昨日はJCP(日本クリスチャン・ペンクラブ)の例会に出席し、たくさんの恵みをいただきました。今日の日曜礼拝にも祝福がありました。
昨日と今日のことは後日書かせていただきます。まずは、先日の童話の続きを……。
(四)
ノアが部屋を出ていってまもなくザーザーと雨音が聞こえてきました。雨音はバラバラとたくさんの小石がぶつかっているように激しくなりました。音は何日も何日も続きました。
やがて舟がゆっくり傾き、シーソーのようにゆれました。相変わらず部屋は灰色の世界です。
ヨエルはじまんのつばさを広げてみますが、どんなに目をこらしても灰色にしかみえません。ヨエルはだんだん不安になってきました。
「どうかしたの? おまえさん」
元気のないヨエルのことをレアが心配してたずねます。
「おれさまのはねは、灰色になってしまったんだろうか……」
ヨエルはくちばしで胸のはねをつつきました。
「クックックッ……」
レアは大笑いしたいのをこらえて、
「暗いからそうみえるだけよ。わたしのはねだって灰色にみえるでしょ。雨がやんで窓があいたら、きれいな色がみえるわよ」
「そうかなあ……だと、いいんだけど……」
レアの言葉にヨエルは少し安心しました。
(五)
雨音は今日も続いています。舟はゆれるたびにギシギシ音をたてます。外はどうなっているのでしょう。
このまま薄暗い部屋に閉じ込められたままなのでしょうか。最近では、鳥たちはおしゃべりする元気もなくなっていました。
「ああ……この世界の色が全部なくなっちゃったみたいだ」
ヨエルがため息をつきました。
「神さまが色を滅ぼしてしまったのかもしれないな」
ダイゴがいうと、ポポがグルルーグルルーとのどを鳴らしました。
「色が滅びるなんて、そんなこと、あってたまるか!」
ヨエルは壁にくちばしをつきたてました。
「色が滅びたら、みんながぼくたちみたいに灰色の鳥になるんだな」
ポポが明るい声でいうと、ヨエルの首のあたりの毛が逆立ちました。
「そんな! ポポみたいにきたならしい灰色になったらおしまいだ」
ヨエルは叫びました。
「おしまいって、どういうこと?」
ポポが首をかしげました。
「灰色の鳥なんて、何の価値もありゃしない。灰色になるぐらいなら死んだ方がましってことさ」
「何の価値もない……死んだ方がまし……」
ポポはポツリというと、がっくり頭をたれて黙りこんでしまいました。
「ヨエル、いいすぎよ! ポポ、傷ついちゃったわよ」
レアがたしなめました。ヨエルははっとしました。ひどいことをいってしまったと心がズキズキ痛みました。じまんのきれいなはねの色がみえないのでイライラしていました。そのイライラをポポにぶつけてしまったのです。
(ぼくは、なんていやな鳥なんだろう……)ヨエルは落ちこみました。
(六)
いつしか雨音が聞こえなくなり、静けさがもどってきました。
「雨がやんだんだ。もうすぐ外に出られるぞ!」
ダイゴが叫ぶと、
「やったー、チュンチュン」
「やったー、ピチピチ」
しばらくうたうことを忘れていた鳥たちが、いっせいにうたいだしました。インコとハト以外は、どの鳥もうれしそうにさえずっています。
インコ夫婦は右端の止まり木でじっとうつむき、ハト夫婦は左端の止まり木にとまって、やはりうつむいています。
ポポの奥さんのルルが何かを決心したようにヨエルのところにとんできました。
「どうしてくれるの。うちのだんなさんは、ヨエルの言葉に傷ついて、三日もえさを食べてないのよ。このままだと死んでしまうわ。わたし、まだ卵も産んでないのに……死ぬってことは、ハトがこの世界からいなくなるってことなのよ」
「ごめん。おれ、本当に悪かったと思っている。ポポにあやまるよ」
ヨエルがポポの方へいこうとすると、ポポが頭を横にふって、
「こないでくれ。かえって具合が悪くなる」
と弱々しい声でいいました。
ポポの奥さんはヨエルをにらみつけてもどっていきました。
「どうしよう。おれのせいで……」
ヨエルは心から悪かったと思いました。
でも、口から出してしまった言葉をもとにもどすことはできません。あやまってもゆるされないならどうしたらいいのでしょう……。
「おれはポポの心を傷つけてしまいました。どうかポポを元気にして下さい。ポポの命を助けて下さい。おれのはねが灰色になってもかまいませんから」
ヨエルは祈りました。
つづく
