駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

境界値は難しい

2021年04月27日 | 診療
        
 
 スポーツの第一人者に必要なのは心技体とよく言われる。仕事で成功するには運根鈍と言う。確かにその通りだろうと思うのだが、この三つ揃って名人とか第一人者というのは三つに鍵があるような気がする。何に限らず何かを極めるにはいくつかの要素が必要だがそれを理解しやすく捉えるのに三つの要素視点が有用らしい。そうでなければこれ程三つは出てこないだろう。
 あんまり数字にこだわり特別な意味を込めると思い込みのように聞こえてしまうので控えるが、臨床医学でもしばしばトリアスとトライアドと言って三兆候を病気の診断の手がかりにしてきた。もっと基本的には問診、診察、検査が病気の診断の心技体に当たるもので、今も内科診断学で最初に教えられていると思う。
 半世紀前にそう叩き込まれた老医の私はそれを実践しているのだが、この頃は検査の比重が大きくなり鼎が傾き始めている。そのために時々戸惑う。つまり無症状で検査だけに異常が出ることがあるのだ。
 一つは所謂人間ドックもう一つは高血圧症や脂質異常症などで幅広く検査を行なった場合だ。勿論、無症状でも肥満があるとか大酒飲みであるとかの情報があったり異常値が大きければ、疾患を絞り込めるのだが、品行方正中肉中背で異常が境界値を僅かに超えた軽度のものである時はさてどうしたものかと考えこんでしまう。重大疾患の手がかりのこともあるし、放置してよい個体差誤差のこともあるからだ。
コメント
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