先日、アメリカ人投資アナリストのティムさん(日本語勉強中)が、こんなことを書いてきました。
One thing that I found interesting was that Japan has some high risk practices with its nuclear generation compared to the US.
For example Japan has far more reactors per power plant than the US. 福島第一 has 6 reactors and had planned to add another 2 additional reactors to site. In the US we have at most 3 reactors per site.
During servicing of the spent fuel Japan unloads the entire reactor into the storage pools. In the US only the spent fuel goes into the storage pools. The Japanese way makes it quicker to do the service with less down time. However, what happens is that you have much more radioactive material in the storage pools which are not as strong as the reactor containment vessel.
ティムさんは、日本が一つの原子力発電所に多数の原子炉を持っていること、そして使用済み核燃料の扱い(一部誤解があると思いますが)について触れ、「米国に比べ、日本の原発のあり方はリスクが高い」と言っています。
このうちの、使用済み核燃料に関して、冷泉彰彦氏のコラムで興味深いものがありますので、リンクを貼り付けます。
(浜岡原発も「停止してそれで安全でない」というのは、こういうことです。)
ニューズウィーク
アメリカが福島第一の「4号機」に注目する背景には「使用済み核燃料問題」があるのでは?
http://www.newsweekjapan.jp/reizei/2011/03/post-275.php
コラムの後半:
・・・ちなみに、アメリカの原子力政策は日本とは異なります。日本の場合は「核燃料サイクル」の完成が国策でした。使用済み核燃料は数年間プールで水による冷却をして後、特殊な金属容器に入れて「中間貯蔵」をして更に冷却、その後に再処理工場でウランとプルトニウムの混合である「MOX燃料」に再生するという考え方です。そのための中間貯蔵施設はまだ未完成ですし、再処理工場も完全に稼働はしていませんが、考え方はそうです。
ちなみに、アメリカはこの「再処理」を「しない」ことが国策の基本です。理由は、再処理によってプルトニウムが生成されると核爆弾の原料となってしまうためで、盗難等による核拡散を恐れると同時に、諸外国の再処理活動にも警戒感を持っています。では、アメリカは「使用済み核燃料」をどう処理しようとしているのでしょうか? 基本は貯蔵です。NRCによれば5年間水で崩壊熱を冷却してから、金属キャスクに入れて永久保管というのが方針です。保管については、大規模な国営施設を作ろうとする動きもある一方で、現実的には各原子炉の敷地内という考えが基本です。
今回の事故、とりわけ4号機の使用済み燃料プールの事故は、アメリカにとってこの保管政策の安全性問題に直接結びつくのです。定期点検中で炉はカラであった4号機は、実質的に使用済燃料の保管施設であったわけで、その事故という位置づけになるからです。考えてみれば、この「使用済み燃料の保管体制」という問題は、核燃料サイクルに関する考え方の違う日米でも共通の問題であるように、原発推進派にも、反対派にも同じように避けて通れない問題だと思うのです。
これまでは、原発や再処理工場などの「アクティブ」な施設についてだけでなく、中間貯蔵施設や永久貯蔵施設(アメリカの場合)などの「静かな貯蔵施設」に関しても反対派は候補地が決まると、そこで「絶対反対」を主張してきました。その結果として、アメリカでは各原子炉に付設した形で冷却用プールと、永久貯蔵体制を作らざるを得なくなったわけですし、日本の例えば福島の場合は、原子炉建屋の中に冷却プールを作ったわけです。今回はその脆弱性が明らかになりました。
反対派が貯蔵施設に反対したのは、温度管理や密閉性管理に失敗すると放射性物質漏れの危険があるのと同時に、そうした「使用済み燃料が半永久的な保管を必要とする性質」自体を、原発の本質的な「罪悪」として批判することが可能だったからでした。この点は、日本もアメリカも事情は全く一緒です。一方で、原発を推進する側は、本格的な貯蔵施設を建設できずに、次善の策として原子炉建屋に付設する形で貯蔵してきたわけです。
今回の事故を契機に、使用済み核燃料の危険性が改めてクローズアップされました。反対派は、こうした事態に至った政策を批判するでしょう。原子力推進側はその批判を甘んじて受けるしかありません。ですが、これから先については、原子力発電を100%続けるにしても拡大するにしても、あるいは50%に減らすとか完全に廃止するという場合も、使用済み核燃料の安全な冷却と保管という問題は避けて通れないのです。
であるならば、この点に絞って、具体的には「バックアップ電源、堅牢性、セキュリティなど安全な冷却プール」のガイドラインと、「本格的で安全な中間(もしかしたら永久)貯蔵施設」のガイドラインと立地については、推進派であるか反対派であるかに関わらず、真剣で現実的な議論が必要だと思います。この議論は恐らく、全世界規模のものになるのではと考えられます。仮に、今回の事故を教訓にできずに、この問題に社会的な合意ができないようですと、同様の事故の起こるリスクは下げられません。
逆に、この貯蔵施設の立地選びやスペックなどで、反対派の本能的な危機感と推進側のノウハウが噛み合ってゆくようですと、その合意のできた国においては、その延長上で原子力の利用に関する建設的な議論も可能になってくるように思います。