ヘニングマンケルの「背後の足音」を読んだ。ヴァランダーシリーズの最新邦訳だ。事件の謎設定が巧妙で、捜査ティームのメンバーの個性と生活が的確魅力的に描かれており、面白く読んだ。ちょっと残忍なところと、終幕がやや不自然なところがマイナスだが、シリーズの中では一二を争う出来で四つ星を付けたい。いつかも書いたが、スウェーデンがミステリー大国になってきた?。傑作「ミレニアム」を遺したスティーグラーソンが亡くなったのが、いかにも残念だ。読むのが惜しいような気持ちにさせてくれるミステリーはそう多くはないから。
副産物でスウェーエデンの地名に詳しくなった。イースタ、マルメ、ルンドそしてヘルシンボリ・・・。南スウェーデンはデンマークに接していると言ってもよいくらい近いのが実感できるようになった。
それと当たり前と言えば当たり前なのかも知れないがスウェーデンにもいくつかの方言があり、電話で話しただけでどこの出身かが類推でき、おまけにその地域独特の性格もあるのがわかった。日本は方言が薄れてきているので、なんだか惜しい気がする。方言があるのはコミュニケーションの障害のようでいて、実は別の効用があると思っている。簡明に言えば、日本のような単一民族同質社会ではより一層違いに意味と味わいがあると考える。
しかしまあ、スウェーデンミステリーに描かれるスウェーデンは日本で喧伝されたような理想の国からはほど遠く、高負担高福祉で寝たきり老人の居ない国の実態は、どうもさほど住みやすそうではない。