休みの日曜祝日以外は、朝コーヒーを一杯飲む習慣がある。病院時代にはなかった習慣で、開業して三、四年した頃から、徐々に始まった習慣のように思う。何だかコーヒーを飲むと精神が仕事体勢に切り替わるような気がするのだ。ブラックで飲むせいか、全部は飲まず残った三分の一ほどを診察室の机において、手が空いた時冷えてきたのを一口飲んだりしている。
めざとい女性患者さんがおられ、お中元などに「先生お好きでしょ」とコーヒーを戴くこともある。ところが実は勿論コーヒーは欠かせない飲み物なのだが、家に帰ってから飲むのは圧倒的に紅茶が多いのだ。コーヒーとは逆にほっとして精神を解きほぐす作用があると感じる。これがどの程度普遍的な感覚かは知らないが、休む時には紅茶働くときにはコーヒーというパターンが私にはある。勿論、時にはこの法則を破り、夜コーヒーを飲むこともある。
今はコーヒーの時代で、あの紅茶の国イギリスでさえ紅茶がコーヒーに押されているらしい。今や減りつつある喫茶店でも、何種類かの国別コーヒーが揃えてあり、コーヒー命の親父がモカストレートですねと神妙にコーヒーを淹れてくれる。豆の選別から焙煎まで一人でやらかす親父まで居る。
残念ながら紅茶の方にそこまで力を入れている店は少ない。少なくとも当地にはない。なぜかよく分からぬが、蘊蓄人種にはコーヒー党が多いのだろうか。唯、私にはコーヒーよりも紅茶の方が淹れるのが難しい感じがしている。週に一二度今日の紅茶は旨いなあと思うことがあるのだが、同じように淹れている積もりでも、中々再現性に乏しく、うまくいかないことが多い。紅茶の方がその時の体調や気候に影響されやすいのだろうと解釈している。紅茶もコーヒーに負けず劣らず、奥が深い味わい深い飲み物なので、紅茶にも力を入れる喫茶店が増えると嬉しい。
紅茶好きからアドバイスすれば、紅茶は深くたっぷり入るカップで飲むもので、ケーキには紅茶が合う。