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生かされて

乳癌闘病記、エッセイ、詩、童話、小説を通して生かされている喜びを綴っていきます。 by土筆文香(つくしふみか)

母の気持ちに寄り添って

2006-11-09 19:00:41 | 家族

父の葬儀がすんで土浦に戻ってから初めて実家に帰りました。約2週間ぶりですが、その間に息子の結婚式があったので久しぶりという感じがします。
チャイムを押すと、母の後ろから父が来てくれるような気がしました。父は具合の悪いときでもわたしが行くと必ず玄関まで出迎えてくれ、「よく来たなあ」と言ってくれました。


父のいない家はやけに広く感じられ、父の使っていた物や座っていた椅子を見るたびに涙が出そうになります。ここに一人で暮らしている母は、わたしの何倍も悲しいのだと思うと、明るくふるまって母を少しでも元気づけたいと思いました。
今回は、父の物の片づけをするために実家に帰ったのですが、父の部屋には入らず、なぜか母とふたりで台所やリビングの掃除ばかりしていました。


「お父さんの物、整理しなくちゃね」
と母が言いましたが、父の物を見るのがつらくて何から手をつけたらいいかわかりません。母が父の腕時計を見て、
「どうして動いているのかしら?」
とぽつりと言いました。
当たり前のことですが、お父さんは死んでしまったのに、時計はなぜ動いているのだろうと思った母の気持ちが痛いほどわかって、
「整理するのは、もう少し後にしよう。急がなくていいんじゃない」
といって、代わりに台所を片づけたのです。


父はとてもきれい好きで、元気なときは毎日食器洗いをし、その後1時間くらいかけてあちこちを磨いていました。なので台所はいつもぴかぴかでした。
このところ、すっかり台所が汚れてしまったので、母と一生懸命磨きました。
「お父さん、きっと喜ぶよ」
と言いながら。


知り合いの人が訪れて、
「少しは落ち着かれましたか?」
と問われ、
「はい」
と母はにこやかに答えていましたが、まだまだ傷は癒されていません。でも神さまによって少しずつ癒されていっています。

リビングのカレンダーはまだ10月のままでした。しばらくは、このままにしておきましょう。
「お母さんを頼む」と何度も父に言われたことを思い出しています。慰めの言葉は何も言えないけれど、ときどき実家に帰って母の気持ちに寄り添いたいです。

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