駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

採血検査の周辺

2021年04月22日 | 診療
            

 御年八十五歳のKさん一昨年夫君を亡くされ一人住まいだ。ちょっと遠方だがお元気で自力通院されている。高血圧と上手くコントロールされた糖尿病の他に慢性の肺疾患があり痩せておられる。やや神経質で、細かいことを気にされる傾向はあるが説明すれば納得され対応に困ることはない。どういうわけか血液検査がお好きで、そんなにしょっちゅう検査しなくてよいですよと申し上げるのだが、毎回血糖検査を希望される。糖尿病で毎月検査をするのは珍しいことではないがKさんはヘモグロビンA1cが6.0%前後で安定しており、隔月あるいは三ヶ月に一度でよい。そうお話しても「いいの採血は私の趣味だから」と言われる。
 血液検査は嫌がる患者さんも多く、中にはああでもないこうでもないと忌避する人も居る。どうしても年に一度はと看護師と二人がかりで手間暇掛けて説得しなければならない人が数名居られる。全部男だ。
 検査はある程度費用が掛かるので必要な項目を厳選して、負担が掛からないように配慮している。時々他院の検査結果を持ってきてくれるのを見ると整形外科などでも脂質から肝機能まで一式調べてあることが多い。検査というのは症状や診察から漏れる異常を拾い上げる意味もあるから、それが行き過ぎとは言えない。若い医師は総じて網羅的な検査をする。それが今の診療のやりかたなのだ。私は古手なのでどうも控えめになってしまう。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする