いーなごや極楽日記

極楽(名古屋市名東区)に住みながら、当分悟りの開けそうにない一家の毎日を綴ります。
専門である病理学の啓蒙活動も。

日米寄付考

2007年06月22日 | 極楽日記

 名古屋駅構内にあるリンナイの看板です。全国規模の家庭用ガス器具メーカーと言えばリンナイ、パロマ、ノーリツ(ハーマン)の3社だと思いますが、リンナイとパロマは名古屋に本社があります。なぜ名古屋でこんなにガス器具の生産が盛んなのかはわかりません。

 さて先日、そのリンナイの内藤会長(林と内藤で林内、というのが社名の由来だそうです)が出身大学に5億円の私財を寄付したそうです。これだけの大物卒業生になると、大学のほうから寄付のお願いがあるみたいですね。なかなか豪快な話です。

 さて、このような企業人の寄付行為がどれだけ世のためになるのか、アメリカでは世界一の大富豪、マイクロソフト(以後MS)の創立者ビル・ゲイツさんの慈善事業への巨額な寄付をめぐって論争があるようです。ハーバード大学のロバート・バロという人はこのような寄付に批判的であり、貧困をなくすには市場経済の導入による経済成長こそ効果的だと説いています。中国で貧困が解消されてきたのは市場経済のため、インドで貧困が解消されているのは市場経済のため、という説明です。

 従って、今なお貧困に苦しむ人を助けるためには、慈善事業よりも市場経済を整備することである、とバロさんは簡単に結論しています。ゲイツさんは慈善事業よりもソフトウェアビジネスで社会に貢献すればいいと考えているようです。

 一方でカリフォルニア大学バークレー校のブラッド・デログさんはゲイツさんがソフトウェアビジネスで社会を豊かにしてきたというバロさんの説に懐疑的で、「MSがなければ他の会社からソフトウェアを買うだけのこと」と批判しています。MSはソフトウェアの改革者ではなく独占者として利益を享受してきただけ、という昔からのパソコンユーザーにはお馴染みの解釈を提出しています。ソフトウェアビジネスを通じたMSの社会への貢献はあったと思うが、それがビル・ゲイツのお陰だと考えるのは単純すぎる、とは辛辣です。ゲイツさんがビジネスを続けたところで、MSから新しいものが出て来るかどうかは疑問だと思っているのでしょう。

 こんな論争になると言うことは、つまりは政策を左右するようなトップクラスの経済学者まで巻き込むほど巨額な寄付ということなんですね。ビル・ゲイツとかウォーレン・バフェットのクラスになると、寄付と言っても日本円で数兆円。日本の企業家とは稼ぎが違うとは言え、途方もない金額です。これなら企業家の寄付が政治、経済の話題になるのも当然です。

 それでも社会面で慎ましく紹介された内藤さんの寄付の価値がなくなるわけではありませんね。私は単なる浮気者の消費者ですが、他社製品との比較で迷った時は、内藤さんの寄付の話を思い出すように務めましょう。そう言えば内藤さんは、学部は違いますが私の大学の遠い先輩にも当たりますので。
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