恐山あれこれ日記

院代(住職代理)が書いてます。

本日閉山

2007年10月31日 | インポート

Cimg0185  恐山は本日をもって、今年度の閉山となります。今日は1日とてもよい天気で、最終日でウイークデーにもかかわらず、かなりのお参りをいただきました。

 今年は少し紅葉が早いようで、すでにかなり落葉がすすみ、裸木が目立っています。気温も低くなり、日中は15度以下、朝晩は5度前後になりました。

多くの人々が掌を合わせて故人を偲んだ宇曾利湖も、午後にはすっかり静まりかえり、かすかに波の打ち寄せる音と、湖面を撫でる風の音がするばかりでした。

 今日は午後5時までにすべての整理を終え、本尊地蔵菩薩のお袈裟を納め、全員が退去しました。この時すでに真っ暗。まったくつるべ落としそのものの日暮れです。Cimg0184

 本年お参りくださった方々、お疲れ様でした。ありがとうございました。来年またのお参りをお待ち申し上げます。


これより恐山

2007年10月19日 | インポート

Photo  むつ市内から恐山へは、昔から恐山街道と呼ばれる道が通っていました。この山道を進んでいくと、やがて右の写真のような門が見えてきます。これは現在「結界門」と呼ばれていますが、正式な名称ではありません。今は堂々たる門ですが、以前は木の門だったそうです。

 「結界」とは、もともと僧侶の修行の場を言い、俗世界からの区別を強調する名称です。その意味からすると、ここからいよいよ恐山の聖域に入ることを示し、参拝者の心構えを促すことになりますから、「結界門」という呼び名も、まんざら不適当ではないでしょう。ただし、恐山はどなたでも参拝が自由ですから、特定の人を排除するような意味で「結界」になっているわけではありません。念のため。 

 ところで、先月、台風9号が下北半島を通過しました。Photo_2 このとき、街道脇の大きな木が、「結界門」から少し離れた路上に倒れてしまいました。ここを塞がれると、恐山は行き来ができなくなります。おりしも、当日の宿泊者が上山してくる途中で、ちょっとした騒動になってしまいました。ここは県道なので、整備は県の役目ですが、その日は休日の上、青森市から作業員がやってくるのでは、時間がかかりすぎて役に立ちません。そこで、恐山の営繕係を中心とする男性従業員が総出で、チェーンソーなどを持ってかけつけ、30分そこそこで除去しました。

 今回は彼らの活躍で事なきを得ましたが、以前には倒木が電線や電話線を切断してしまったことがありました。そうなると大変です。境内の電気系統は完全に機能しなくなり、外部への連絡もできなくなります。もし並外れた大木が道を塞げば、そこから先は歩く以外、連絡をつける方法はありません。

 自然の中で暮らすとは、やはり緊張感があるものなのですね。

 お知らせ。先だってNHKのラジオ番組で受けたインタビューが、「在家仏教」という雑誌に掲載されることになりました。11月に出るようです。よろしければご覧下さい。


お経と新聞

2007年10月11日 | インポート

 禅道場では、修行僧は経典か語録(祖師の言行録)以外は読んではいけない、と指導されることがあります。特に入門してしばらくは、読書そのものを禁ずる場合もあります(実際は、本を読む余裕などないのですが)。

 これは修行初期の指導方法としては、よくわかるのですが、それが嵩じて、禅僧は余計なものを読む必要はない、読んではいけないとまで言われるようになれば、これは違うでしょう。この考え方は、いわゆる「悟りの世界」あるいは「信仰の世界」と「世間」あるいは「現実の世界」を切断して、「悟りの世界」に閉じこもり、「現実」を無視することになりかねません。

 しかし、「悟りの世界」の住人も、現実に飲み食いし、着るものを買い、住所を持って生活しているわけですから、「無視」などできるわけがありません。

「悟りの世界」の住人ができることは、「現実の世界」を無視することではありません。「現実の世界」を「悟りの眼」で見ることです。違う見方を示すことです。

 あるキリスト教者が言ったそうです。

「私は聖書を読むように新聞を読み、新聞を読むように聖書を読むのです」

 よい言葉だと思います。

 お知らせ。次回の「仏教・私流」は11月7日(水)午後6時半より、東京赤坂の豊川稲荷東京別院にて行います。