2016年10月25日(火) 7:00-9:50pm 東京文化会館
NBS&日経 プレゼンツ
シュトラウス 作曲
スヴェン=エリック・ベヒトルフ プロダクション
ナクソス島のアリアドネ
キャスト(in order of appearance) of prologue
1.作曲家、ステファニー・ハウツィール(Ms)
2.踊り子、ダニエラ・ファリー(S)
3.執事長、ハンス・ペーター・カンメラー(台詞)
4.音楽教師、マルクス・アイヒェ(Br)
5-1.プリマドンナ、グン=ブリット・バークミン(S)
5-2.テノール歌手、ステファン・グールド(T)
他
キャスト(in order of appearance) of opera
1-1.水の精、マリア・ナザーロワ(S)
1-1.木の精、ウルリケ・ヘルツェル(Ms)
1-1.山びこ、ローレン・ミシェル(S)
1-2.アリアドネ、グン=ブリット・バークミン(S)
2.ツェルビネッタ、ダニエラ・ファリー(S)
3.作曲家、ステファニー・ハウツィール(黙役)
4.バッカス、ステファン・グールド(T)
他
マレク・ヤノフスキ 指揮 ウィーン国立歌劇場
(elapsed time)
プロローグ 39′
Int
序曲 4′
オペラ 75′ (オペラ・セリア15′、コンメディア・デラルテ30′、オペラ・セリア30′)
●
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4e/02/67cf61654289eab01f0821b80966ee38.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/75/b7/0ac3893c301e6e731e4e4de9a2ca2a65.jpg)
●
オペラのほうの第3シーン(オペラ・セリア)の30分におよぶ、アリアドネのバークミンとバッカスのグールド、圧巻。圧巻。
第2シーン(コンメディア・デラルテ)の30分、ほぼ独り舞台のツェルビネッタのファリー、こちらのコロラトゥーラのカラーリングが効いた歌いっぷり動きっぷりはこれまた、圧巻。
長丁場第3シーン、デュエットは大詰めまで待たなければならない。驚異的な厚みでホールに響き渡るソプラノのバークミン、あまりの声のデカさにメージャー・ドーモーが横にぶっ飛んでしまったヘルデンテノールのグールド。この場、中盤まではそれぞれ独唱で聴かせ、最後俄然一体となった二重唱、もはや、ぶったまげも頂点、筆舌に尽くし難いおそろしいまでの歌いっぷり。唖然。人間技とは思えない、アンビリーバブル。
オペラ、満喫。
それと、もう一人、ズボン役作曲家メッゾのハウツィール、プロローグは歌だけとるなら彼女の独り舞台、まぁ、舞台には粒ぞろいの方々たくさん出てきますので、動きではそちらに目がいく部分もあるのだが、ハウツィールはバークミンの極厚な声質をそのままメッゾに移したような感じで、デカい声しなやかサウンド、それにメロウなあたりも隠し味的にジワジワと。
オペラでは、3台のピアノ、蓋が空いたり斜めになったりの3台のピアノが舞台中央にあり、奥にこちらむきに劇中劇の聴衆が座っている。真ん中に手前から奥に通路。それら聴衆席の手前中央にセッティングした3台のピアノの一つを弾きツェルビネッタの伴奏付けをする。この黙役とプロローグ合わせ、お見事な活躍でした。
あと、第1、3シーン(オペラ・セリア)でアリアドネを取り巻く女3人衆、バランスがよくとれたソプラノ、メッゾで、やっぱり負けず声がデカい。なめし皮のような柔らかで強靭な歌唱が魅力的でしたね。
●
リングサイクルでバイロイトでも日本でも知らない人はいないヤノフスキ、2500円プログラムにキュッヒルの興味深いお話がちょこっと載っているそのヤノフスキの棒。個人的には最近になって彼の極意棒を少しわかってきたようなところはありますと他のブログのところでも書きました。
