駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

今は昔、真実一路

2017年02月07日 | 小考

        

 インターネットの普及によって誰もが発信できるようになった。発信された信号は受信されて直に紛れもなく伝わると思うとどうそうではないらしい。信号が強くても上手く伝わらなかったり弱くても伝わったりするのだ。時には同じ内容のはずが異なって伝わってしまう。この辺りは微妙で送受信機に選択性があったり、受け取った信号を解釈する脳にバイアスがかかったりするらしい。

 post truthとかalternative truthとか言われ始めているが、それにはこうした現象も係わっていると思われる。この真実不明瞭現象には意図的に誘導されたものと、難解で理解を超えているために不消化あるいは間違って理解されたものの二つがあると思われる。

 どちらも問題ではあるが、取り敢えず要注意なのは意図的に誘導された場合で、これは注意すればある程度というかかなり見破ることが出来るはずだが、そうしたチェック機能が働かないことも多い。複雑難解な問題はそれが理解出来る人物に説明して貰えば、ある程度間違いを防ぐことが出来そうだが、自称専門家も多く心許ない。

 コマーシャルは巧妙というか洗練された手法でalternative truthを伝えている。コマーシャルだからと言いながら私も使ってみようかしらという気になってしまう。いや待て、まず友達に**が良いそうよと話して共感者否共犯者を作ろうとするトンデモおばさんも居る。

 医院に坐っていると薬品メーカーが入れ替わり立ち替わりやって来る。彼等は洗脳されていたり心得ていたりするから、自社製品が一番とあの手この手で推奨してくる。何十年のお付き合いでわかっているから眉に唾を付けて聞くようにしているが、それでもその気にさせられることはある。権威があるはずの有名教授でも、スポンサー付きの講演会ではスポンサー寄りのカーブを投げてくる。そのために学会発表ではCOI(利益相反)というものが表示されるようになった。尤もそうしたスライドを数秒間見ても、とても把握しきれない、まあ免罪符みたいなもので、果たしてどの程度バイアスがあるかまではわからない。

 真実一路などという言葉があったが、その前に今や真実いずこにと言うご時世になった。

コメント
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