先週何往復か、ロシアのコミ共和国に住むロシア人大学生アレクセイ君とメールでお話しました。彼は1年間しか日本語を習っていないのに、彼の日本語は、メールのやり取りに大きな支障はないくらい上手で、漢字もしっかり使えます。
もっとも、読み書きはできるものの、日本人と話す機会がないので、会話についてはまるっきり自信がないということです。
(外国語において、読み書きはともかく会話が駄目という人は多いですね。)
そんな彼はとても素朴な人物のようです。ロシア人というと、どうしても西洋人にくらべて特別視してしまうところが私にはあったのですが、「12歳の頃まで、日本に人は住んでいないと思った」「兄弟姉妹がいたらきっと息子さんは、うんざりする」「日本のYuiや鬼束ちひろが好き」など書いてくる彼は、普通の青年と変わりありません。
それに加えて、「村上春樹はロシアで人気がある。でも僕はもっと日本語を勉強して、日本語版を読みたい。」「夕日が綺麗だったから写真を撮りました。僕のアパートは1階なので、あまり良く取れていないけど、喜んでくれるとうれしいな」なんて写真を添付してきたりして、今時こんな青年は日本にもなかなかいない、と私を感激させました。
さて、そんなロシアですが、8月のグルジア侵攻以来すっかり世界の悪者にされています。
私はけしてロシアのみを擁護するわけではありませんが、西側メディアの論調は、まるで「新冷戦の始まり」とでも言う論調。
そういう論調がおきる下地に、「ロシアは昔のソ連のような大国になって、力を持ちたがっている。それには武力を使うことも厭わない」というのがあると思います。
まあ、これを大きな声でいうアメリカの厚かましさは置いておいて、確かに一理あるでしょう。
しかし、最近ふと考えることがあります。将来はどうなるかは分からないけど、今のロシアにとって一番優先したいことは、ビジネス。自分のお店の運営をうまく軌道に乗せ、そしてその規模の全国的展開をめざす田舎の商店主(企業家)と同じようなものではないかと。
グルジアの件で、ロシアのビジネス・リーダー達は一番に「投資家が逃げる、株価が下がる」と心配したようですが、実はプーチンやメドベージェフにとってもそれが一番気になったのではないでしょうか。
グルジア云々の前に、ロシアのビジネス・リーダー達を悩ませた、ロシアと英国の合弁石油会社TNK-BPの揉め事がこの時期に解決(英国が折れた部分が大きいとはいえ、ロシア側の妥協もあったのでしょう。)されたりしたのも、いろいろ計算があったのだと思います。
さて、先ほど村上春樹の名前をあげましたが、メドベージェフ大統領は日本の洞爺湖サミットに来る前に、日本に親しむ為に毎日日本茶を飲み、村上春樹の本を読んでいた、という逸話があります。
また、プーチン首相に関しても、彼が黒帯の柔道家で、「柔道は哲学」と言い、来日の時に講道館から6段の段位を進呈されたとき「自分は柔道家なので6段の帯が持つ重みを知っています」と断わった話などを聞くと、実体は案外まっすぐな人なのではないか、とも思えてきます。
まだロシアは見えない部分が多すぎて判断はできませんが、ソ連時代と現在のものは違ってきているということを踏まえて考えることも、西側(そして私達個人個人にも)には必要なのかもしれません。