くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「ぐるぐる猿と歌う鳥」加納朋子

2012-02-29 21:20:26 | YA・児童書
予備知識なしで物語を味わいたいから、人物紹介のページはとばして最後に読んだんです。
そしたら。
「土田冬馬 前の席のデ……/いや、横にでかい同級生」
ツボにはまってしまい、けらけら笑ってしまいました。委員会の集合待ちだったため、生徒に変な目で見られちゃったよ。
加納朋子「ぐるぐる猿と歌う鳥」(講談社)。章題では、後者に「ハミングバード」とふりがながついています。
東京から北九州にやってきた「おれ」(高見森←シンと読む)は、深夜不思議な口笛を聞きます。社宅の屋根に登って、夜の散歩を楽しんでいるらしい少年と、もう一人、心配そうに見つめる小柄な少年。森も同じように屋根に上がり、近づきます。
この野性的な少年が「パック」、小柄なのは「ココちゃん」です。ココちゃんは森の隣に住んでいて、おとなしくて賢い。「心」と書いてやっぱり「シン」と読むのです。
さらに男五人兄弟の竹ちゃん(竹本篤樹)、弟「ギザ十」(哲巳)、以下拓海、直己、陽樹(「あさたなは」には理由あり)外見はお嬢さまなのに方言がきつい十時あや(苗字はトトキと読みます)が加わり、
ある「いたずら」をする物語です。
タイトルの「ぐるぐる猿と歌う鳥」は、トタンの屋根に描かれた落書き。猿を描いた先輩から、「おれ」はあることを引き継がれることになるのですが。
物語の中心は、「パック」の謎でしょう。「真夏の夜の夢」からのネーミングかな。明るさの中に潜む一条の孤独を感じました。パック自身はそれをおくびにも出さないのでしょうが。
もうひとつは、「おれ」の記憶に残る「パンダ公園のあや」は「十時あや」なのか。さらに、ココちゃんが抱える苦悩やら、「佐藤くん」との一件やら、小さな秘密がたくさんあるのですが、これを整理してわかりやすく見せてくれるパックの力が見せ所ですね。
平屋の社宅、トタン屋根、グミの木、といったところから考えると、この物語の舞台は昭和五十年代くらいではないかと思います。「新幹線」や「戦隊ヒーロー」はもうあるので、加納さんの世代をイメージしているのかもしれません。(北九州で育ったそうですし)
方言もいいですよ。「ランドセルからい」(背負いなさい)とか「きなせん」(道路のセンターライン)とか。「~ちゃ」は「~だっちゃ」とは違うといってますが、それは仙台方言かも。わたしも学生時代に九州の方でも「~ちゃ」というと聞いて驚いたものです。
この本に登場する台詞で比較してみると、「食えるっちゃ」「すっぱいっちゃ」は同じように言いますが(アクセントは違う可能性大ですが)、「ストップっちゃ」とか「へんな言葉遣っとーっちゃねー」とか言いませんね。ここで「へんな言葉」扱いされる「ナイショだっちゃ」の方がわたしにとっては自然かも。
とっても楽しかった。森のような活発さは、今はなかなかお目にかかれないかもしれませんね。
現在は大人になったであろうパックから、いろいろと話を聞いてみたいような気がします。

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