駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

在宅死の現実

2009年03月20日 | 医療
 新聞や医療雑誌を見ると在宅死を望む人が圧倒的に多いように書いてある。病気によって様子が違うので、末期癌は別統計になっているのだが、それでも20年近く在宅医療もやってきた町医者の実感とは数字がかなり違う。
 広い意味で老衰といった概念に相当する病態の85歳以上の超高齢者でも、実際にはいざとなると病院を望まれる方が半数近くおられる。2,3年寝たきり(長い人は10年以上)で定期往診もして訪問看護婦も付いていても、いざ今日明日の病態になると、半数近い家族の方がでは病院へと言われる。そして、たいてい入院して1週間以内に亡くなる。
 死というものを家の中で迎えるのに抵抗があるのか、どうしたらよいのかわからなくなるのか、では病院へと言われると微かに残念な気がする。
 病院へと言われる場合の特徴は普段そうした場合の話をあまりされない家族の場合、寝たきりでも会話が可能であった患者さんの場合、寝たきりになって日が浅い場合、比較的急に状態が悪くなった場合、介護者(大抵お嫁さんか娘さん)が決められず家族会議にした場合が多い。残念ながら本人の意志は不明の場合がほとんどだ。これは推測だが、判断をしかねるので病院と言われる節もある。そのために多少踏み込んで、入院されても2,3日しか変わりませんよと申し上げることもある。その事実よりも医者の言葉で意志決定の負担が軽減されるのか、それでは家でと方針を変えられる家族もある。
 そうして訪問看護師さん達と寝たきり老人を診て、年に6名程度を自宅で看取ってきた。何を不謹慎な表現と言われるだろうが、本人?、家族、看護師、医師が上手く噛み合って、綺麗に着地が決まるのは年に1,2例である。
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする