河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

PC版に一覧等リンクあり。
OCNから2014/12引越。タイトルや本文が途中で切れているものがあります。

2667- ドン・ジョヴァンニ、森山開次プロダクション、井上道義、読響、東響コーラス、2019.1.27

2019-01-27 20:51:40 | オペラ

2019年1月27日(日) 2:00-5:30pm 東京芸術劇場

全国共同制作プロジェクト プレゼンツ

モーツァルト 作曲

森山開次 プロダクション

ドン・ジョヴァンニ 6-83、76 日本語上演 (英語字幕、日本語字幕(セリフは日本語無し))

キャスト(overture, in order of appearance)
1.ダンサー(10名)
2.ドンナ・エルヴィーラ、鷲尾麻衣 (黙役)
3.ツェルリーナ、藤井玲南 (黙役)
4.ドン・ジョヴァンニ、ヴィタリ・ユシュマノフ (黙役)

キャスト(Act, in order of appearance)
1.レポレッロ、三戸大久(Bs)
2.ドン・ジョヴァンニ、ヴィタリ・ユシュマノフ(Br)
2.ドンナ・アンナ、高橋絵理(S)
3.騎士長、デニス・ビシュニャ(Bs)
4.ドン・オッターヴィオ、金山京介(T)
5.ツェルリーナ、藤井玲南(S)
5.マゼット、近藤圭(Bs)
6.ドンナ・エルヴィーラ、鷲尾麻衣(S)

ダンサー(10名)
東響コーラス
チェンバロ、服部容子
マンドリン、青山涼

井上道義 指揮 読売日本交響楽団


Duration
Overture  6
ActⅠ 83
Int
ActⅡ 76

オーケストラ
8-6-4-4-3 2管(ティンパニ含め全部上手側)、チェンバロ下手側、マンドリン舞台

序曲でひと出しあるのは今の世の中常識で、ただ、物語の中の相関図とはあまり関係のないような出来事だったように思う。見栄え優先のようにも見えた。あとで思うと、アンナとエルヴィラが似すぎていてすぐには判別できなかったというところがあったからかとも思った。

本編は日本語上演で、その日本語と英語の字幕が付く。ただし、セリフのところは日本語字幕無し。通常、原語で歌っている歌手たちが日本語で歌うのは簡単とも思えない。なにやら新しい歌詞を覚えるようなものではないのかな。などと余計な心配をしつつ、ダンスとのコラボを楽しむ。

森山さんの振り付けはどのようなマジックなのか、音楽とダンスが並行並列的均衡をずっと保っている。正しい意味でのコラボ。双方溶け込んでいるということではなくて、同じだけ独立、単独に主張しあっている。存在感の強さ。歌い手が声を出すのと同じように存在感があるとでも言おうか。

ダンサー10人衆の光と影。赤の色調に赤い衣装で舞台と一体化。溶け込んだり主張したり、同じ色からの動きはインパクトありますね。雄弁なダンサー。
ダンサーの動きに時折歌い手の動きが混ざる。よく練りあげられている。

舞台は1階2階、ピットの前も活用。客席も利用。2階の上は何もないので声がびっくりするほどよくとおる。

知り尽くしのドンジョ、歌い手8人衆。動きは作為が無くて自然、良く決まっている。日本語歌唱はどうも文節の最後のところが長く意味を込めていかなければならないようで違和感あるものの総じて楽しめた。今日の様なプロダクションだと動いて歌える歌手必須ですね。

オーケストラはトップ揃い踏みのようでしたね。重厚な読響、切れ味鋭く、ミッチーの棒がさえわたる。オケ、歌、ダンス、井上の棒のもと作品がコンパクトになって軽々と演奏しちゃいました。
楽しかった。
おわり














