恐山あれこれ日記

院代(住職代理)が書いてます。

社長と禅僧

2010年05月20日 | インポート

 いまさら名乗るのも何か恥ずかしい話ですが、私の名前は南直哉(みなみじきさい)と言います。出家前には、直哉は「なおや」と読んでいて、師匠が得度の際に読み方を変えたわです。特に珍しい名前だとも思わないのですが、出家前に同名の人は、それこそ志賀直哉の他には、一人しか知りませんでした。

 ところが、修行道場に入門してから、たて続けに3人、同名で同じ読みの坊さんがいることを知り、びっくりしました。意外と僧侶に多い名前なのでしょうか。

 しかし、それでも、同姓同名という人物には、その道場で40を過ぎるまで、会いも知りもしませんでした。その40歳を過ぎたある日、当時私が所属していた部署に、一本の電話がかかってきました。

 部下の修行僧「あの・・・、南さんいるか、という電話なんですが・・・」

 私「誰だ?」

 修行僧「ナントカジャーナルって言ってるんですが、そのう・・・〇〇電力の社長がそこで修行しているだろうって・・・」

 私は、また妄想癖のある者が妙な電話をかけてきたのだろうと思い、強い口調で電話に出ました。

 私「南は私ですが、何のことですか!?」

 電話の主「いやあ、社長、さすが修行のせいですか、声がすごく若くなりましたねえ!」

 私「アンタはいったい、何を言ってるんだ!!」

 電話の主「えっ、社長でしょ?」

 私の剣幕に驚いた相手はようやくおかしいと気づき、「失礼しました」を連発しながら、実は同姓同名の人物がいることを教えてくれたのです。それが、当時最大規模の電力会社の社長で、現在も多くの企業の取締役や、政府の委員会に名を連ねている人だったのでした。名前の読み方は「なおや」とは違うようですが、まさしく同姓同名です。

 私が同じ名前では、相手の社長さんに申し訳ない気がしますが、それにしても「ナントカジャーナル」は、同姓同名の別人物かもしれないと、まったく疑わなかったのでしょうか。なんであれ、「思い込み」と「先入観」には気をつけないといけません。仏教に説く「無常」「無我」の初歩の実践として、この二つを捨てる努力をしてみるとよいだろうと思う次第です。

 追記:次回「仏教・私流」は6月28日(月)午後6時半より、東京赤坂・豊川稲荷別院にて、行います。                    


最新の画像もっと見る

21 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
なんであれ、「思い込み」と「先入観」には気をつ... (はてな)
2010-05-20 09:39:11
なんであれ、「思い込み」と「先入観」には気をつけないといけません。

方丈さんが申されるとおりでございますね。
しかしながら、この社会はお金の搾取合戦の真っ只中でございまして、人を固有名詞で呼ぶ以前に「お客様」と呼称しております。
お金というものを取っ払えば、現実として人に様を付けて呼称することは皇室関係者以外にはございません。

それもガチンガチンに固定された観念ではないでしょうから、いずれは変わるでしょうね。

返信する
(はてなさん) (まささ)
2010-05-20 14:34:03
(はてなさん)
なんであれ、「思い込み」と「先入観」には気をつけないといけません。

・・・・・・失礼ですけど、ご自分でご自分のおっしゃっている意味分かっていらっしゃいますか? (苦笑)


(はてなさん)
しかしながら、この社会はお金の搾取合戦の真っ只中でございまして、人を固有名詞で呼ぶ以前に「お客様」と呼称しております。
お金というものを取っ払えば、現実として人に様を付けて呼称することは皇室関係者以外にはございません。

・・・・・・まさに、「思い込み」と「先入観」で書いていらっしゃいますよー。あるいは、はてなさんの周りは、かなり俗っぽい娑婆のようで、Vシネマの世界? (笑) 
返信する
まさささん (Unknown)
2010-05-20 16:06:53
まさささん

