当院の受け付け嬢は三十代が二人四十代が一人なのだが、三人ともおばさんの雰囲気はかけらもなく若い。高齢者の男性には、若さ溢れる女性に見えるようだ。
空いている午後など、七十代八十代の爺さんの中には十分も二十分も彼女達と話をしていかれる人が居る。若いだけの十代二十代と違い、それなりの受け答えが出来るから会話が楽しいらしい。Kさんなど、奥さんはもう十年も寝たきりで、食事を食べさせ下の世話もしている。話し相手と言えばたまに来る娘と猫ぐらいのもので、往診料を払いに来て話し込んで行く気持ちはよく分かる。そういう私も十年往診しているわけだが、往診などたかが七、八分だし、私にはたくさんの気晴らしがあるので比較の対象にもならない。
家庭で介護をされているのは九割が女性だが、十軒に一人くらい男性が奥さんや母親を介護している患家もある。男性の場合は極端で、やる人は几帳面でしっかりやられるのだが、やらない人は全然駄目で、他人任せになってしまう。女性の場合は八割の方がきちんとやられるが、時々もう一寸きちんとやって欲しいと思う人も居る。旦那はあんまり愛されていないんだと密かにも思うこともある。江戸の敵を長崎で討つこともなかろうにと同情したくなる。