草莽隊日記

混濁の世を憂いて一言

ルペンに投票したフランス国民は文明の衝突を恐れたからだ!

2017年04月24日 | 思想家

フランスで国民戦線のルペン党首が大統領選挙の決選投票に残った。これに反発する人たちのデモがパリなどで行われている。移民問題が槍玉に挙がっているようだが、単純に排外主義と決めつけるのは問題である▼梅棹忠夫の文明の生態史観の考え方は、私たちに多くの示唆を与えてくれる。『日本とは何か 近代日本文明の形成と発展』のなかで「日本文明の形成過程と西洋文明の形成過程とのあいだには、歴史的平行現象がみとめられます」と書いていた。梅棹はユーラシア大陸の旧世界を、東西の両端と、それ以外の残りの地域とを区別するのである。東西の両端では民主主義が培われ、資本主義も順調に発展してきた。それ以外の残りの地域は、中国、インド、地中海やイスラムの四つであるが、大帝国が建設されて、その周辺は衛星国になった。暴力が横行するすさまじい世界である▼日本は中国と同じアジアではあっても、和が重視され、暴力とは無縁な別天地であった。しかし、移民のほとんどは、日本やヨーロッパ以外の人たちである。未だに独裁政権の圧政下にある。暴力を行使するにあたっても、何のためらいもないのである。日本とは文化がまったく異なるのである。その人たちと共存共栄ができるかとなると、はなはだ心もとないのではないだろうか▼極右の排外主義と批判するのがたやすいが、ルペン党首に投票したフランス国民は、文明の衝突を恐れたからなのである。


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日本とは何か―近代日本文明の形成と発展 (NHKブックス)
 
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北朝鮮の核兵器が危険なのは精巧な安全装置がないからだ!

2017年04月24日 | 安全保障

北朝鮮の核兵器がなぜ危険なのだろうか。核兵器を保養している国はアメリカ、ロシア、イギリス、中共、インド、パキスタン、イスラエル、そして、北朝鮮なのである▼カーター政権やクリントン政権で、安全保障担当の国務次官代理や国務次官補を歴任したジョセフ・S・ナイも「米ソの核兵器は精巧な装置によって管理されていて、発射には上層部の入力する暗号を必要としていた。しかし、新たに核開発を行おうとする国々の多くは、このような精巧な装置を備えないであろう」(『国際紛争 理論と歴史』田中明彦、村田晃嗣訳)と書いている▼2002年の段階で邦訳されている本で、そう予言しているのである。ナイは冷戦の崩壊によって核の拡散が進むような状況が生まれつつあることを認めながらも、それに対抗する有効な処方箋を出すことができなかった。北朝鮮の暴発が予想される中で、本当のアメリカの核の傘が効力を発揮するかどうかは、はなはだ心もとないからである▼ナイはその本でケネス・ウォルツのようなネオ・リアリストを名指しで批判したが、今になってみると、どちらが正しいかは見解が分かれるのではないだろうか。ネオ・リアリストの「核兵器の拡散によって抑止が働き、安定をもたらす」との主張も一理ある。北朝鮮が日本に核ミサイルを撃ち込むとすれば、日本が核で反撃できないのを知っているからだ。安全保障上の危機が日本に新たな選択を迫っているのである。


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国際紛争 -- 理論と歴史 原書第10版
 
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