2666- バーバ・ヤガー、グリエール、ハープ協、メストレ、ベルリオーズ、イタリアのハロルド、トゥガン・ソヒエフ、N響、2019.1.26

2019-01-26 23:55:07 | コンサート

2019年1月26日(土) 6pm  NHKホール

リャードフ バーバ・ヤガー  3

グリエール ハープ協奏曲変ホ長調op.74  12-9-5
  ハープ、グザヴィエ・ドゥ・メストレ

(encore)
ゴドフロワ ヴェニスの謝肉祭  5

Int

ベルリオーズ イタリアのハロルドop.16  15-10-7-13
  ヴィオラ、佐々木亮

トゥガン・ソヒエフ 指揮 NHK交響楽団


メストレのハープの音を聴きながら、彼を一度聴いたことがあるな、と思い出した。

2175- サマーフェスティヴァル2016、サーリアホ、イスキエルド、東響、2016.8.30

難物の現代音楽。この時は作曲家の作品に神経を集中させながら聴いていたと思う。ハープのコンチェルトは馴染みのないもので戸惑いもあった。
今日弾くのはグリエール。ま、作曲家の事もあまりなじみが無い。甘口の進行の中に、ハープの離れ技が時折混ざる。細身の男性ハーピスト。ハープは足技が難しいと聞いていたので、ズボン姿の男だからじっくりと足の動きを見ていたのだが、殊更動きがあるようでも無かった。3階席からだとよく見えなかった。全体にスポーティーなアトモスフィアがありますね。
グリエールのコンチェルトは表情が多彩で豊か。ハープ単独の技巧や他楽器との組み合わせが面白い。型は型としてあるのでそこはゆだねながら聴ける安心さもある。サーリアホのトランスの世界初演の時とは聴き構えがだいぶ違っていたな、という妙な実感。
ハープからこちらに照射される音の広がり、これはやっぱり他の楽器では味わうことの出来ないもので、色々と堪能しました。


後半はガラッと変わって、ベルリオーズのイタハロ。もはや、デコボコギクシャクしたいかにもベルリオーズらしいサイケデリックな作品。多彩な音の色、大胆無垢な律動、自由な伸縮。イデー・フィックスというが、主題がそもそもひとつではないのかなどと勝手にリストを思い出したりする。
こういったものをソヒエフが振ると、全てが明瞭でクリアになる。ギトギトしない。技術レベルの高低を作品の品質レベルと一緒にしない。言うなれば、作品のオンリ解釈を楽しめる。なので、綺麗に過ぎるという話しには与しない。
見た目は白鳥の羽根の様な軽くて鮮やか、涼し気な振り。おそらく、ボリショイの舞台の埃が一掃された演奏が彼の地では繰り広げられているのだろうなあと遠目に思う。
ソヒエフの熱量のポテンシャリティーは解像度にあらわれるのかもしれないと思うところもあるけれども、それはオーケストラスキルにディペンドしたものでは必ずしもないのであって、いわば彼の耳が作り出す創造の世界、それが見えてくる、そこが凄いと思う。
まあ、能力だろうと言ってしまえば身も蓋もない。
ヴィオラの主張はベルリオーズが考えだしそうなことだなあと、いい腕前のプレイヤーの弾きっぷりと、ソヒエフのオケドライヴィング、色々と楽しかったです。
おわり




2665- シューマン、チェロ協、堤剛、チャイコフスキー3番、ポーランド、小林研一郎、日フィル、2019.1.26

2019-01-26 23:43:41 | コンサート

2019年1月26日(土) 2pm サントリー

シューマン チェロ協奏曲イ短調op.129  18-9
 チェロ、堤剛

(encore)
バッハ 無伴奏チェロ組曲第3番より ブーレ  3

Int

チャイコフスキー 交響曲第3番ニ長調op.29 ポーランド  16-9-11-6-11


小林研一郎 指揮 日本フィルハーモニー交響楽団


4,5年前に聴いたドヴォルザークのチェロコンの時とはうって変わって、みなぎる弾きが素晴らしいシューマンだった。
グッと抑えたオケ伴の中、しなり豊かにタップリと歌い込む自由弾き、黒く光り輝くチェロサウンドが大変に素敵。木目の温かさが実に心地よい。
炎さんが彼には珍しく協奏曲の伴奏をそうとうコントロールしている。ソロが堤さんだからなのかどうかは知らないけれども、いつになく協奏曲を、らしく振っている。限りなく抑え込んだオーケストラは静けさが支配するもので、寂寥感のようなものが、小さくサラサラとペイヴメントの如く敷き詰められていく。その音の上をチェロが実に強靭にそれでいてしなりのある柔らかさで、かつ、素晴らしく整ったピッチで、有無を言わせぬ美しさで揺れて進む。シューマンの憂いの音楽を心ゆくまで満喫できました。いやあ、ホントいい演奏だった。コクがあり過ぎですわ。美味しすぎた。


