンスキーの楽譜のみを信じる鉄の意志からしか生まれえない偉大な解釈であろう。
(1.3)しかし真のクライマックスはこのあとにやってくる。
トロボーンを引き継いだホルンがシベリウス的イディオムのショートフレーズでこのメロディーラインを切り上げた直後だ。強烈なティンパニの一撃。撥が飛び皮が破れそうなティンパニ。そしてそれを克明に超リアルにとらえた録音。スコアに強弱記号はない。それに続く木管の鬼気迫るユニゾン。これこそが真のクライマックス。
思い起こせば、冒頭の第一音もティンパニがピアノで奏でられていたのだ。
ここまで我々は息をつく暇も無いではないか。我にかえり、他のどの指揮者の演奏でもいい、あまたある演奏を少し思い浮かべてみよう。いかに凡庸であることか。ムラヴィンスキーの異形に畏怖の念をおぼえ頭がクラクラしてくる。
(2)テンポは加速を2度重ね、
(3)スケルツォ風のヴィヴァーチェシモにはいる。一度だけ弦の合奏が不ぞろいになるが、その一箇所のライヴ的瑕疵を除けば、あとはレニングラード・フィルの圧倒的な腕。腕。腕。
日本のオケの皆さん。よく聴いてください。こんな合奏やったことありますか。
(4)そしてトロンボーン・ソロに導かれ、大伽藍の圧倒的な金管の彷徨が始まる。まるで宇宙が共鳴するようなこれぞ真のロシアのブラスの響き。炸裂ではあるがこんなきれいな音は聴いたことがない。そして再度スケルツォ風にもどりすぐに、
(5)弦楽器と木管による流れるような音楽が始まる。
なんと素晴らしい弦楽器のハーモニー。
進むにしたがい曲は少しずつ刻みが短くなり始める。
中低弦の刻みをベースにヴァイオリンの流れるハーモニー。
(5.1)ここで我々はまたしても忘れがたい弦の響きに遭遇するのであった。
(6)音楽はさらなる加速をしながら、
(7)最後のプレストに突入する。シベリウス特有の執拗な弦楽器の刻みの中、
(8)アダージョで例のトロンボーン・ソロが再帰する。1.2と同じ進行だが、
(8.1)このあとの真のクライマックスの再帰。つまりティンパニの強打。スコアではここはピアノからデクレシェンドするトレモロと書いてある。しかし、響く音は指定とは全く異なる大強打。ムラヴィンスキーの曲の縁取り感覚がものの見事に決まった瞬間であろう。
フィナーレが近くに来ているので、ここで我々は興奮、静かなる熱狂を感じることになる。実に素晴らしい解釈だ。
(9)音楽は急速にブラスの響きが急降下し、ウルトラ超フォルテッシッシッシモで、八分音符をかなでる。擬音で言うと、グワッ、という風に聴こえる。
(10)弦が長い音をクレシェンド、デクレシェンドしながら最後の、たった5小節だが、内容てんこ盛りのクライマックスを導く。
(11)弦がシンコペーションを繰り返すなか、ブラスセクションがメゾピアノから一つの音をクレシェンドしはじめる。トランペット、トロンボーン、ホルンが、メゾフォルテからフォルテッシモまでたった四分音符7つ分のなかを一度デクレシェンドし、すぐにクレシェンドするのだ。この解釈!そして見事すぎるほどに吹いてしまうレニングラード・フィルの恐るべき力。
そして最後の炸裂のなか、ちょっと待て、この最後の炸裂音の響きは他の指揮者と全く異なる。バランスが異なるだけではないとみる。
その最後の炸裂音、彷徨のなか、全ての弦がユニゾンで二つの音、全音符+2分音符、2分音符、をブラッシングしながら終わる、だけならよいのだが、録音を聴くとムラヴィンスキーはこの弦の全奏にホルンを重ねている。まさに朗々と宇宙的響きをかもしだす。そして、最後は、全音符+2分音符、2分音符、で本来なら、他の指揮者がやっているように、
