私には昔から、偶然、何かをきっかけに突如として妄想が爆発することがあります。 最近、たまたまテレビをつけたときに見た映像で、ひさしぶりに爆発が起こりました。
テレビには Perfume という若い女性3人のユニットが現れ、「ポリリズム」という非常に印象的なダンスをともなうテクノポップ(と言うのでしょうか)音楽が流れ出してきたのです。
すでに大ヒットしている曲らしいのですが、私はそのとき初めて聴き、釘付けになりました。まるで曲が点火したように、あるイメージが鮮明に見えてきたのです。
それは、おそらく生きのびるために機械化することを受け容れた人間が、指先から銀色に輝きつつ急速にメタル化していく自分の体を見つめながら、薄れていく意識の中で恋人の姿を思い出しているという、まるでB級SF映画の1シーンのような映像です。
私は、あの曲が、社会のシステムとメカニズムの中で断片化する我々が、ほとんど絶望しながらも、そのシステムとメカニズムに媒介されてなお、他人とのつながりを手探りし、そこに希望を託す、とても切ない歌に聞こえるのです。
「キミの想い」は「とても大事」だけれど、それは十分に実現したり報われたりするのではなく、せいぜい「無駄にならない」まま、想いとの関係が定かでないうちに「世界は廻る」わけで、一方「ほんの少し」しかない「僕の気持ち」もただ「巡る」だけか、いつか「キミに伝わる」と「そう信じ」るしかない。
歌詞にある「ポリリズム」「ポリループ」もれっきとした音楽用語らしいのですが、それよりも、まさに合成されたリズム、加工されてかろうじて繋がっている輪という意味が響いてきます。それはもはや、人工的に操作されたコミュニケーションとして人間の感情や思いを構成するしかない人間の、今後の在り方を暗示しているようにも思えます。
恋を表現して、ほとんど感情を表す形容詞を使わず、「衝動」「反動」「感動」「行動」と名詞を畳みかけ、唯一形容らしい形容といえば「ああ、プラスチックみたいな恋だ」と言う。このフレーズはとても鋭い。今の時代の華やかな空虚を私に強く感じさせます。
「このポリリズム」を「くり返す」うちに、かつて動物の中から現れてきた<人間>が、そう遠くない未来、デジタル・メカニズムの中に消えていくのではないか。それは地獄なのか楽園なのか。せわしない年末に、無意味な妄想がしばし続いたのでした。
今年1年、当ブログにお付き合いいただいた皆様、ありがとうございました。よいお年をお迎え下さいますよう、お祈り申し上げます。