恐山あれこれ日記

院代(住職代理)が書いてます。

番外:宣伝です。

2022年02月12日 | 日記
 昨日今日で、私に関わる映像が2本出ますので、ご紹介させていただきます。

 11日に公開になったのは、『東洋経済』という経済専門誌が企画した、油井亀美也さんとおっしゃる宇宙飛行士の方との対談です。動画サイトYouTubeにアップされました。

 まさかJAXAの現役宇宙飛行士と対談することになるとは思いませんでした。しかもオンライン。本当は避けたかったのですが、時節柄しかたありませんでした。

 さらに、スケージュールがゆるさず、私がそのときいたのは、寺ではなく別の場所。その上、雑誌に活字で発表するものだと思い込んでいて、動画公開があることを失念し、法衣ではなく作務衣。油井さんはJAXAのユニフォームでバッチリ決めているのに。

 というわけで、宇宙飛行士と、オンラインで、作務衣という、思いも寄らぬ異例の対談になりましたので、ご紹介させていただきます。

 もう1本は、12日に、NHK ワールドジャパン(https://www3.nhk.or.jp/nhkworld/en/tv/worldprime/20220212/3016115/)というサイトで公開される番組です。国際放送として制作されたものなので、ナレーションなどは英語になると思います。

 ここでは、本ブログにも記事とした、訪問看護師・藤田愛さんとの対談が収録されています。

 私はもともと、周辺に看護師さんや介護士さんの知人が多く、またお医者さんにもご縁があり、講演などもさせて頂きました。そのとき痛感したのは、この方々の仕事の過重さと、「感情労働」的側面の負担です。私は最近特に、この方々の「感情労働」的側面の負担軽減に何かお役に立てないかと思っていました。

 昨年のコロナ禍の最中、関西で多くの「自宅療養」者が亡くなった惨状の最前線で、必死で戦い続けた藤田さんのお話は、是非お聞きいただきたく思います。

 ただ、番組の都合なのでしょうが、恐山での私の様子がかなりの尺で出てきます。お恥ずかしいかぎりですが、藤田さんの現場の映像に合わせる必要で、私の姿も撮ったのだと思います。コロナ禍2年目の恐山の雰囲気は伝わるかとも思います。ご海容ください。

 以上、僭越ながら、ご紹介させていただきます。




確信と情熱の行先

2022年02月01日 | 日記
「説得力という言葉があるだろう。説教する立場の君からすると、それはどこから出て来るものだと思うかね?」

「簡単に言えば確信と情熱だな。話し手が自分の言っていることに確信を持っていて、それを情熱的に主張すると、大きな説得力を持つ。つまり、説得力は往々にして、話す内容ではなく、話し方から生じる」

「ということは、間違った確信や、偽りの狂信からも生じるということか」

「世間を見渡せば、わかるだろう。政治と宗教にありがちなことだ」

「その『力』は説得なのか?」

「いや、正体は扇動だ。しかし、それは説得力と思われやすい」

「どうして?」

「扇動の要諦は、聴衆が漠然と、しかしハッキリと持つ不安や不満を察知して、そこに単純な原因(政治の場合だと、時にはスケープゴート的な)をあてがい、原因を除去する簡単でわかりやすい手段を提供することだ。聞いている方は、一発で『わかる』快感がある。そこに『説得された感』がある」

「それは効くだろうなあ。目からウロコと思う人も多いかも。だが、実際それは扇動で、説得ではないな」

「扇動に対して、扇動される者は乗せられ、巻き込まれ、流されていく。それは感情を支配されているだけで、話されたことを十分理解しているわけではない。扇動はスローガンのような短い言葉を繰り返し、意識に徹底的に刷り込む。語られた言葉の意味をよく考える余裕を与えない」

「では、説得は?」

「説得する者は、聞き手に納得してもらわなければならない。説得と納得は対なのだ。説得する者は、相手を巻き込んで自分の思うように動かそうとするのではない。それは扇動者のすることだ。説得とは、聞き手の腑に落ちるように説明して、次にその聞き手が自分の判断で行動するように導くことなのだ」

「すると説得力は演説では生じにくい?」

「必ずしもそうとは言えないが、対話の方が生じやすいだろうな」

「もし、大勢の人を説得しようとするなら、君はどうする」

「まず自分の主張の前提を説明した上で、己れの腑に落ちていることだけを話す。出てきて当然の質問に十分に答えるためには、それが必要だ。そして最後に、聞き手が話の是非を自前で考えるように促すね」

「面倒だな」

「当たり前だろ。だから説得力のある言葉など、滅多にお目にかかれない。扇動だったら、単に見栄えとコツの問題だ」

「おい、オマエ、ちょっと危なくないか?」

「デカいし目つきも悪いし、コツも知ってるし、と言いたいのか?」

「いや、・・・・」

「ただ、オレは恥も知ってるぜ」