駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

ジャンプの季節

2017年11月25日 | 診療

     

 今の時期になると師走には受診したくないできないという患者さんが増え、40日以上の長期処方が増えてしまう。複数の疾患を抱える高齢者は月に一回診たいのだが連れてくる人の都合もあるし、自覚症状の乏しい患者さんの中には比較的重症でも長期処方を希望される人が居る。

 自覚症状が無いあるいは病識に乏しい患者さんを月に一度診るのは時に難しい。特に最近総合病院が60日以上という殆ど無責任なと言いたくなる長期処方をするようになったため、医院でも長期処方を所望される患者さんが出てきている。逆に中には病院では山のように薬を呉れると戸惑っている患者さんも居られる。

 確かに病気が安定し患者さんが自己管理が出来る場合には長期処方も妥当だと思うが、それでも60日程度までだと思う。勿論、てんかん、慢性甲状腺疾患や脂質異常症など特に安定している疾患では患者さんの理解が良好であれば60日以上の処方も可能だろう。

 どの程度の頻度での受診が適当かは議論のあるところのはずだが、衆知を集めた議論は聞かない。というのは純粋に医学的な理由以外の要素が絡んでいるからだろう。有体に言えば通院しやすさと経済的な理由がある。総合病院では三時間掛かるのは常識で、半日潰れるというと語弊があるが半日が費やされてしまう。しかも万札で大してお釣りが返ってこない。そうした所に月に一回通院するのはご免こうむりたいのは殆どの人の気持ちだろう。厚労省としても通院すれば必ず少なからぬ費用が発生するので、お安くと言えば語弊があるが適当な費用で診療できるように、長期処方を認めた節がある。

 そこへ行くと医院では長くても一時間大抵は三十分ほどでしかも病院ほどには費用が掛からないので、月一回はさほどの負担ではないだろうと推測する。

 そうした診療形態の弊害というか不合理を解消するために総合病院と医院との役割分担(病診連携)が進み、重症難病は病院で慢性安定疾患は医院で診るようになってきている。重症難病でも普段は医院で診て年に一二回総合病院で診てもらう診療形態も増えている。

 誠に結構なことだが、医院の簡単な問診と血圧と体重を測定する診療を薬を呉れるだけだと勘違いされる患者さんが時々居られ、何とかして長期処方にして貰おうとされるのには閉口する。当院は病気と患者さんを鑑みて可能な範囲で長期、42日処方50日処方60日処方をしており、病気を脇に置いて単に自分の都合だけで、連休を飛び越えるためにやむなく長くした処方をこの前と同じにと言い張らないでいただきたい。税理士が先生の所は一か月の平均受診回数が1.2以下ですねと驚くほど低いので、そうした側面からもこれ以上の長期投与はご免こうむらさせていただこうと考えているが

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リベラルさまざま

2017年11月24日 | 小考

 昨日は比較的暖かく、有難い勤労感謝の日だった。今朝はやや寒いがそれでも青空が見え気持ちの良い天気になりそうだ。11月も20日を過ぎるとどことなく忙しない感じがしてつい速足になってしまう。急ぎ足になると、ふと医者は走ってはいけないと教えてくれたT先生を思いだす。息が切れると冷静な判断ができなくなるからだ。確かにその通りなのだが、どの程度守れただろうか。

 この頃リベラルとは何かという問いかけを目にする。立憲民主の面々を頭に置いた批判的な論調のものが大半で、魂胆が透けて見える皮相にとどまるものが多い。

 政治学などを学んだことはないので、私にも深い議論はできないが、医者が得意のトリアスを上げれば自由寛容公平の精神ということになる。公平というよりはフェアネスの方が適当に思うが、日本語にしてみた。リベラルというのは精神と方法手法のことを意味していると思う。当然、何を頓珍漢なという学問的な批判やリベラル嫌いな人からは格好つけるなという批判はあると思うが、個人的にはそういう感覚がしている。

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隠れている好景気

2017年11月23日 | 世の中

    

 トンボ帰りではあるが、女房の好きな百万都市に出かけてきた。大きなデパートがいくつもある都会に出ると、ひょっとして景気は悪くないのではと感じてしまう。

 しばしば格差社会という言葉が使われる(格差が拡大して遺憾という意味合いで使われることが多い)。本当に日本の格差が大きいものかどうか疑わしいが、同質志向で平均回帰の圧力が掛かる日本では、現在程度の格差も大きく感じられるのだろう。まして拡大傾向があるので一層問題になると思われる。

