恐山あれこれ日記

院代(住職代理)が書いてます。

今後の問題

2019年04月20日 | 日記
 今後の科学技術の発展が宗教にもたらすかもしれない影響で、私が深刻だと思うことをとりあえず三つ。

一、平均寿命が100歳を超える。
 
 すると、一人の人間のアイデンティティーを何が支えていくのかが、重要な問題になるでしょう。近代以降の人間のように単一の職業で支えるわけにもいかず、家族や共同体の形式や構成メンバーがずっと不変であることも考えにくい。となると、「自分が何者なのか」という問いをどう引き受けるかは大問題です。

 このとき、飽きなければずっと好きでいられる趣味や遊び、その気ならずっと信じていられる宗教などがアイデンティティーの重要な構成要素になるかもしれません。すると、従来では考えられないような競争や対立が社会に噴出するかもしれません。

二、特定の意識を別の生体に移植(たとえば脳移植)したり、コンピューター・チップへのコピーが可能になる。

 これは自意識の永続と同義であり、「不死」の実現も同然です。すると「死」は個々の人間(自意識)の選択の結果となり、「人は誰でも必ず死ぬ」という前提が崩れ、新たな死と生の意味付けが要請され、宗教はこれまでとはまったく違う教説を案出しなければならないでしょう。

 たとえば、「死の克服」という文脈ではなく、「生の始末」というようなパースペクティブで、宗教は我々の実存を考えざるを得ないかもしれません。

三、ネット技術で個々の意識がダイレクトに結合する。

 それは人間の実存が「自己」という様式から変容することであり、インパクトは宗教のみにとどまらない話です。

 ただ、あえて宗教に関して言えば、「自己」の実存を問う所謂「普遍宗教」が無意味化し、デジタル空間に新たな「アニミズム」が生まれてくるかもしれません。いや、それさえも無くなり、「宗教」も「人間」もついに解消し、まったく異なるデジタル的実存に変貌するのでしょうか。

 ところで、これらは本当に「深刻」なことなのか?

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150 コメント

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Unknown (Unknown)
2019-04-20 00:18:26
どれもゾッとしますね。3番目はまだいいとして、平均寿命が100歳を超えるなんて、そら恐ろしいけど、もうだいぶ近づいていますからね。
2番目の問題は、個人的にはかなり期待したいところなのですが、宗教、法律などが追いつかない?もしかしたら技術的にはもう完成しているのかもしれませんね。
とてもついて行けない世界がやってくるなら、もう少し生きて未来を見てみたい気もしますね。
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Unknown (Unknown)
2019-04-20 00:57:21
全てはお金の問題ですね。

お金持ちだけが永遠に生きて
生を享楽できる。

お金の無い人は「苦」の人生に
早く見切りを付けたい。

ただそれだけの事ですね、キット。
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補足 (Unknown)
2019-04-20 01:03:43
そうすると

お金持ちには宗教は不要となり
貧乏人だけが浄土宗に逃げ込む。
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訂正 (Unknown)
2019-04-20 01:04:48
浄土宗・・・・>浄土教
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Unknown (Unknown)
2019-04-20 01:32:47
平均寿命100歳という果実を支える枝がもたないでしょうね。
若年層が国外に流出すると思います。
物件として国が選ばれるわけです。
物件の選択肢として、衰退途上国をわざわざ選ぶ理由はないと思います。
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ほんとほんと全ては金の世の中だ!! (Unknown)
2019-04-20 03:55:01
平均寿命が100歳を超えるなんて言うのは
社会制度が凄く上手く回っている世界の想定だろう。

