草莽隊日記

混濁の世を憂いて一言

風邪を楽しんだ江藤淳に学ぶ

2011年06月07日 | 思想家

 この数年は風邪などひいたことがないのに、珍しく熱を出してしまった。断れない相手からの誘いがあって、会津の中ノ沢温泉、新潟の月岡温泉で湯船につかりすぎたせいもあるだろうが、気になって、かかりつけの耳鼻咽喉科に診てもらった。それでも、私の場合は、家があって家族と同居しているからよいが、それが避難所であれば、もっと大変なのではなかろうか。とくに、後期高齢者の場合は、手遅れにならないようにすべきだろう。久しぶりに熱を出して、昼間から布団にゴロリとなると、貧乏性のせいか、仕事のことが頭をかけめぐってならなかった。忙しくして、あっと言う間に人生を走り抜けてしまう。それが普通の人の一生なのだろう。江藤淳のエッセイに「風邪の楽しみ」というのがある。1971年9月に発表されたもので、「私の風邪は咽喉からやってくる。扁桃腺がはれて、いくらか熱っぽくなり、それから気管支に来たり鼻に来たりして一巡し」と江藤は書いている。ただ、そのときは10日以上かかったようで、8日間は外にも出なかったのだった。そして、風邪で本調子でないのに、論文を仕上げたのだという。病気であるから人にも遭わず、どこにも出かけない。それがかえって良いというのだ。作家らしい物言いではなかろうか。  

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