後半に置かれたポーリッシュ、たまにしか聴くことが出来ない曲だけれども、もっともっとバンバン聴きたい曲ですね。
大きく鳴った初楽章に始まり、リズミックで、シンコペ満載、みなぎるちから、色々と魅惑的。とりわけ、ど真ん中の中間楽章のアンダンテが深刻な渋み、デリカシーと言いますか、ふっくらと膨らんでいく表情、味付けがチャイコフスキーテイストに溢れており、一滴もこぼさず聴き尽す。
終楽章の山盛りシンコペーションは聴いていて爽快。スッキリする。炎の右腕は非常に雄弁で一筆書きのようになるところもある。たまに撫でるような左手も意味深い。日フィルは大きく音を切りつつ進む。作品の進行を完全に手中にいれており、スキルフルを越えたニュアンスの深みに余裕を感じる。指揮者、オケ、双方、この曲に対して完全に型が決まってますね。惚れ惚れ。事も無げにすんなりと出来てしまうから凄い、まあ、プロの余裕技。いつでも朝飯前の曲があるんだろうなあと感心するのみ。
いい演奏会でした。ありがとうございました。
おわり




2664- 魔法使いの弟子、白雪姫、シェエラザード、バッティストーニ、東フィル、2019.1.25

2019-01-25 23:05:21 | コンサート

2019年1月25日(金) 7pm コンサートホール、オペラシティ、初台

デュカス 魔法使いの弟子  11

ザンドナーイ あるお伽噺の印象 白雪姫  4-4-3-5+4

Int

リムスキー=コルサコフ シェエラザード  10+12-10-12


アンドレア・バッティストーニ 指揮 東京フィルハーモニー交響楽団


二日前のサントリーから場所を変えての公演。

2662- 魔法使いの弟子、白雪姫、シェエラザード、バッティストーニ、東フィル、2019.1.23

ソロの歌い口のうまさは変わらず、激しい波のところはさらに高くなった。この日も満喫。

席が近いのでよく見える。
収録マイクのセッティングが面白い。各弦トッププルト前に1本ずつ計4本。Cbには無し。
ウィンド1列目に3本、2列目に4本。同列ホルンに1本。テンパニに2本。タンバリンのところに1本。ハープに1本。ブラスセクションには無し。上から宙づり1セット。
どんなサウンドに仕上がるのかなこの1600人キャパ初台ホール。録音も聴いてみたいものだ。
おわり


2663- コジ、ショパコン2、ヤブウォンスキ、冬の日の幻想、トルトゥリエ、新日フィル、2019.1.24

2019-01-24 23:49:30 | コンサート

2019年1月24日(木) 7pm サントリー

モーツァルト コジ・ファン・トゥッテ 序曲  5

ショパン ピアノ協奏曲第2番ヘ短調op.21  14-9+7
  ピアノ、クシシュトフ・ヤブウォンスキ

(encore)
ショパン 練習曲op.10-12 革命  2

Int

チャイコフスキー  交響曲第1番ト短調op.13 冬の日の幻想  13-12-8-13

ヤン・パスカル・トルトゥリエ 指揮 新日本フィルハーモニー交響楽団


ヤブウォンスキは2年前の2017年に同じオーケストラの伴奏でショパコン1番をしました。今回は2番です。

2282- ショパンPC1、ヤブウォンスキ、シマノフスキ2番、ヴィット、新日フィル、2017.2.24

ショパンの伴奏音楽は、それはそれとして、この日もピアノに集中、たっぷりと味わい尽くしました。
中間楽章は縦のバーを取り払ったようなプレイ。草書スタイルのように見えながらもきっちりと清書したような整った美しい響き。やつしているように見えて実はそうではない。
ppからmfの幅の中をデリカシー満載に込めて弾く。叩きは皆無。両方の掌がまとまって見え煮凝り風な音の粒がきれいにまとまる。指の引き際に音が鳴り始めるように見えるのは錯覚なのだろうが、ppからmfの強弱幅を聴いていると色々と納得できるところが多い。あのようなタッチがえも言われぬ美音を引き出しているのだろうか。
両端楽章もあまり強弾きは無くとも、きれいな響きがよく聴こえてくる。ショパンを噛み尽くしました。
アンコールの仕草が毎度、アンコール、そう、要るの、要るよね。てな雰囲気でユーモアたっぷり。前回は遺作と革命、今回は革命だけでした。これが、結構激しかった。ショパンの色々な顔を魅せてくれましたね。ショパン堪能しました。


トルトゥリエと言えばポールのチェロを思い出してしまいますが、今日はその二世による棒。
最初のコジから結構鳴らす。オーケストラに音を出させますね。音バランスは指揮者が一番よくわかっていると思うので、言ってる通りにやればいい、というのは変な言い方だが、指揮者の領分があるのだからね、そこは。
オケメン、納得のプレイだったかと思います。スッキリとしなったいい演奏のコジ。

