いーなごや極楽日記

極楽(名古屋市名東区)に住みながら、当分悟りの開けそうにない一家の毎日を綴ります。
専門である病理学の啓蒙活動も。

真実のインパール

2021年08月02日 | 極楽日記(読書、各種鑑賞)

極楽息子(小)の夏休みの宿題用に買い入れた資料です。主計士官の立場から書いた戦記なので、直接の戦闘と言うよりは全体的な戦況とか補給の状況、食料調達の苦心などにページが割かれています。「ウ号作戦」つまりインパール作戦が当初から補給無視の無謀な作戦であったことは、作者にとっては見習士官として赴任して、作戦概要を初めて聞かされた時から明白でした。インパールを占領するという現実的な目標があったと言うよりは、陽動作戦として英軍を引き付けておいて、最重要戦場である太平洋での戦略を有利にする意味があったという記述もありますが、さすがにそれでは説明できません。わざわざ無謀な作戦で多数の死傷者を出すほどの理由にならないからです。

いざコヒマまで乗り込んでみると、数機の山砲しかない第31師団に対して、英軍は多数の重火器を擁しており、「一日にこちらが40発ほど砲撃するのに対して、敵軍は4万発を放ち、しかも狙いが正確になってくる」と比較にならない火力であり、その上多数の爆撃機と戦車を投入してきます。中国戦線で功を奏した(と言っても犠牲の多さを無視してだが)肉弾戦の突撃に対しても、多数の機関銃で簡単に制圧される。日本の計画は敵に筒抜けであり、飛行機の援護がないことも補給線が脆弱であることも知られていて、後方のビルマ縦貫鉄道付近に空挺部隊を送り込まれ、完全に補給線を断ち切られます。

多くの文献や報道が示す通り、インパール作戦は実行に移されたことが致命的な誤りでした。旧陸軍の意思決定に構造的な欠陥があったということは、きちんと検証されるべきだと思います。

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