もう少し、別な言い方が出来ませんか。
返信する
( ^ω^)「諍論のところには、もろもろの煩悩お... (えろい人)
2010-05-20 17:09:22
( ^ω^)「諍論のところには、もろもろの煩悩おこる、智者遠離すべし」
返信する
<まさささん、もう少し、別な言い方が出来ませんか> (ブルーパスタ)
2010-05-20 23:30:59
<まさささん、もう少し、別な言い方が出来ませんか>

私もそう思います。私は「思い込みの人」に対しては不快を感じませんが(誰であれ、思い込みが無ければ生きていけませんので)、「他の人を嘲る人」には強い不快の念を覚えます。(笑)という記号を付けたからといって、すべてが冗談で済むわけではないのです。

まさささん、なんとかなりませんか?

話題を変えましょう。
偶然、南さんと茂木健一郎氏との5年前の対談テープを発見しましたので、興味のある方は聞いてみてください。

http://nozawa.ddo.jp/mkp/2005/jikisai20050603.MP3

これは、対談と言うより、「悩める茂木氏にカウンセリングを施す南氏」という雰囲気です。「仏教私流」とは多少異なるスタイルの南さんを知りたい方にはお勧めです。
返信する
「思い込み」「先入観」を持たずに生活することは... ()
2010-05-21 06:38:10
「思い込み」「先入観」を持たずに生活することは、かなり意識的でないと出来ないですよね。仏法を学び始めてから、私も少しづつ意識的に「思い込み」「先入観」を持たずに生活するようにしています。すると、世界から受け取ることのできるフィールドが拡がっていくように思えるのです。
返信する
これが、人は見た目で判断してはいけないんだ! (akemi)
2010-05-21 07:44:12
これが、人は見た目で判断してはいけないんだ!
程度の話なら
「思い込み」と「先入観」には気をつけないといけないよね。
って軽い感じですむのだけれど、

「思い込み」と「先入観」が厄介なのは、
ありとあらゆる認識、構造が
これであるということなんだよね。

自己も、他者も、意識も、構造も、言語も、感覚も、
概念としてあるもの、「在る」ということ、
それらのすべてが
「思い込み」と「先入観」そのものから
起きていることだからね。

それは自分から外に向かっても、
外から自分に向かっても、
望むと望まなくても起きるし。
そもそも、自分という認識そのものが
「思い込み」と「先入観」だしね。

気をつけることはできても
捨てることはできないような
仕組みになってるところが厄介だよね。
返信する
ブルーパスタさん (浅野)
2010-05-21 08:39:29
ブルーパスタさん

対談のURL検索できなく、開けないのですが、なにか手立てはありますでしょうか?よろしくお願いします。
返信する
ひとつの基準として、刹那を時間の長さや単位に考... (はてな)
2010-05-21 10:11:58
ひとつの基準として、刹那を時間の長さや単位に考えた場合でも過去と未来はありますが、人間の現在は過去と未来を含むものであり、それは個々人のその時々の思いや考えが作り出すものでしょう。
私が思う「胡蝶の夢」は、これを指すのだと思います。
つまり、夢と現「在った事とそれ以外のこと」だからこそ、なんであれ、「思い込み」と「先入観」には気をつけないといけません。
という、方丈さんの言葉がしっくりきます。
返信する
浅野さん、 (ブルーパスタ)
2010-05-21 23:30:51
浅野さん、

<対談のURL検索できなく、開けないのですが、なにか手立てはありますでしょうか?>

おかしいですね。私のパソコンで試してみましたが、音声の再生に全く問題ありませんでした。

リンク先自体には問題ないと思いますので、再生アプリ側の問題だと思います。浅野さんのPC環境が分からないので具体的なアドバイスはできませんが、一度ハードディスクに落とした後に、window mediaや ituneなど、さまざまな再生アプリを試してみることをお勧めします。
返信する