それだと年金制度も破綻してしまいそうだ。

今でも金融資産が1億円有る人口比1%の
裕福層でも100歳まで家計がもつわけがない。

5億円以上の金融資産を持つ0.3%の超裕福層のみがHomo Deus(ホモ デウス)の世界を享受出来るに過ぎない。

そういう0.3%の超裕福層は
「苦」の意識なんか他の生体に脳移植して
自らは、永遠の苦の滅失感をやすやすと達成してしまう。
故に彼等には宗教は全く不要であろう。

だが超裕福層以外の人口を占める
99.7%の人は、経済的にやっていけないので早く死ぬ事を望む。

で、安楽死ピルも大いに推奨される。
「敗者よ去れ」という訳だ。

だから平均寿命が100歳を超えるというのはどうも現実的では無さそうだ。

敗者の大多数は、誰かがコメしてる様に
あの世で救われる事を望むので
浄土教の宗教は流行るかも知れない。

しかし禅宗などは
さしずめ絶滅危惧種となるだろう。
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杞憂ではないかと思います (大日方)
2019-04-20 04:06:46
私はこの三点はそれ程問題にならないのではないかと思います。

1.平均寿命が100歳を超えるということは、おそらくは80歳、90歳まで元気なのでしょう。となると、80歳、90歳までは働かざるを得ないと思います。仕事が変わるとか家族の構成メンバーが変わるというのは、現在でも誰もが多かれ少なかれ経験することなので、それ程大きな変化とは思えません。

2. 私が技術に疎いだけかもしれませんが、意識をコンピューター・チップへコピーができるとは思えません。例えば、自分の意識をスマホの様なものにコピーすることが技術的に可能になり、コピーするとします。すると自分の意識が生身の体とスマホの中に同時に存在するということになります。生身の自分はスマホを覗き、スマホの自分は生身の自分を見ている。そんな事があり得るでしょうか?自分の意識は生身の体あるままで、スマホの中にあるのは単なるデータに過ぎないということになると思います。

3.意識というものを物理学だけで理解するのは、例えそれが可能であったとしても、だいぶ先の話だと思います。それができない以上、意識をダイレクトに結合するということも無理でしょう。
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前後際断せり (榮久)
2019-04-20 04:20:08
今、道元禅師の言葉が浮かぶ

そこで今回のテーマを
病気や死のリスクは
誰にでも同じである
結局の所、私を含めて庶民で考えると
五人にひとりが心筋梗塞で
七人にひとりが癌で
十人にひとりが脳の病気で死に
他の原因で最も多いのが
自殺と自動車事故
この現状を大きく変えることは
できないであろう

人間の寿命が
どれくらい延びるのかを
問題にする前に
医療のあり方は
ご指摘の通り
再生医療、遺伝子治療
臓器移植、クローン、
視野に
AIが医者に変わり判断を
人口子宮で子どもを・等々が
現実になるであろうし

宗教に関しては
イスラム教が世界宗教に
再びの宗教戦争が

また、今日の中国では
深刻な地下水汚染
「高濃度の重金属、ヒ素の汚染」
イタイイタイ病、水俣病の再来が
と共に世界的な水不足
米国の西海岸、大平原地帯の
砂漠化など
更にEU諸国の移民問題などの
影響で経済活動の低迷化し
世界不況が目の前に
日本でも老齢年金の破産
姥捨山が射程に

今日の問題が
大切なのではなかろうか
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Unknown (Unknown)
2019-04-20 04:53:43
あー。やっぱり記憶は体なのかも。
記憶って思い出すたびに作られてる気がする。記憶A、記憶B、…、記憶nみたいに保存されてるんじゃなく。
というか、こまかく分解すればそういうものにもなり得るかもしれないけど、
「細胞一個を『私』といえるか?」みたいな?
すべては1と0に分解できる、として、それだと「私の記憶と一卵性双生児たるあなたの記憶が違うのはなぜ?」って感じで結局「私」の記憶と同じにならなさそうな?
データがあって、プログラムが“私”で?「プログラム”私”」を作ることができるのか?
それは「私」といえるのか?
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Unknown (Unknown)
2019-04-20 05:07:32
巨大コンピュータを壊したら、繋がれていた人間の体が死んだ。
それを見た管理人(人型)ロボットが、「オレノダ!」と叫んで、
死んだ人間の体を押しやって自分の体を繋ごうとして「死んだ」。

確か萩尾望都の漫画。
阿修羅とか梵天とかも出てきてたよ。
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