人間の尊厳はどこにあるだろうか。それは精神にあると思ってきた。脳梗塞で倒れ物言わぬ経管栄養の患者さんにも名残りがあり、元気な頃を知っている人達の接し方から、なにがしか敬うべきものを感じるものだ。
しかし、知的障害の人の障害程度区分審査に関わるようになり、こうした人達に人間の尊厳をさほど感じることの出来ない気持ちが自分の中にあるのに気付き、慄然としている。一般の人が知ることのない世界ではあるが、言葉もきちんと言えず食事や排泄にも介助や世話を必要とする人達の審査をしていると、今まで自分が持っていた感覚や価値観が揺らぐ気がする。
恐らくこの広い世界には知的障害の他にも自分の知らない世界があるだろう。広い視野を持つことが、どんなに大切かとこの年にして思う。高を括った独断はしばしば独善不遜に陥る。それに気付くことは、以外に難しいものだ。誰しも一度障害程度区分審査をするとよいかもしれない。