嘗ては成人病と呼ばれ最近までは生活習慣病と呼ばれていた高血圧症、脂質異常症、糖尿病といった慢性内科疾患群がある。こうした疾患の発症進展には食事や運動という生活習慣が大きく係わっており、外来診療では食べ過ぎや運動不足を口うるさく諫め指導している。
生活習慣といっても其処には世の中の伝統とか行事も含まれてくるわけで、年末年始にはどうしても食べ過ぎ運動不足が起こりやすい。医者としても第一自分も体重が1-2キロ増える手前もあり、忘年会クリスマスお正月に箍が緩むのを容認しがちになる。そこには厳しいばかりでは患者さんも付いて来にくいだろうという大所高所からの配慮?もある。
しかし果たして年末年始の食べ過ぎや運動不足を世間の行事という大義名分で容認するのが妥当かどうか、首を捻りたい感じがすることも多い。というのはこういう大義名分?で箍を緩める患者さんは大体普段からきちんとやらない人が多いからだ。それに何百年も昔と今では世の中そのものが大きく変わり、祭りや神事を捉えて、質素に暮らしてきた日常を破って御馳走を食べてゆっくりするというような環境に生きているわけではない。たかだか六十年前と比べても、現代人は歩く距離は減り、コンビニファーストフードで高カロリー食を毎日食べることが出来るようになっている。
神様は年末年始にこそ、粗食で身を清め身体を動かし、日頃の易きに傾く生活を反省しなさいと思われているかも知れない。
年末年始の箍を緩めた生活の背後には、自分に甘く道連れが多ければ咎が減る感覚や、ここぞと消費を煽る商感覚の存在を見る気がする。ちょっと意地悪な見方かも知れないが、いつもいい加減な患者さんが余計にいい加減になる季節の感じもするのだ。