本年度、本屋大賞という全国の書店員が一番売りたい本を選ぶ賞、を受けたのが三浦しをんの「舟を編む」だ。芥川賞や直木賞よりも面白いこと間違いない。本屋大賞を初めて読んだ私が保証する。
たまたま読んだ本がベストセラーになることはあるが(最近では「昭和天皇」や「不思議なキリスト教」)、ベストセラーや何とか賞の本には先ず手が伸びない。しかし、林画伯の影響か「舟を編む」は装幀が気に入って平積みを手に取ってしまったのだ。最初の二ページばかりを立ち読みし、読んでみる気になった。家に帰って読み始め、気が付いたら午前二時、久しぶりに夢中で読んだ。
そういう人が居るなあそういう人生があるなあと頷きながら、どうなることかと読み進み、しっとりと気持ちの良い読後感で本を閉じた。確かな才能に触れた思いがある。「三浦しをん」などという名前だからおばんと思いきやまだまだ若い三十五歳。彼女の入社試験の作文を読んだ担当者が執筆の才能に気付き、勧められて文章を書き出したというから、事実は小説より面白い。
ブログの影響でこの数年、何十年と忘れていた小説を読むようになったのだが、三浦しをんは収穫であった。こうした感覚を現代女性が持っていることに安堵の驚きを覚えた。私も「舟を編む」に一票を投じたい。