いーなごや極楽日記

極楽(名古屋市名東区)に住みながら、当分悟りの開けそうにない一家の毎日を綴ります。
専門である病理学の啓蒙活動も。

新型フィット

2007年11月15日 | 自動車
 新しいホンダ フィットの評判がいいようなので、近所のディーラーでちょっと見て来ました。全長3,900mm、幅1,695mmという拡大したサイズはベーシックカーとしてどうかとは思うのですが、ここまで大きくなれば上級車からのダウンサイジング需要が掴めるでしょう。車格に拘らない人なら、安くて広いのは歓迎すべきことです。


 久々にホンダのクルマに乗ってみますと、やはり視界が全方向に良好で気分がいいです。最近はトヨタも自社コースやサーキットでのテストを重視しているようですが、クローズドサーキットでいくら走り込んだところで、混雑した高速道路で頼りになる後方視界の良し悪しなどはわかりません。ホンダには昔から走りにうるさい顧客が付いているので、世界中の公道で使い勝手をテストされているようなもの。従って、この辺の仕様も問題ありません。

 元々効率のいいパッケージングで売り出したフィットですから、大きくなったボディの恩恵で室内は広いです。特に感心したのが後ろの席。前席は無理に右ハンドルにした輸入車でもなければ「狭い」クルマはありませんが、このクラスで後ろがゆったりして広いのは立派です。少なくとも余裕のないシビックの頭上空間よりは遥かにゆとりがあり、長く後ろまで延びたルーフのお陰で真夏の日差しも気にならないと思います。ルーフの高さも十分で、これならサンルーフを装着しても十分な広さがあるでしょう。

 空間が広いと、シートを小さくして誤魔化すようないんちきをしないで済むので、シートもなかなかしっかりしたものです。これだけ健全なパッケージングができていれば、昔のようにドイツの小型車を羨む必要はありません。新型フィットのサイズは、かつて「小型車の理想」と言われたゴルフIIやIIIとほぼ同じですが、エンジンの小型化や樹脂製ガソリンタンクの巧みな配置、高い車高などにより、それ以上の広さを稼ぎ出しているはずだからです。はっきり言って、私は大人4人乗りの室内でこれ以上広い必要を感じません。

 広い室内を実現した反面、荷室にある程度のしわ寄せがあるのは仕方ありませんね。それでもスペアタイヤの廃止により容量が427Lとはなかなかのもの。ちなみに極楽家のウィンダムは519Lと広大ですが、実はGPSのユニットが後付けしてあるのでかなり使い勝手が悪化しています。1台しかクルマを維持できないとしたら、フィットの荷室はもう少し欲しいと思います。

 クルマは乗ってなんぼ、なので購入予定がないにも関わらず試乗もしました。いつも走っている極楽周辺なので評価しやすいです。まず印象的だったのは、アイドリングが極めて静かなこと。エンジンマウントを工夫したということなのですが、これは完全に上級車並です。ただ、そのためにマウントをチューンしたのなら、ワインディングではエンジンが暴れやすいのではないか、と少し心配になります。それからブレーキの感触がかなり頼りない、いわゆるスポンジーですね。

 オートギャラリーの試乗レポートでも同じことが指摘されているので、やっぱり「走り」を気にする人には無視できないポイントだと思います。オートギャラリーは自動車ポータルとしては大手と言えませんが、青池さんのレポートは私が訊ねてみたいポイントをきちんとカバーしていて、とても参考になります。クルマの試乗レポートや「インプレッション」はネットに氾濫していますが、運転が好きで、公道でも安全にしかもクルマの能力を引き出して奥の深いドライビングを楽しみたい、という人なら青池武さんのレポートは見逃せないでしょう。ちなみに私が他に頼りにしている自動車評論家は、国沢光宏さん、笹目二郎さんなどです。

