私が好きだった作家に、近藤紘一さんがいます。
(ウィキペディア
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%BF%91%E8%97%A4%E7%B4%98%E4%B8%80 )
彼は、産経新聞の記者でもありました。
記者としては、静岡支局勤務を経てフランス留学、サイゴン支局、バンコク支局、外信部特派員と記者人生の多くを外国で過ごし、プライベートではフランス留学中に愛妻を失い、心に深い傷を負いながら、サイゴンでであった子連れのベトナム人女性と結婚。
彼が仕事やプライベートで体験したこと、家族や友人達の話のエッセイ、インドシナの戦争関係の記録もの、小説-いくつかの賞も受賞し、人気もあった方でしたが、悲しいことに、1986年、45歳に胃がんで亡くなってしまいました。
(私が彼を知ったのは『サイゴンから来た妻と娘』からですが、一番好きな本は、彼の死後に出版された短編集『目撃者』(編集:沢木耕太郎)。なかでもフランス留学中に死別した前妻の想い出を書いた『夏の海』は秀逸です。)
私は作家としての彼に魅力を感じるだけでなく、記者としての彼も尊敬していました。
そんな近藤氏が現在もまだ生きていたとして、「現在の産経新聞を見ていたらどう思うのだろう」とため息をつくことが多くなりました。
たとえば、先日は、ある産経の記者が中国のレストランで韓国人の男性といざこざがあったあった話を書いていました。
確か、韓国人の女性と自分がビュッフェで鉢合わせをして、この女性が自分に対して順番を譲ってくれたが、そのあとこの女性の連れの男性がこの記者に向かって非常に感情的に抗議をしてきたと言うもの、です。
表題は『「日本人」を目の敵に・・・韓国人の迷惑なパフォーマンス』でしたが、たかが1人の韓国人に自分がイチャモンをつけられたことをプロの記者が記事にし、それが新聞にそのまま載ってしまうことには大呆れ。
しかもこの韓国人の男性の“鼻毛”をバカにしたりと、いくら韓国人男性が非常識であったとしても、むしろ記者の方を下げずみたくなります。
(だいたい海外ではレディファーストが今でも基本ではないでしょうか?この記者は、海外で日本人の評判を下げている可能性もあり。)
そしてまた、この記事に付いたコメントも、記事同様、品のないものばかりでした。
記事は記者の名前がわかるから(これでも)制御できていたのだと思いますが、コメントは匿名なのでさらにエスカレート。(件数も800件以上)
右寄りであろうとそれは構いませんが、産経新聞には『全国紙のプライド』はないのでしょうか。
インターネットで見る普通の社会面の記事も、産経の記事は週刊誌並みの表題が付き、書き方も「小学生には読ませたくないな」と思うことも。
その産経新聞も、もちろんまともな記事は健在です。たとえば今日はこんな記事が。
産経新聞(2013年10月6日14時23分配信)
「匿名コメント」廃止に踏み切った米メディア 「暗黒面」の誘惑
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131006-00000522-san-n_ame
【岡田敏一のエンタメよもやま話】
さて、今週の本コラムは“インターネット先進国”である米国のネットをめぐる興味深い動きをご紹介いたします。
インターネットの功罪についてはいろいろ言われていますが、最大の暗黒面は何と言っても「匿名コメント」に代表される無責任な投稿コメントでしょう。悪意に満ちたあらゆる罵詈(ばり)雑言が並び、人間の暗黒面をこれほど明確かつ露骨にさらすものは他にありません。人はなぜかネットの前ではいとも簡単に暗黒面に落ちてしまいます。「スター・ウォーズ」のダース・ベイダーの誘いより、ネットの暗黒面の誘惑の方が数百倍威力がありますね。
しかし米国では、そんな悪意に満ちた投稿を野放しにしておいてはいけないという機運がいよいよ高まってきたようです。
(中略)
9月25日付フランス通信(AFP)は、ユーチューブのコメント投稿者について、昨年、米IT系専門誌ワイアードが評したこんな一文を引用しました。
「ネット上における最悪の投稿者-人種差別的で、残酷で、愚かで、無意味で、かろうじて読み書きができる人々」
さらに、ツイッターといった交流サイト(SNS)での話題を紹介する米人気サイト「バズフィード」も昨年実施したオンライン上の最悪コメント調査の結果として、ユーチューブについて「空前の規模でのコメント災害を引き起こしている。コメントは意味不明で他人と交流し合えているとは思えない。内容も、やかましいうえにナンセンスで、人種差別的で同性愛者を誹謗(ひぼう)するようなものだ」と、こちらもボロクソです。
(後略)
この記事に対するコメント、楽しみにしているのですが、18時現在でも6件しかありません。