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昨日と今日のことは後日書かせていただきます。まずは、先日の童話の続きを……。
(四)
ノアが部屋を出ていってまもなくザーザーと雨音が聞こえてきました。雨音はバラバラとたくさんの小石がぶつかっているように激しくなりました。音は何日も何日も続きました。
やがて舟がゆっくり傾き、シーソーのようにゆれました。相変わらず部屋は灰色の世界です。
ヨエルはじまんのつばさを広げてみますが、どんなに目をこらしても灰色にしかみえません。ヨエルはだんだん不安になってきました。
「どうかしたの? おまえさん」
元気のないヨエルのことをレアが心配してたずねます。
「おれさまのはねは、灰色になってしまったんだろうか……」
ヨエルはくちばしで胸のはねをつつきました。
「クックックッ……」
レアは大笑いしたいのをこらえて、
「暗いからそうみえるだけよ。わたしのはねだって灰色にみえるでしょ。雨がやんで窓があいたら、きれいな色がみえるわよ」
「そうかなあ……だと、いいんだけど……」
レアの言葉にヨエルは少し安心しました。
(五)
雨音は今日も続いています。舟はゆれるたびにギシギシ音をたてます。外はどうなっているのでしょう。
このまま薄暗い部屋に閉じ込められたままなのでしょうか。最近では、鳥たちはおしゃべりする元気もなくなっていました。
「ああ……この世界の色が全部なくなっちゃったみたいだ」
ヨエルがため息をつきました。
「神さまが色を滅ぼしてしまったのかもしれないな」
ダイゴがいうと、ポポがグルルーグルルーとのどを鳴らしました。
「色が滅びるなんて、そんなこと、あってたまるか!」
ヨエルは壁にくちばしをつきたてました。
「色が滅びたら、みんながぼくたちみたいに灰色の鳥になるんだな」
ポポが明るい声でいうと、ヨエルの首のあたりの毛が逆立ちました。
「そんな! ポポみたいにきたならしい灰色になったらおしまいだ」
ヨエルは叫びました。
「おしまいって、どういうこと?」
ポポが首をかしげました。
「灰色の鳥なんて、何の価値もありゃしない。灰色になるぐらいなら死んだ方がましってことさ」
「何の価値もない……死んだ方がまし……」
ポポはポツリというと、がっくり頭をたれて黙りこんでしまいました。
「ヨエル、いいすぎよ! ポポ、傷ついちゃったわよ」
レアがたしなめました。ヨエルははっとしました。ひどいことをいってしまったと心がズキズキ痛みました。じまんのきれいなはねの色がみえないのでイライラしていました。そのイライラをポポにぶつけてしまったのです。
(ぼくは、なんていやな鳥なんだろう……)ヨエルは落ちこみました。
(六)
いつしか雨音が聞こえなくなり、静けさがもどってきました。
「雨がやんだんだ。もうすぐ外に出られるぞ!」
ダイゴが叫ぶと、
「やったー、チュンチュン」
「やったー、ピチピチ」
しばらくうたうことを忘れていた鳥たちが、いっせいにうたいだしました。インコとハト以外は、どの鳥もうれしそうにさえずっています。
インコ夫婦は右端の止まり木でじっとうつむき、ハト夫婦は左端の止まり木にとまって、やはりうつむいています。
ポポの奥さんのルルが何かを決心したようにヨエルのところにとんできました。
「どうしてくれるの。うちのだんなさんは、ヨエルの言葉に傷ついて、三日もえさを食べてないのよ。このままだと死んでしまうわ。わたし、まだ卵も産んでないのに……死ぬってことは、ハトがこの世界からいなくなるってことなのよ」
「ごめん。おれ、本当に悪かったと思っている。ポポにあやまるよ」
ヨエルがポポの方へいこうとすると、ポポが頭を横にふって、
「こないでくれ。かえって具合が悪くなる」
と弱々しい声でいいました。
ポポの奥さんはヨエルをにらみつけてもどっていきました。
「どうしよう。おれのせいで……」
ヨエルは心から悪かったと思いました。
でも、口から出してしまった言葉をもとにもどすことはできません。あやまってもゆるされないならどうしたらいいのでしょう……。
「おれはポポの心を傷つけてしまいました。どうかポポを元気にして下さい。ポポの命を助けて下さい。おれのはねが灰色になってもかまいませんから」
ヨエルは祈りました。
つづく
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