駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

臨床内科医学の難しさ

2017年02月11日 | 医療

    

 四十五年内科医をやって医学(内科)は難しいと断言できる。勿論、どんな仕事にもそれぞれの難しさはあると承知しているが、それはさておく。医学は細分化しており内科以外の科には別種の難しさがあると思うが、自分が歩んできた臨床内科学の難しさはその広さにあると思う。シャーロック・ホームズが言うように人間の知識の量にはある限界があり、例えば一立方メートルとすれば、臨床内科学はそれこそ何百坪の広さがあるので、できるだけ均等に漏れなく覆うように知識を配分しなければならない。しかもその広さは日に日に広がっているから大変なのだ。尤も、内容の理解そのものは左程難しいものではなく、量と幅広さが問題なのだ。

 そうした訳で毎日たかだか二三十分だが色々な医学情報を取り入れてきた。悔しいことにこの頃はその場ではわかっても翌日には大半を忘れるようになってしまった。それでも、少しずつ時間は減りつつあるが勉強している。経験は貴重で大切な財産ではあるが、決して過大評価してはならない。臨床医学は自分で考え出すものではないからだ。自分の経験を生かすことは出来ても、自己流に陥らないように常に幅広いそして科学的な根拠のある情報を取り入れて軌道修正を続ける必要がある。指導医や教授の居ない開業医はこれを肝に命じて置かねばならない。

 日暮れて道遠しは准高齢現役の実感ではある。

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