朗読劇の続きです。
ナレーション:アルタバンは、たったひとりで砂漠を旅し、ベツレヘムの町に着きました。小さな家の戸が開いていて、子守唄が聞こえていたので、その家に入りました。そこには若い母親と赤ん坊がいました。
アルタバン :ちょっとお尋ねしますが、わたしと同じような服装の外国人がこの町に来ませんでしたか?
母親 :おやまあ。ちょうど3日めえさきて、ヨセフどんの家さ行って、赤ん坊に贈り物をやったっつう話を聞いたがぁ。
アルタバン :そうですか。ヨセフの家はどこでしょう。
母親 :それが……昨日、急に旅に出たみてえで……。3人の外国人もあ
っという間にいねくなってしまったんだぁ。
アルタバン ど、どこへ旅立たれたんでしょう。
母親 :あいさつにも来ねえんだ、知るわけねえべ。
ナレ :そのとき、路地から女の人の悲鳴が聞こえて来ました。ドタドタと足音も聞こえます。
女 :ローマの兵隊が赤ん坊を殺しに来たぞ! はやぐ逃げれ
ナレ :アルタバンが戸口に立つと、槍を持つローマの兵隊がぞろぞろやってくるのが見えました。母親は赤ん坊を抱いて部屋の隅で震えています。アルタバンは、ルビーを出しててのひらに乗せました。
兵士 :この家に赤ん坊はいないか!
アルタバン :ここには誰もいない。わしを見逃してくれるような賢い隊長がいたら、この宝石をやろうと思っているんだが……。
ナレ :兵士はキラキラ光るルビーを見ると、いきなり手を伸ばして取りました。
兵士 :ここには子どもはおらん。家はからっぽだ。先へ進め!
ナレ :兵隊たちは武器をガチャガチャいわせながら去って行きました。
母親 :ありがとうござんす。何てお礼ゆったらええが……。神様がおめえさまを祝福して下せえますように。
ナレ :アルタバンは、救い主を捜して旅を続けていました。エジプトに行ったといううわさを聞いてエジプトにも行ってみました。でも、見つけられず、またユダヤの国に戻って捜しました。いつの間にか三十三年の月日がたっていました。黒かったアルタバンの頭は真っ白になっていました。
エルサレムの町に来たとき、ちょうど過ぎ越しの祭りの最中でした。ひとりのユダヤ人の言葉が耳にとびこんできました。
男 :ユダヤ人の王とゆった男は、とうとう十字架につけられちまったべ。
アルタバン :えっ、誰が十字架につけられたのですか?
男 :おめえ、知んねえのけ? ナザレのイエスつう男だっぺ。
:自分が「神の子」なんてゆったから十字架刑になったんだべな。
アルタバン :(まさか。まさかその人は、わしが捜している救い主?)
ナレ :そのとき、マケドニアの軍隊がこちらに向かってきました。兵士はひとりの娘の髪をつかんで引きずっていました。娘はアルタバンの姿を見ると、すがりつくような目でみつめました。
娘 :助けて! 奴隷に売られちゃうよ。奴隷になるぐれえなら、死んじまったほうが楽だっぺに。
ナレ :娘の必死な叫びにアルタバンの心は揺れました。
アルタバン :(この真珠で助けることができる。でも、真珠を使ってしまったら、救い主に差し上げるものが何もなくなってしまう……。
でも、神様はこの娘を救うことを喜んでくださるだろう。)
ナレ :アルタバンは、真珠を取り出して、娘の手に握らせました。
アルタバン :これはお前の身代金だ。これでお前は自由になれるんだよ。
ナレ :そのとき、ゴーっと地鳴りがしたかと思うと、大地が激しく揺れました。壁が崩れ、アルタバンの頭に重いれんがが落ちてきま
した。アルタバンの額が割れ、血が流れました。娘はアルタバンを支えましたが、一目で命が助からないことがわかりました。
アルタバンは、静かに口を開きました。誰かと話しているようです。その相手の姿は娘には見えませんでした。
アルタバン :主よ。わたしがいつあなたが空腹であるときに食物をめぐみ、かわいているとき飲ませましたか? いつあなたが旅人であるとき宿を貸し、裸なのを見て着せましたか? わたしはただあなたを捜していただけで、何のお役にもたてませんでした。
イエスさま :おめえによーぐゆっておぐ。おれの兄弟(きょうでえ)であり、いちばんちっちぇーものにしたのは、おれにしたのどおんなじだぁ。
ナレ :アルタバンの旅は終わりました。宝はすべて主が受け取ってくれたのです。
「もう一人の博士」はとうとう救い主に巡り会えたのでした。
*讃美歌121番「まぶねのなかに」を賛美する。
おわり
アルタバンの生き方がイエス様の生涯と重なったので、讃美歌「まぶねのなかに」を賛美しました。この脚本は、「もう一人の博士」V.ダイク著 岡田 尚訳 佐藤 努画(新教出版社)を参考に書きました。
昨日は教会学校小学科のクリスマス会でした。子どもたちが一生懸命演じている姿に心打たれ、救い主誕生の喜びにあふれました。

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