後半のチャイコフスキー1番、なかなか実演では聴けない。楽しみにしていました。十八番でしょうね。
じっくりと熟成感のあるトルトゥリエの冬の日の幻想でした。やや下降気味のチャイコフスキー節から始まるが美しいメロディーライン。魅惑的な作品。グイグイと引き込まれますね。対のような終楽章は、序奏と再現部が大きくて楽章の半分を占める。入念な指揮っぷりで完全に知り尽くし切っている、大好きな曲、そんな感じですね。
クリアに聴かせてくれる型、メリハリのあるサウンド、スケールが大きく、あの大柄な体躯でホップステップして、ジャンプまでしてしまう、いいタイミングの着地も鮮やか。
ここでもよく鳴らす。管は遠慮なくバンバン出させますね。ツボどころというのがあって、実に良く決まる。壮快。
ブラスセクションは鳴らし切り、それに負けじとウィンドも弦もかき消されることなくよく、音が来る。パーカッションもバシンと決まりますね。
ホルンの活躍の場が多い曲、このオケ、そこだけが残念なのです。以前よりはだいぶ良くなったとはいえ、毎度トラというのはやめてなんとかしっかりと存在感のあるプリンシパル立ててほしいですね。今はトラがいないとガクッと腕前に差が出てしまう。

まあ、それはそれ。
冬の日の幻想の初楽章の展開部に入ってすぐにコントラバスで短い、いかにもロシアっぽいメロディーが何小節か出てきますが、あれってあすこに1回だけなんですよね。後半のブラスのファンファーレの前出しモチーフの様な気もしますが、魅惑的な節だけにストレートにもっと聴きたくなりますね。チャイコフスキーは他のところに書き込むの忘れてしまったのかもね。
おわり








2662- 魔法使いの弟子、白雪姫、シェエラザード、バッティストーニ、東フィル、2019.1.23

2019-01-23 23:29:21 | コンサート

2019年1月23日(水) 7pm サントリー

デュカス 魔法使いの弟子  11

ザンドナーイ あるお伽噺の印象 白雪姫  4-4-3-4+6

Int

リムスキー=コルサコフ シェエラザード  10-12-11-12


アンドレア・バッティストーニ 指揮 東京フィルハーモニー交響楽団


バッティによるお伽噺プログラム、丁寧な音作りでオーケストラが良く合わせている。ウィットに富んだデュカス、ザンドナーイのデリカシーたっぷりな音楽も魅力的。何事もないがしろにしない、佳作の佳演。

シェエラザードが、また絶品。締め付けではなくて開放。大きく広げて自由な空気の深呼吸。演奏は静けさからヴォルテージの高い激しさまで大きな振幅を魅せつけてくれる。自由な響きの音楽から経由して作られるメリハリ感というのは束縛とは違う筋の通った生きた演奏を思わせる。
2楽章のウィンド4種、各パートソロの絶妙な歌い口。こぶしのきいたような陰影が素晴らしい。しびれる。次の楽章では、しなやかに大きく歌う弦。それに絡むウィンド、これがまたお見事。これら中間2楽章、惚れ惚れする演奏でしたね。
その絶妙な第2楽章でもうひとつ特筆すべきは結尾の締め、バッティのこれでもかという猛烈な駆り立てに吃驚。ただならぬ気配に唖然茫然で、一体全体何をしようというのだ、というところがありましたね。メイクドラマの必要な波であったのかもしれない。終楽章の表題に持っていくまでのドラマですね。

ソロの歌い口が皆さんお見事で、特にコンマスさんのヴァイオリンにはうっとりと耳を傾けました。
アラビアンナイト物語、絵巻物のような演奏に舌鼓。
ありがとうございました。
おわり


2661- オール・ラフマニノフ、阪田知樹 ピアノ・リサイタル、2019.1.16

2019-01-16 23:09:36 | リサイタル

2019年1月16日(水) 7:30-8:40pm HAKUJU HALL

スーパー・リクライニング・コンサート

オール・ラフマニノフ・プログラム

幻想的小品集op.3より第2曲 前奏曲嬰ハ短調 鐘  5

前奏曲集op.23より
第1番嬰ヘ短調  4
第2番変ロ長調  3
第3番ニ短調   3
第4番ニ長調   3
第5番ト短調   5
第7番ハ短調   2

ヴォカリーズop.34-14 (阪田知樹編)  6

楽興の時Op.16  7-4-3-3-3-6

(encore)
ここは素晴らしい処op.21-7 (阪田知樹編)

