いーなごや極楽日記

極楽(名古屋市名東区)に住みながら、当分悟りの開けそうにない一家の毎日を綴ります。
専門である病理学の啓蒙活動も。

ビール屋が遠い2杯目

2005年09月09日 | 極楽日記
 どうもビールの話は受けが良かったみたいなので、調子に乗って2杯目といきましょう。「このビールが一番」と決めて飲むのもいいですが、本当に楽しいのは飲み比べ。ピルスナーとか、エールとか、ベルギーの修道院ビールとかを集めて、仲間と騒ぎながらああだこうだと杯を重ねる。

 実は大学の病理学教室に在籍している時、いつの間にか予定表に書き込まれる「クレブスパーティー」の文字が。クレブスはドイツ語で癌。今はあまり使いませんが、年配の医者はドイツ語で勉強していますから、癌のことを日頃からクレブスと呼んでいる人はまだいます。すると、癌の研究をしている教室だから、クレブスパーティーとはつまり内輪の研究会か何かかな?と新人が考えればこちらの思う壺。

 実は宅配で蟹を注文して、蟹とビール又はワインで日頃の仕事の垢を落としましょう、という教室の飲み会だったんですね。ちなみに命名者は当時の宴会担当だった極楽親父でございます。ドイツ語の「クレブス」は蟹なんですが、癌の広がる様子が、蟹が手足を広げる感じに似ていることから、癌のこともクレブスと呼ぶようになってしまったらしいです。

 ともかく、こうして多種のビールを飲み比べしてみると、たかが大麦とホップと水だけで多彩な味わいができることに驚きます。「酒はその土地の食べ物に合わせて造られるもの」とは昔から言われていることで、土地が違えば食べ物も人も違い、酒もそれぞれ違います。違いこそあれ、それぞれにおいしい酒を造ろうとした結果ですから、ひとつひとつの精進の精華を味わうことは本当に楽しい。

 こうして考えるとつまらないのは全国銘柄の大メーカーのビール。どれ飲んでも変わりばえがしないし、メーカー間の差も少ないから、並べて飲む楽しみがない。最近になって、少しは特徴をつけているようですが。

 腹が立つのは、日本のメーカーでも輸出用にはけっこういいビールを出していること。日本人の味覚は外国人に劣るものではありませんから、おいしいビールも造れる。しかし歪んだ税制と極端なコストダウンのため、国内ではいい製品が出せない。またビールは広告で飲ませるもの、という悪しき伝統にも引っ張られて、長い目で見て消費者を啓蒙して来なかった業界の責任もあります。

 飲み比べでキレのいいピルスナーばかり飲んでいると、いくら「ベックス」がおいしいとは言え、たまにはどろっとしたエールなども楽しみたくなる。こんな時、エールとしては癖が少なく飲みやすい「バス」なんかも人気がありました。ちょっとスモーキーな風味があって、特にタバコを吸う人には受けが良かったように思います。

 「バス」で物足りない人には、「知多繁」で手に入る最強のエール、「オールドニック」ですね。ドラキュラの絵がラベルに大きく描いてあって、飲む前から貫禄十分。とにかく濃くて重くて、ピルスナーしか飲んだことない人には「何じゃこりゃ!」って感じでしょうが、清濁併せ呑むような豪快な味わいは他にないもので、病み付きになるビールの筆頭です。本場のパブで飲める自家醸造のエールって、多分こんな感じなんでしょうね。

 この「オールドニック」にはみんな圧倒されるのですが、更に驚くのが、「またベックスにしてみよう」と戻った時。強烈なエールの後に飲んでも、ベックス君、全然負けてないんですよ。これは、単に咽ごしがいいだけではなく、豊かな風味と鮮烈なホップの効きがあってこそ。飲んでも飲んでも飽きない私のスタンダードです。
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1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
軽いと重い (雪ダル)
2005-09-18 09:11:18
>歪んだ税制と極端なコストダウンのため、国内ではいい製品が出せない。

>またビールは広告で飲ませるもの、という悪しき伝統にも引っ張られて



まったく、その通りと思います。

よくぞ、言ってくださいました/hakushu/}



大手メーカーの「軽い」と「薄い」、「重い」と「濃い」を混同していることに、がっかりしています。



>強烈なエールの後に飲んでも、ベックス君、全然負けてないんですよ。



薄くないから、負けないのでは、思いました
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