さて2日目です。名古屋城から流れる堀川も、この辺では川幅が広くなりなかなかの景色。ちょっと覗いて見るだけのオーディオフェスタでしたが、望外に面白かったのでもう1日お邪魔することにしました。関係者の皆様ありがとうございました。
まずはソニーから。1本60万円也(本体)のスピーカー、SS-AR2を中心としたデモです。最近の流行で幅が狭く、この価格帯ながらウーファーが165mmしかありません。正確な定位や設置のしやすさを考えた構成でしょうが、このスピーカーの音像は私にはよくわからなくて、何を聴かせてもらっても安心できるステレオイメージが描けないままでした。多数の受賞を誇るソニーの自信作ですが、残念ながら今のところは縁がないようです。
アンプに使うボリュームの違いで音が変わる実験は面白かったです。ボリュームのハウジングやめっき、重さが音に影響するという考え方は、故長岡鉄男さんがよく書いていましたが、実は半信半疑。本当に一般視聴者にわかるものだろうかと思っていました。こうして比較して頂くと確かにわかります。一番右の小さいのが普通(よりやや大きい)のヘッドフォンアンプのボリューム、その左が超高級機用の金メッキしたスペシャルボリューム、銀色のは軽量化のためアルミハウジングで作ったもの。一番左が母体になったアルプス電気製の真鍮製高級ボリューム。順に聴いていくと、金メッキのボリュームだけが生々しいヴォーカルを再生できていることがわかります。伊達にコスト掛けてるわけじゃないんですね。
企業規模の大きいソニーの場合、必要なら半導体素子まで新設計してしまうはずで、部品レベルのノウハウや開発技術、生産技術では相変わらず最先端なのでしょう。このようなボリュームの違いまで再現してくれるSS-AR2も、電気信号を音声信号に変換する機器としては極めて優秀なはずなのですが、聴いていると、どうしても粗探しをするような聴き方になってしまい音楽に没入できないし、そのような解析的な聴き方をしていると、持病の耳鳴りが余計に気になってくるのも事実。モニター的な用途には適しているのでしょうが、楽しみのための音楽という点ではどうなのかなと思いました。
次は日本の誇るオーディオ専業メーカーのアキュフェーズ。巨大企業のソニーと違って新しい素子から開発してくることはできませんが、世界からパーツを吟味して、職人技でチューニングしていく製品の完成度には定評があり、これを聴かずにフェスタに来たとは言えません。この写っている分だけで300kg、1000万円以上になるでしょうか。海外の一部メーカーほど極端ではないにしても、筐体や電源に余裕を持たせ、選びぬいた素子をパラレルに駆動するといった正攻法は、どうしても重量増加と価格の高騰を招きます。
機材はこんな感じで表示されます。
今回の主役は純A級パワーアンプのA-75。比較としてAB級のP-4500が用意されていました。このP-4500にしても安心して使えるアンプで、コープランド「市民のためのファンファーレ」は緻密で重量感があり、岩崎宏美「時の過ぎゆくままに」は十分に艶かしく魅力的です。これがA-75になると、私ごときにはよくわからないのですが、しいて言えば潤いが加わるような感じでしょうか。そこまでハイレベルな違いになると正直ついていけません。「純A級だからこういう音にしようということではなく、純A級を選んだ時点である程度傾向が決まる」との説明であり、必ずしも純A級が上というよりは、好みで選んで頂きたいとのことですので、まあ私的なチョイスはP-4500ですね。どうせ買えませんけど。
アンプの優秀さもさることながら、試聴用に使われたこのイル・クレモネーゼに惹かれますね。アンプの微妙な違いを描出する解像力があるにもかかわらず、モニター的な無機的な音とは無縁の艶のある音質には聞き惚れます。ただし価格はペアで550万円の超弩級。アキュフェーズを買える人にはお奨め。
最後はDENONのブースで新製品のXシリーズを試聴。これも、同社のアンプが優秀なことは認めますが、試聴に使われていたB&W 802D3がやはり凄いな、と思います。モニターには違いないんですが、音質は魅力的だし、音像はぴたりと決まって揺るがないし、安心して何でも聴ける感じがします。イル・クレモネーゼよりは安いとは言え、ペアで340万円ではどうしようもないですが。