ピアノ、阪田知樹


阪田さんを聴くのは昨年2018年のシューマンのコンチェルト以来のこと。
2555- トリスタン、シューマンPC、阪田知樹、チャイコフスキー4番、ラザレフ、日フィル、2018.5.12

また、スーパーリクライニング企画を前回聴いたのは一昨年2017年のダニエル・シューでした。
2344- ベトソナ31、シューベルト4即興曲、トロイメライ、ダニエル・シュー、2017.5.17

この企画は座り心地も演奏も最高ですね。

阪田さんのオール・ラフマニノフ・プログラムはみっちりと隙間なく1時間、アンコール入れて1時間を越える長丁場を休憩取ることもなく、もの凄い集中力で聴かせてくれました。

昨年のシューマンはデリカシー満点で素敵な演奏でした。今日のラフマニノフは、力強くて太い線、それにウェットな流れがきらりと光る。身体が前後に激しく揺れ、右腕左腕が高く舞う、絶妙なタッチと息づかい。お見事なもんですなあ。シューマンとは別の面を見ました。多彩な響きに魅了されました。
前奏曲からのピックアップと楽興の時は圧巻。前奏曲の長調短調の色合いがくっきりと鮮やかに表情付けされていて味わい深い。軽いポーズの中に深い呼吸とコンセントレーションの高まり、それが聴くほうに移ってくる。この空気感。堪能しました。
また、楽興の時は巨大。スケールの大きなプレイ。とめどない流れが次から次と押し寄せてきて、一息もできない。圧巻。
第4曲の音響的盛り上がりは一つのクライマックス。各ピースの独立した動きはそのクライマックスに負けず劣らず濃いものでラフマニノフの作り出す陰陽にグイグイと引き込まれた。デミネンドやデクレシェンドはこれみよがしなところが無くて、ナチュラルに使い分けられていそうだ。計算を感じさせるところが無くて自然な息づかい、曲想にマッチしていて作品の大きさや幅を感じさせてくれる。大きな作品と演奏でしたね。楽興の時。各ピースのつながりもよく聴こえてきました。

ヴォカリーズとアンコールのここは素晴らしい処、阪田さんの編曲もの。音楽の表情がグッと変わりロマンチックでムーディーなところが魅力的。作曲もするという事でどのような作品があるのかわかりませんが、今日のような編曲ものを聴いてみるとそれとなく肌触りがわからなくもない。作品を聴いてみたいものだ。楽しみですね。

充実の濃密リサイタル、存分に楽しめました。
ありがとうございました。
おわり



















2660- ブゾーニ喜劇序曲、角笛、プロコフィエフ6番、大野和士、都響、2019.1.15

2019-01-15 23:08:19 | コンサート

2019年1月15日(火) 7pm 東京文化会館

ブゾーニ 喜劇序曲op.38  7

マーラー 少年の不思議な角笛  4-3-6-6-7
 テノール、イアン・ボストリッジ

Int

プロコフィエフ 交響曲第6番変ホ短調Op.111  14-14-12

大野和士 指揮 東京都交響楽団


上野の1階席両サイドは高台になっていて自席はそのレフト側の高台席で見晴らしがものすごくいい。ボストリッジのヘッドの位置とこちらから見る目線がちょうど同じ高さで、彼のあごを引きながらの歌唱でもものすごくよく聴こえてくる。思う存分堪能できました。
マーラーの不思議な角笛5曲、たっぷりと30分近く、歌詞はわからないが発音はよくわかる。声の伸ばしのところが高貴、品があって、音程のブレといったよけいなことを忘れさせてくれる。また、歌いまわしが自然でナチュラル(同じ)、情感がごく自然にこもっていきます。進むにつれて歌の内容が積分されていく。気持ちの積み重なりが出てくる。
ボストリッジの歌声は都響とびっくりするほど同質化している。境目がわからないぐらい。それに、大野との呼吸もよく合っている。作品を楽しむには理想的だ。
ボストリッジは深みにはまることなく、情緒ほどほどに、クールにきめる。歌詞の内容を追いつつ聴くボストリッジの表現は味わい深いといわなければならない。