 さてフィットの1300です。アイドリングはとても静かですが、走り出すとさすがにガーッという音と振動が路面から伝わってきて、安いクルマであることを思い出させてくれます。トヨタに慣れた人なら「乗り心地が硬い」と感じるかも知れません。直進安定性は問題なし。加速時にスロットルの妙な癖や重心の過剰な移動はなく、扱いやすいです。この挙動が素直な方が好きならホンダ車になるし、どーんと「出足のいい」演出が欲しければトヨタ車が適しています。実際に速いわけじゃなくて、少しペダルを踏んだだけでスロットルが開くようにしてあるだけですけどね。

 視界がいいし、ハンドリングに癖がないので狙ったラインに乗せやすく、いい意味で考えずに乗れますね。これだけハンドリングが正確なのに、ヴェントで気になったトルクステアがないのもいいことです。まあ、パワーがないからかも知れませんが、パワーを生かせるハンドリングだと思います。

 こんなローエンドの乗用車でも、FFの癖なんて全然ないんですね。足回りも適切だし、電動パワステが完成の域に達したのでしょう。たいしたものです。「ホンダのラック&ピニオン式ステアリングは現行ステップワゴン以来大幅に改良され、リサーキュレイティングボール式に遜色ない滑らかさを実現した」という青池さんの意見に賛成します。ステップワゴンに試乗した時、特にクイックではないけどとても気持ちのいいステアリングだと思いましたが、青池さんも同じように評価していたのですね。

 あとはホンダが上級車に採用しているマグネシウムのステアリングホイールなら最高。現状でも優秀です。これに比べるとウィンダムのステアリングはコラムにゴムが絡まっているようで、ちっとも気持ち良さがありません。出来の悪いカメラの液晶ファインダーみたいで、フォーカスが合った時の「すっ」ともやもやが晴れるような、無駄な抵抗がなくなるような快感がないのです。いつもは大きなウィンダムでよたよた回っているコーナーを、フィットで意図する通りに曲がれると、運転が巧くなった感じがして実にいい気持ちです。毎日乗るクルマだからこそ、運転が楽しくなければいけません。

 高速は試していませんが、これだけ姿勢がフラットでハンドリングが安定しておりかつ素直なら、きっと走りやすいでしょうね。前に乗っていたヴェントのように、「100m先さえ見ていれば、手首の感触だけで意図した通りにトレースしてくれる」ほどの安心感があるでしょうか。ヴェントはもちろん古いドイツの大衆車ですが、高速での走りやすさは今でも私のスタンダードです。できれば新型フィットで高速を走ってみたいものです。パワーはわざわざ燃費に不利なことを承知で4バルブを採用してきたので、1300でも十分だと思います。旅行でレンタカーを借りる機会があれば、フィットを探してみましょう。

 総合すると、とてもいいクルマです。しかも安い。もう少し荷物が載れば、ウィンダムの次はこれでもいいと思ったぐらいです。しかしフィットでこれだけやってしまうと、シビックもアコードも売れないでしょうね。かつてフォルクスワーゲンはゴルフの開発と生産、販売に注力して、ゴルフが売れなくなれば倒産すると言われていました。それだけに当時のゴルフはライバルを唸らせるだけの実用性と用途の広さを持ち、完成度は市場の水準を越えていました。今のホンダにも2L以下のセダンはすべてフィットと派生車種で行ける、と決めたような気合を感じました。これは売れると思います。
コメント (1)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 芋掘り | トップ | ダビング10は破棄を »
最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
国沢親方 (ホラフキ)
2008-01-02 06:50:43
この人の評論…昔は好きだったんだが



最近はもっぱらネタ評論家として好きです



正直国沢親方は、自信のHPの日記でメーカーの接待受けたことなどポロリと漏らしたりしてるので

ネタとしてしか楽しめなくなりました



エビカニ=エビカニ料理接待から親方の通称または接待漬けをあらわす

などありがたくないスラングも





親方は評論はともかく人間性はみみっちい…

技術的なま違いの指摘や批判するやからは黄昏野郎(親方いわく匿名でのネットでの批判は便所の落書きから…ウンコ野郎の親方的表現)呼ばわりしてるし



まあ、いまは私も黄昏野郎なわけですが(笑

しかし、技術的な間違いは訂正してほしい
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

自動車」カテゴリの最新記事