音の出が遅くなることを嫌う棒はオペラでもよく機能している。ウィーン歌劇場のオケを振るのは四半世紀ぶりと、それが宣伝文句になること自体理解できないものなんですが、実際のところ40人に満たない(36人編成か)オケを統率、あまり騒ぐような話でもない。
主催者は目くじら歯くじら立てて根掘り葉掘り色々な話を引っ張り出してきて何でもかんでもいい方向に宣伝しないとね、この6万3千円オペラ、値段つり上げの材料探しに躍起なんでしょう。
いずれにしても彼の真価はここにあるとは言えない。
演奏は豊かに満ち溢れている。打点通りに音の出を求めるヤノフスキ棒にたまにずれをみせながらも歌い切る。オペラの序曲は非常にゆっくりとした印象がありましたけれども、実際のところはそれほどでもない。双方の音楽性がマッチした瞬間だったと思います。
オペラ第3シーンではバークミンがそうとう舞台前方に乗り出してきて歌う個所があり、冷静沈着なヤノフスキとの別の水でも飲んでいるようなエキサイティングなところもありました。
引き締められたタクトは舞台に激しく向けられることはあまり多くは無い。
●
ベヒトルフのプロダクションは、まず、明るくてシック。ウィーンの舞台だなぁと感じる。天井へのスペースが大きくとられている。降りてくるシャンデリアの仕掛けの事もあると思います。
プロローグは人の出入りが多い割にごちゃごちゃしたところがまるで感じられない落ち着いたもので素晴らしい舞台です。オペラ部分でのセッティングは上に書いた通りです。ここは奥の聴衆席を暗くし、明かりがキーワードになっていそうですね。
オペラ第3場でアリアドネが、かみて寄りで仰向けになるシーンがありますね。あすこにはミレーのオフィーリアがダブりました。絵とは右左逆ですが、劇中劇の聴衆にとっては正しいポジションという話になりますね。
最後は、奥の聴衆席の真ん中に手前から奥にとられた通路をアリアドネとバッカスが走りながら奥に駆け上がり、アリアドネはかみて側に、バッカスはしもて側に、手でお互いを払いあい分かれていく。劇中劇一丁あがり、あんまりタイプじゃなかったんだけど劇だから一緒に歌ってあげたのさ、っていう感じのエンディング。まぁ、こちらの本当の聴衆も、ああ、劇だったとホットして終わる感じ。これはこれで。
●
オペラとコンメディア・デラルテ、俄然一体という文章が踊りますが、実際のところはそんなことはなくて、観ればわかるようにかなりはっきりと区切られる。音楽は流れ続けるが、場面は明確に変わる。この作品を俄然一体とべた褒めするのはどうかと思います。
第3シーンのアリアドネとバッカスによる圧倒的な二重唱のあと、ツェルビネッタの出は、演出の如何にかかわらず違和感の残るところではあります。
バークミンは昨年デュトワ&N響とオンステージで歌ったときのおかっぱが妙にエキセントリックさを誘うものでした。今日はオペラではロングな髪を束ねて顔がよく見える。エキセントリックな風味は演目あわせるような感じで少し遠慮。サロメのインパクト強いですよね。
グールドはこの10月前半、新国立でジークムントを6回歌ったばかり。今回は急逝したヨハン・ボーダの代役。
作曲家のカサロヴァを聴きたかったのですが、ハウツィールに変更。
両方ともに内容には満足しました。代役とは思えないぐらい。
あと、昔(プラザ合意の頃)メトで見た同作品、Bodo Igeszのプロダクションでは、ピットのオケが音出し、チューニングなどをおもいおもいやっているうちにそれがいつのまにかシュトラウスの音楽に変わって既に始まっている、指揮のアンドリュー・デイヴィスはジーパンなりのラフな格好でいつの間にかポーディアムで座って指揮を始めている。そのような記憶があります。あれはあれで面白かった。
以上、4年ぶりの来日となったウィーン国立歌劇場来日公演初日より。
おわり