プロコフィエフ6番、めったに演奏されることが無いが、聴けば聴くほど脳内味が出る。
プロコフィエフらしいやにっこさ満開の作品で、あっち飛んだと思ったらこっちで堰止湖、とにかく油断ならない曲。
1,2楽章の流動体モードの弦が美しい。ここらあたりが大野の真骨頂だろう。その弦にもっと膨らみが出ていればさらに艶めかしくも悩ましい演奏になっていたに違いない。
ラッパの切れ味は冴えない。終楽章、スパッとした縦軸の切れ味が欲しいところ。
1,2楽章の滑るような演奏だけで十分満足しました。

演奏会冒頭に置かれた作品は、自分が持っているブゾーニ・イメージとはかけ離れたもので、軽いタッチ、モーツァルト的な雰囲気を醸し出す。書きたい気持ちもなんとなくわかるような気がする。
ちょっと気分転換に、プロコフィエフのあとに整理体操的に最後に演奏してみる、というのはどうだろう。
おわり


2659- モーツァルト、ピアノ協奏曲8番、21番、小菅優、東響、2019.1.14

2019-01-14 17:27:30 | コンサート

2019年1月14日(月) morning 11、ミューザ川崎

モーツァルト ピアノ協奏曲第8番ハ長調K.246  8-7-6

モーツァルト ピアノ協奏曲第21番ハ長調K.467  13-8-6

小菅優 ピアノ、指揮  東京交響楽団


朝11時から小一時間のコンサート。このシリーズ、小菅さんの弾き振り、前回はこれ。
2396- モーツァルト、ピアノ協奏曲第12番、第9番、小菅優、東響、2017.8.26

この時は、初めて見る弾き振り、今回は見るほうの慣れもあってか前回よりしっくりとしている。ハ長調がふたつ、で、さらにモーツァルト然としてきた感じですね。

2階席のセンターやや左サイドで聴く。レフトハンドがものすごくよく聴こえてくる。正確で美味。左手にだけ集中して聴いても十分に楽しめるものでした。そして、それに鮮やかにライトハンドが軽く乗る。両手が良くバランスした水際立ったタッチでモーツァルト堪能。
特に緩徐楽章のデリカシー満点で弱音のニュアンスが極めて美しい。息を呑むとはこのことか。静謐で美しいモーツァルト。

伴奏のオーケストラ、管楽器群の歌い込みが生きていて柔らか、奥ゆかしい伴奏妙味に浸る。
小菅さんの振りは指を丸めたもので、バレンボイムみたいに指を伸ばして棒がわりにするといった所作はない。人それぞれという話しですね。打点をきめればスキッとしそうだ。

小菅さんの録音は、まずはベトソナ全、これは何度も聴きこんだ。モーツァルトも全集が欲しいですね。モツコン全、モツソナ全。それにベトコン全も。思うんだが、若いときにベトソナ全を作ったのはとっても良かった。これから何度でも再録して欲しいしね。

祝日の朝から楽しいひと時でした。
ありがとうございました。
おわり


2658- ヴェルディ、レクイエム、ロレンツォ・ヴィオッティ、東響、2019.1.13

2019-01-13 23:11:43 | コンサート

2019年1月13日(日) 2pm ミューザ川崎

ヴェルディ レクイエム  10-38-10-3+6+7+15

ソプラノ、森谷真理
メッゾ、清水華澄
テノール、福井敬
バス、ジョン・ハオ
合唱、東響コーラス

ロレンツォ・ヴィオッティ 指揮 東京交響楽団


新進気鋭ヴィオッティの棒は昨年2018年、東フィルを振ったのを同プロ2回聴きました。あれと比べると曲種によるものかそれともこちらの気持ちのせいか、随分と違う演奏スタイルでびっくり。

2590- 道化師、両手、小山実稚恵、牧神、海、ロレンツォ・ヴィオッティ、東フィル、2018.7.19

あの時の流れ、それを排したかのような90分の鎮魂。ゆっくりとゆっくりと進む、鎮魂の呼吸。ヴェルディのオペラ風味な味わいはひとまず横に置き。

出だしの1曲目レクイエム、第一音は聴こえるか聴こえないか、限りの弱音から始まった。既に深刻なパフォームの予兆となる、作為と言えば作為なのかもしれないが、なにしろ第一音なのである。ここが肝。これで全てが決まったようなものだ。ヴィオッティの音楽スタイルや信念のようなものが透徹して染み渡ってくる。この空気感。

ミューザの4階席に初めて座りました。オーケストラ真正面で、下の席から見上げると限りなく遠い4階席だなあという思いしかなかったのだが、こうやって座ってみるとそうでもなくて、上から見下ろすとステージが案外近い。もちろん、音も比して近くて、遠いという感覚はすぐに消え去った。ブレンドされた非常に良い響きが届く。心地よい。

