地図を眺めるが好きなので、診察室には世界と日本の地図帳が置いてある。診察に隙間の出来る午後などに、時に当てもなく時に津和野はどの辺だったかなと目標を持って地図帳を開いている。
母がアイリッシュ贔屓だったせいか、その血筋を受けてあれこれ夢想する癖がある。人生は一度しかないので、色んなところに住んでみることはできないが、住んだらどんなもんかと空想することはできる。残念ながら空想力は衰え、もはや物話を紡ぎ出すことはできないので、見知らぬ土地の風光や生活を想い浮かべている。
住みやすい都会と言えばヴァンクーバー、メルボルン、ウイーンなどが上位の常連だが、果たして生粋の日本人にも住みやすい所だろうか。住めば都と言うが、どんなものだろう。単に住むならヴァンクーバー、生活するにはメルボルン、拠点にするならウイーンだろうか。
この頃はブログがあるので、全世界どの国にも根を下ろした日本の方を探し出すことができる。勿論、総ての国を検索したわけではないが、アフリカや中南米の小さな国に住み着いておられる方が居るので過言ではないと思う。
椎名誠はなぜかパタゴニアが好きで特別なものを感じるようだが、私ももう少しほっつき歩けば第二の故郷を国外に見い出だせるかもしれない。尤も、国内で日帰り可能な距離でも故郷を離れて住んでいると、不思議な郷愁に襲われることがあるので、住むとなれば躊躇いもあるだろう。そう思うと、司馬遼太郎に地図を眺める趣味があったかどうか知らないが、街道を行くのは最高の方法楽しみであったろうと想像する。