 格差は個人間だけでなく地域間でも大きいのではと肌で感じた。自分には理解できないがどうしてブランド製品はびっくりするほど高いのだろう。並の十倍はする。しかもわざわざブランド名が入っている。私はブランド名の入った持ち物や衣類を身に付ける勇気はない。

 そうした店がワンフロアーを占め、そこそこお客が居る世界があるとすれば、表に現れにくい経済的に恵まれた人達が居ると思われる。タックスヘイブンの文書が明らかにされ、やっぱりというか思わぬ人の名が取りざたされているが、秘書が秘書がと同じで私は知らない経理担当がと言い逃れるのは許せないなあ。ここは税務署を応援して税金逃れを厳しく取り締まって頂きたい。

 どうも全体の景気はさほど悪くないらしい。それは都会に出るとわかる。唯、アメリカほどではないが富と収入が偏在し、一般人に好景気感は無くて将来不安があるのが今の日本の現状のようだ。

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踊る言葉に踊らされる

2017年11月22日 | 町医者診言

             

 首相の遅ればせの所信表明演説は拍子抜けで短く、しかもさほど目新しくもなく迫力に欠けるものだった。おまけに読み飛ばしていたというから驚く、棚からぼた餅の圧勝で緊張感が欠けているのだろう。オバマは原稿を読まないで格調高い演説をする。私でさえ一時間くらいの講義は原稿なしで出来る。安倍首相は権力維持の策略と権力行使力には優れているが、教養が薄く肝心の政策行政説明脳力が不足しているように見えてしまう。

 尤も雰囲気だけという馬脚?を現した小池都知事とは違い、百年前の安倍的古き良き日本を取り戻そうという確固とした核心をお持ちなので、様々な脚色はあっても一貫性は感じられる。安倍首相をポピュリストとする評論家が居られるけれどもそれは見かけのことで、目指す方向にぶれはないと診る。

 最近はインターネットはほどほどにして新聞やBS放送から情報を得るようにしている。偉そうに響くと本意ではないが悪貨は良貨を駆逐するというか人は易きに付くというか、ネット情報には悪口情報が多くちょっとうんざりする。優れた人物立派な行為を貶せば、相対的な自分の位置が上がると感じられるのだろうか、あるいは人の不幸は蜜の味が露骨に現れているのだろうか、短絡反射的な批判が多い。

 世界は右傾化保守化していると言われる。恐らく根底に将来不安があるのだと思う。唯、守るだけでは危機は乗り越えられないので、保守化もほどほどにと蟷螂の斧は危惧している。以前にも書いたが右とか保守とか左とか革新(最近はリベラル?)の意味内容がはっきりしなくなっている。熟語の意味内容には変遷があると思われるが、変化を上手く説明できないのなら、いっそ別の表現や言葉をとさえ思う。熟慮はそれを支える言葉が曖昧に踊っていては出来ない。

 感じの良さ見かけの良さで目を引くことが重視されるのはコマーシャリズムの影響と思われるが、甘いものばかりだと歯も悪くなるし中性脂肪や血糖が上がり動脈硬化が進み脳梗塞、心筋梗塞、腎不全が忍び寄ってくる。

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そんなと思うことが起きてしまう

2017年11月21日 | 世の中

   

 今朝も晴天で風のない朝だった、北海道などは冬の寒さと報じられている。最近は高々数日で十度近く気温が上がり下がりする。今年は冬が早いですねと言うのは高齢の患者さんだが、どんなものか。もう暖かい日は来ないと思っていると、二十度を超す日が来るかもしれない。

 思いもよらぬことが起きるのが人生。こういう仕事をしていると、しばしば安穏を切り裂く悲報に、驚かされ心が痛む。病身の夫を献身的に介護する妻という組み合わせは多い。よくまあこの我儘男をと秘かに思ったりするのだが、健気に介護していた奥さんの方が、思いがず急逝されることがある。Kさんこの頃来ないなと思っていると、奥さんが急に亡くなり施設に送られたそうですなどという情報が入ってくる。

 献身的な介護の果てに夫を見送り、肩を落としていたのも数か月で、次第に溌剌と自分の人生を歩み始められる奥さんも多いのにと、この世の理不尽に何とも言えない気持ちになる。しかしまあ、誰しが四十年も生きれば世に潜む理不尽を思い知るものだ。

 昨日も不機嫌な夫を車椅子に乗せてNさんが受診された。看護師と二人掛かりで体重計まで移動させ、一瞬手を放す、58kg。長患いの脳梗塞にしては結構な体重だ。40kgあるかないかの奥さんに介護は重労働だろう。患者さんだけでなく奥さんの健康も祈ったことだ。

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