深刻な弱音で始まったレクイエムは、これ以上ないアンバランスにロングな怒りの日で沸点。約40分にわたるもの。
独唱、デュエット、四重唱、合唱、絡み合い。九つのシーンが次から次へと壁画のように描かれるヴェルディ屈指の音楽技。強靭な合唱、それに東響の透明な音圧が重なる。途方もない音楽と演奏。吹き上げる怒りの日。バンダラッパは2階席のドアを開けて吹いていたようですが、他にもいたかもしれない。騒がしくなく、見事にバランスしたオケ演奏、特筆に値する。ヴィオッティ、あのテンポで、よく踏ん張った、やり抜き通した。先走ることの無い棒は割と冷静なのかもしれない。巨大な音楽作品の前に謙虚で大胆な腕前披露。

パワフルオーケストラの見事さは挙げればきりがない。サンクトゥスの全粒揃ったブラスセクションの破天荒な16分音符とか。輝かしさがありますね。


合唱が輝いている。きっちりと揃ったピッチ、4階席まで朗々と鳴ってくる。見事だ。ソリスティックな線を感じさせる局面、それに時折魅せる器楽的な折り目、場面に合わせるように深刻な内面を照らし出す。

独唱で目を引いたのは、バスのリアン・リがインディスポーズ、代打で出たジョン・ハオ。
最近のハオさんの活躍はめざましくて至る所で見ている感がある。この日は風貌がびっくりの様変わり。これまでは温和な雰囲気を醸し出していたのだが、変身。長髪にしてオールバックでポニーテール、しっかり結び、もみあげは剃り込み、おそらく眉毛もかなり鋭く剃り込み。まるで三国志に出てくる猛者のようだ。びっくりのイメチェン。本当にご本人だったのかしら。

というのを横目に見つつ、ソプラノの森谷さんの歌い込みが素晴らしい。一段、上ですな。
完全な余裕の歌い口でレクイエムを解きほぐす。ハイトーンがオーケストラの上から軽やかに前方に伸びてくる。気張らない。ごくナチュラルにやや細めのトーンがデリカシーなニュアンスに富んだ美味美声で伸びてきます。物腰や所作も素晴らしくて、見ていると譜面を台に置いて歌う。歌や顔の表情のみにとどまらず、腕や手、指先の動きまで細やかにモーションされていて、もう、華があるとしか言いようがない。気品があって、やっぱり、二段上ですね。舞台映えしますなあ。
メッゾとの重唱は完全にリードしていて、バランス配慮、ハーモニーが美しい。重唱のアンサンブルは彼女のもので、色々なものを乗り越えてきたものを一滴も客に見せることなく美しい音楽の表現に捧げている。そんな想像を掻き立てる。冷たさではない冷静な目があるように思えました。
これまで、蝶々さん、フライア、第九、後宮コンスタンツェ、等々、聴いているけれども、自分は一体何を聴いていたのだろうか、と。

森谷、ハオ、ともに譜面は台に置いて歌う。清水、福井はしっかりと持って歌う。どっちがどうだという話しではありませんが、指揮者を中心点にして、左右対称という感じ。

リベラ・メをいとも簡単に歌い尽くす感のある森谷さん。ですが、それは心のこもったもの。
合唱が怒涛のように押し寄せ、ヴィオッティのもと、オーケストラ・フルセクションが怒りの日、最後の咆哮を歌い上げた後、魂を鎮める森谷さんのリベラ・メ、押し寄せる波を押しとどめるように音を切る。
十日前に惜しくも旅立ったツイッター仲間への弔いになってしまった。このような聴き方はしたくなかった。彼は解放され鎮まるであろうことを祈る。音楽の友は失いたくない。
おわり 


2657- レニングラード、1812年、金子建志、千葉フィル、2019.1.12

2019-01-12 23:08:20 | コンサート

2019年1月12日(土) 6:00-8:20pm 習志野文化ホール

チャイコフスキー 大序曲1812年  17

Int

ショスタコーヴィチ 交響曲第7番レニングラード  28-12-22+17

(encore)
チャイコフスキー スリーピング・ビューティー より ワルツ  4


金子建志 指揮 千葉フィルハーモニー管弦楽団


お初でうかがいました。
80分におよぶ大熱演でした。練り込まれたアンサンブル。静謐な物腰、一大咆哮、悠久不動のインテンポ。譜面を見ているようなタッチから、徐々にそこはかとなく漂う情感。満喫しました。レニングラード、また、色々と考えさせてくれましたね。