ざーーーーざぁ。
と切り上げなければならないところ。音価は全く逆。
というよりも、
ざーーーー、ざーーーーーーーーーーーぁ。
と終わる。
どこまで伸ばして終わるのか、きっとレニングラード・フィルの強烈なビブラートが果てしも無く続き、全員のビブラートさえも完璧にピッチがあい共鳴し始めるその瞬間を狙って終わるのだ。ああ完璧な解釈だ。素晴らしい。
この演奏の素晴らしさを35年以上訴え続けてきた河童だが、誰も振り向いてくれない。一人を除いて。
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ムラヴィンスキーがいかに無から音楽を始めているか。唯一信ずることが出来るのは楽譜だが、だからといってそのまま響かせるわけではない。彼の意思が入り込んでいる。
ちょっと聴くと異形のようではあるが、しかし、レニングラード・フィルの実力ともども、双方の長い年月にわたるたゆまぬ努力と、ムラヴィンスキーの天才技がミラクルを生んだ瞬間。
現場で起こった必然性のある解釈、屈服させられてしまう解釈。芸術は異形なり。
有名なベートーヴェンの4番は全く方針の異なる曲だが、同じプロセスを踏むことにより、結果的には両曲ともアンビリーバブルな演奏であるとともに、透明性、ダイナミック、几帳面性など相似形の演奏となっている。
生で聴いた田園など思い起こすと、強烈なコントロールなどといわれたものとは全く別の響きがそこにあったのは事実。あの演奏も忘れがたい。
シベリウスの7番は日本でのライブもあるが、録音のコンディションが悪いのと、それ以前に、やってる場所が悪い。なにしろNHKホールですから。あすこでミラクルな演奏なんてめったにない。ホールが演奏を壊す。
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あと、シベリウスの曲で、対極の路線から出発して、結果として同じような強烈な感動をもたらす演奏解釈として、クーレンカンプフのヴァイオリン、フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィルのヴァイオリン協奏曲の戦中ライブがある。もう少しましな音で聴きたいものだが、残っているだけでよしとしよう。
ヴァイオリニストの心臓が指揮者の強烈な演奏解釈につられてしまって、完全に煽られ、同一の意識レベル、高みまで達した稀有の例。クーレンカンプフの心臓がバクバクと音をたてている。駆り立てるフルトヴェングラー。
これまた解釈がスキルを超えた録音である。
また、バックを務めるベルリン・フィルのダイナミックレンジは覗うべくもないが、想像はつく。
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オケの皆さん、このとおりやれ、などとは言わない。だけど、少なくともこのような志で音楽に向かっていって欲しい。
真の芸術が真のエンタメを生む。
聴衆はたしかに気が楽かもしれないが、ハイレベルな意識のなかで共同体を形成したいものだ。継続するエンタメを。
とにかく、ムラヴィンスキーの指揮による1965年モスクワライブは音がよいので、シベリウスの交響曲をはじめ、全部聴いて欲しいものだ。
孤高の指揮者による、今では考えもつかない当時のハイレベルなレニングラード・フィルの恐るべき力が永久に輝き続けている。
おわり


