いーなごや極楽日記

極楽(名古屋市名東区)に住みながら、当分悟りの開けそうにない一家の毎日を綴ります。
専門である病理学の啓蒙活動も。

世界一旨い日本酒

2016年08月01日 | 極楽日記(読書、各種鑑賞)

 日本酒の低迷期というのは大手メーカーが「特級酒」と称してアルコール添加、調味料と糖分添加の悪酔い酒を売っていた頃のことで、1990年の酒税法改正からは復権したのかと思っていましたが、問題はいろいろあったようです。

 地酒ブームで規模を拡大して、酒造メーカーになってしまった酒蔵が品質を落とし、端麗辛口ブームで「水みたい」な活性炭過剰使用のコクのない酒が店頭にのさばり、また吟醸酒ブーム、冷酒ブームで過度なエステル香ばかりで旨くない吟醸酒が流通量を増やし、また量を飲めない吟醸酒のために販売総量が低迷している、という指摘はかなり実感としてもっともだと思いました。ただ著者は醸造の専門家ではないため、「しっかり醗酵させた酒」の定義が曖昧で説得力がないですね。

 去年の秋から冬にふるさと納税で伊万里の酒をいくつか試す機会があったのですが、食事に合わせやすくて、つい量を飲んでしまうのは吟醸でない純米酒の方でした。もちろん酒の楽しみ方にいろいろあっていいのですが、味わいが貧弱だったり、あるいは調味したような不自然で痩せた味なのに、エステル香だけ妙に主張が強い、無理した感じのある吟醸酒は好きになれません。かと言って、吟醸香に見合うだけのしっかりした味わいのある吟醸酒となると、かなり高価だと思います。とても気軽に普段飲みにできないですよね。これはワインにおける発泡酒の立場にも似ています。例えば白ワインとしてもおいしい発泡酒というのは、かなり高価です。それなら無理して発泡酒にしなくても、もっと楽しめる白ワインがあるでしょう。だから私は家飲み用にシャンパンなどは買いません。どうしても旨いシャンパンが欲しいなと思うときは、クリュッグとかの高価な有名銘柄ではなく、アルフレッド・グラシアンなどの丁寧に作られた小規模メーカーの品を選びます。

 日本酒をこれから楽しみたいという人が、吟醸酒から入るのは私も賛成できません。できるだけ飲み飽きのしない純米酒を、できれば1升瓶が空になるまでちびちび楽しんでみると、正当な評価ができると思います。冷酒では味がわからないということで、著者は燗酒と燗冷ましを推奨しているようです。かつて燗酒、特に熱燗の割合が今より高かったのは、質の低い清酒が出回った時代に悪酔いしない知恵でもあったと思いますが、それに触れていないのはおかしいですね。昔は「樽酒」と称してフーゼル油などの成分で杉樽の成分を付けた酒が出回っていて、冷やで続けて飲むとちょっと鼻につきました。悪酔いもしやすかったような印象があって、それで熱燗をつけてわざわざ香りを飛ばして飲んでいたわけです。それに対して「冷酒が旨い」吟醸酒が流行したのは、言ってみれば反動なので無理からぬことですね。昔から「酒は人肌」で、温燗ぐらいが一番味がよくわかると言われており、いい酒を熱燗にしないのは常識でした。

 それにしても本で燗冷ましを推奨する人は初めてだな。アルコール分が飛ぶので、特に年輩の方には体に優しい飲み方じゃないでしょうか。
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