なかなかコクのあるアンサンブルで、総じてインテンポで、第3楽章緩徐楽章での静かな運びは息が続き渋めで、かつ、説得力のあるものでした。もう、練り尽くしてる感じ。
金子さんの棒はおなかレベルのあたりの高さで精力的に動き音が纏わりついてくる。決して前のめりせず貫くインテンポは主張であろうし、レニングラード大きく見えました。プレイヤー達への浸透度の深さもよく見えるものでこの速度感には納得です。

初楽章のボレロ大詰めでヴァイオリンが総立ちプレイ、終楽章のコーダエンディングではチェロを除き立ち弾き、このほうが馬力が出そうな感じではあった。見た目の力もありますね。

ホールは1階席のみで1500人キャパ。音が前に来ない。コントラバスなど直音で勝負といった感じで弾いている方々、相当厳しいのではないか。そこそこの席で聴いたのだがオーケストラの音が舞台から出てこず餅団子みたいに丸く内側に吸い込まれていく。音の後戻り。別のホールで聴いてみたいと贅沢な希望。

レニングラードのあとのアンコール前に、金子さんのマイクパフォーマンスありました。ちょっと長かった気もしますが、それよりも、昔NHKFMで音楽番組の解説をやっていた頃の静かでわかりやすい物腰のトーク思い出しました。


プログラム冊子は渾身の必読物。ご多分に漏れず演奏会前に全部読むのは無理。というよりも小読本といった感じで、演奏会とは別にコツコツと読んだほうが、気持ちが落ち着く。
オケサイトにも部分的に載っているようで手っ取り早いところもあるが、あらためてじっくりと眺めると、作品解説は時代の事から始まって譜面まで詳細にわたる。ショスタコーヴィチなど、チェリのベルリンフィルとのレニングラードシンフォニーの公演の事から始まって、アンナ・アフマートヴァの叙事詩の日本語訳まで載せるという、もう、ディープ。
断片から全体を知る、物調べや文作、愉悦の極みだろうなあ。
ありがとうございました。
おわり











2656- シェーンベルクVn協、コパチンスカヤ、ブルックナー6番、大野和士、都響、2019.1.10

2019-01-10 22:17:17 | コンサート

2019年1月10日(木) 7pm サントリー

シェーンベルク ヴァイオリン協奏曲Op.36  14-8-13
  ヴァイオリン、パトリック・コパチンスカヤ

Int

ブルックナー 交響曲第6番イ長調WAB106 (ノヴァーク版) 15-17-9-15

大野和士 指揮 東京都交響楽団


年明け早々の演奏会は、コパチンスカヤさんのヴァイオリン。お初で聴きます。
シェーンベルクのヴァイオリン・コンチェルトはオーケストラの咆哮とヴァイオリンのソロがよく分かれていて両方を味わえる。双方にとって難儀な曲に違いない。響きとしては、より現代音楽的な醍醐味を満喫できる。シャープなソロに相応しいオーケストラサウンド。

コパチンスカヤさんは自由奔放というかモーションに華がありますね、自然な。
各フレーズのひと弾き目が水滴のように膨らみ、そしてスパッと見事な切れ味。この困難なコンチェルトでなんと、身体全体がよく動きスウィングする、スウィング弾き。どうやってリズムを取っているのか、素人目にはさっぱりわかりませんけれども、なんだか、凄そうだというのは分かる。なにやら、波長がどこかの節目ごとにシンクロしているようだ。動いていても線が一様に浮かび上がってくる。線が続いていくヴァイオリン・フレーズは割と追いやすいもので、まあ、離れ業といったところですな。
伴奏のオケは、点の連鎖がシャープ。このオーケストラが得意とするもので、クリアで明瞭(同じ)。特に終楽章冒頭のオケの立体構築物の様な響きには圧倒されましたね。
とにもかくにも、両者が同じく研ぎ澄まされていて凄味にもシナジー効果、圧巻の音響空間。


Ab6 duration
Ⅰ 2-2-2-t2-2-1-2-c2
Ⅱ 2-2-1-t4-1-2-2-c3
Ⅲ 3-3-3
Ⅳ 2-2-1-t4-1-2-2-c1

後半プロのブルックナーはうって変わっての駄演凡演。アクセルと流れがチグハグでつんのめっていく。ブラスはバラバラ。ブル音では無いし。辛うじて、ホルンが木管化していて、この作品ではウィンドに、より寄り添うようなトロミをだしていて、これはありですね。
おわり