1244- アルゲリッチ、シューマン、ショパン、東日本復興支援チャリティCD

2011-05-23 23:05:00 | 音源

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5月20日(金)すみだトリフォニーに新日フィルを聴きに行ったその場で、チャリティーCDを買いました。98,700円のガラスCDを買おうと思ったのですが、あいにくとなかったので通常のCDを3,000円で買いました。(笑)
一応DSD収録のようですし、まだ聴いてませんが音質的にも期待がもてそうです。
昨年の新日フィルライブ録音です。
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ピアノ、マルタ・アルゲリッチ
シューマン ピアノ協奏曲
ショパン ピアノ協奏曲第1番
クリスティアン・アルミンク指揮
新日本フィル
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それでこのCDを買ったらサインの引換券のようなものをくれたので、なんですかと訊いたらこれと引き換えにアルミンクのサインがもらえるということらしい。昔はサインはよくおねだりしていた時期もありましたが、最近はとんとご無沙汰。この日も全く興味がなかったのですが、気が変わったのは、9時15分過ぎにコンサートが終わって、錦糸町から銀座方面に繰り出すにはなんとも中途半端な時刻。どうせなら華金の飲みスタート時刻を遅めの方にセットしてしまえ、ということでだらだらと、サイン待ちして時間つぶし。最初、ロビーでドイツ語であいさつをしておりましたけれど、個別のサインのときのスピークは英語模様でした。まぁ、文法似てますしね。ウムラウトとかありますけど同じアルファベットを使うというのが決定的に日本国にはない西欧結びつきの強さですね。
それで、サインはこの復興チャリティーCDにみなさん書いてもらってましたけど、このCDならアルゲリッチのサインならありです。指揮者のサインはなしでしょう。ということで当日のプログラムに書いてもらいました。
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1218- 同日日本公演したズービン・メータ プラシード・ドミンゴ 昔の共演ベスト盤

2011-04-12 01:00:00 | 音源

昨日のブログでズービン・メータの2011.4.10来日公演の第九のことを書きました。素晴らしい演奏会でした。
同日、渋谷ではプラシード・ドミンゴの公演がありました。こちらはチャリティーではなく事前に決まっていたもの。
メータ2011.4.10(日)東京文化会館16:00
ドミンゴ2011.4.10(日)NHKホール15:30
ということで両方観るのは不可能です。
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公演の興奮は行った人たちにお任せ。
それでこの二人が共演したCDを思い出しましたので紹介しておきます。

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1988年大晦日公演
テノール、プラシード・ドミンゴ
ズービン・メータ指揮
ニューヨーク・フィルハーモニック
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夢見るような内容です。
いきなり、ジョルダーノのフェドーラより「愛さずにはいられぬこの思い」から始まります。ニューヨーク・フィルハーモニックの硬質で強靭で黄色く光り輝くサウンドに導かれ、きわどい線、一点の光源から発せられるようなこれぞ本場のテノールとでも言うべき、絶唱がたった2分で歌いあげられます。うーん。何度聴いてもいい。超愛聴盤以上だな。このような歌で口説いたら絶対に落ちる。落ちないのは、ありえない。自信に満ち満ち溢れている。三者素晴らしいの一言に尽きる。
そして最後のガスタルドンの「禁じられた音楽」での最高の高まり。メータの高揚した伴奏というにはあまりにもゴージャスなサウンドが響く中、ドミンゴが光り輝く。うーん、素晴らしいです。
とにかくすべてが夢の中の出来事のようなエイヴリー・フィッシャーホール大晦日の公演。
CDではここまでですが、このあと年末恒例のこうもり、その序曲で締めて、続けてアンコールが2曲。
バッテリーパークを起点としウォールストリートを右に見て、さらにタイムズスクエアからブローウエイをのぼり、コロンバスサークルを越えると左側にリンカンセンターが見える。左方がシティーオペラ、中央がメトロポリタン・オペラハウス、右方がニューヨーク・フィルハーモニックの本拠地のエイヴリー・フィッシャー・ホール。そこにいくらドミンゴと言えども出る機会は限られている。マンハッタン大晦日のこれ以上ない贅沢を味わえるCDです。今でも買えるのかどうかわかりませんけど、血眼になって探す価値があるCDです。
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それで話をドミンゴの公演の方に戻すと、4月10日公演と13日公演があるようですね。どっちか選べといわれたら私なら13日の方を断然選びますね。プログラム後半が魅力的。好きなレハールが3曲入ってますし。
http://domingo2011.jp/info.html
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