駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

温故知新でこそ改革は可能

2015年05月13日 | 小考

              

 五月に台風一過の日本晴れというのは妙な気がするが、今日は全天の青空だ。

 二十年ほど前に盛んに病気でなく人間を診なさい、全人医療をと言われた。この頃は在宅医療を進めなさいと騒がしい。医療にも流行があり、波に乗り喧伝する人がまるで自分が先駆者のような口振りなのには鼻白んでしまう。

 半世紀以上前から多くの市井の医者は黙々と患者さんという人間を診てきたし、在宅医療病診連携も個別ではあるけれどやってきた。祖父の時代の診療は記憶にないが父親は真夜中に起きて往診に行き、年に何十枚も死亡診断書を書いていた。入院させた患者を診に病院へ顔を出していた。

 勿論、今とは医療のレベルも違うし電子機器のない時代だから、形や内容は異なるがその精神は今言われているものと殆ど変わらない。献身的という意味では今以上だったと思う。進歩的?な人が見ればパターナリズムがあったかも知れないが、それを遡って非難するのは適当ではないだろう。

 流行というものは、全く新しいものではないと思う。以前からあったものに光が当てられ、多くの人が気付き賞揚愛顧あるいは付和雷同して生まれるもののように思う。温故知新は今も真実。温故知新だからこそ、謙虚な視点に立って新たな工夫改善が加えられると思う。在宅医療にちょっと大袈裟かも知れないが歴史に学ぶことなしに改革は出来ないと申し上げたい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする